ナポリが本当に欲しかった日本人選手は? 目論むアジア市場開拓の舞台裏、名物会長は今も熱心に情報収集【識者の見解】

「ナポリが(来年)1月か6月にアジア人選手獲得? お気に入りは三笘、久保」
 
 これはイタリアのサッカー専門サイト『トゥットメルカート』が10月17日に配信した記事の見出しだ。
 
 いわく、22~23年シーズンのセリエA覇者ナポリが、アジア市場開拓へ、移籍マーケットがオープンする来年1月か6月(実際は7月)にアジア人選手を獲得することが濃厚で、日本人、韓国人が候補になりそうだという。
 
 ただし、当該国籍の選手なら誰でも良いというわけではない。アイデアとしては、長きにわたってナポリのアジアでのブランド力を高められる若いスターで、しかもハイスペックな選手がターゲット。そして、その2つの条件を十分に満たしているのが、文字通り日本サッカー界を引っ張る三笘薫(27=ブライトン)、久保建英(23=レアル・ソシエダ)の2選手だというわけだ。
 
 当然、どちらを獲得するにも多額の移籍金が必要。実現には、ガラタサライに期限付き移籍中のナイジェリア代表FWオシムヘン(25)を筆頭に、主力1~2人を放出し、資金を工面することが不可欠だと同サイトは付け加えている。
 
 実は、この類いの記事が出るのは、今回が初めてではない。遡ること約1年半前の2023年6月、奇しくも同サイトは同じくナポリの日本人獲得の可能性を報じていた。
 
 その時は、33年ぶりのスクデット獲得に大きく貢献した韓国代表DFキム・ミンジェのバイエルン・ミュンヘン移籍が濃厚で、後釜として当時シュツットガルトに所属していたDF伊藤洋輝(25=バイエルン)、ボルシアMGのDF板倉滉(27)らの名前を候補に挙げていた。
 
 では、実際はどうなのか? 結論から言えば、ナポリが日本人選手の獲得を狙っているのは紛れもない事実だと断言できる。2023年5月29日にイタリア国営放送のRAIの番組に出演したアウレリオ・デ・ラウレンティス会長は、「日本人獲得? それはまさに今、我々がしていることだ! ここに来る時に、日本人の友人から、日本でスカウトをするための契約書の草稿を送ると連絡があったところだ」と明言している。
 
 後々に知ったことだが、実はデ・ラウレンティス会長は当番組に出演する直前、日本サッカーに精通する日本在住のイタリア人に接触し、情報を収集したばかりだったという。そして今もなお、日本に住むイタリア人を中心に、限られた情報網の中で、日本人選手の情報収集を行なっている。

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 ただし、1年半前のケースに限れば、候補に挙がっていた選手は、伊藤でもなければ、板倉でもなかった。同会長が持つ日本のネットワーク情報によれば、ナポリが本気で獲得を目ざしていたのは、ズバリ、久保。周囲にも「興味ある日本人は、クボだけだ」と漏らしていたようだ。
 
 実際、デ・ラウレンティス会長を直々に久保サイドとコンタクトを取り、久保の意思などを確認している。実現しなかったことを考えれば、久保自身が移籍に前向きではなかったか、もしくは高額な移籍金にナポリが手を引いたのかどちらかであろう。
 
 いずれにせよ、アジア人選手の獲得は、「お金も出すが口も出す」ことで有名なデ・ラウレンティス会長が、クラブの将来を考えて、自ら動いている案件であることは間違いない。
 
 その事実を証明するかのように、2024年7月には、当時ベルギー1部シント=トロイデンに在籍していた鈴木彩艶の獲得に動き、会長自ら代理人に接触したことが確認されている。
 
 ただ、今回は“時すでにおそし”。コンタクトを図った時には、すでに鈴木は同じセリエAのパルマへの完全移籍が決まっていたという。
 
 22~23年シーズンに33年ぶりのリーグ優勝を果たしたナポリは、翌23~24年シーズン、チームを率いていたルチアーノ・スパレッティ監督(現イタリア代表監督)が退団した影響もあり、勢いを失い10位でシーズンを終了。一気にチームが崩れた。
 
 それでも今季は名将アントニオ・コンテを新指揮官に迎え、開幕前の低かった下馬評を覆すかのように、第8節終了時点でインテル、ユベントスなどのライバルを抑えて首位に立っている。
 
 かつてディエゴ・マラドーナが活躍したことでも知られる名門に今後、日本人選手が初入団することはあるのか。デ・ラウレンティス会長の動向から目が離せない。
 
取材・文●垣内一之(スポーツニッポン新聞社)

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