70年代に突入するとスポーツ中継の覇権はプロレスからプロ野球に移行する。

 阪神ファンのマグナム氏も「わが巨人軍は永久に不滅です」の名ゼリフで有名な74年の長嶋茂雄の引退試合と王貞治の756号はテレビで見ていたという。

「前日に中日が優勝を決めて、長嶋の引退試合はダブルヘッダーになったんですよ。翌日、名古屋で優勝パレードがあるから相手チームの主力選手は大島康徳だけ。あとは2軍みたいな選手ばかり。そしたらファンが『長嶋さんに失礼だ』とか言ってね。日本シリーズもあるんだし、当然やんか。王の756号、打たれたのはヤクルトの鈴木康二朗。いいピッチャーだったよ。でも完全に『756号を打たれた男』になってしまったね」

 バラエティーに目を移すと、やはり「8時だョ!全員集合」の停電事件(84年)は脳裏に刻まれている。

「あまり『全員集合』を見てなかったけど、停電の時はたまたま見たんよ。真っ暗でローソク片手に始まった。何これ? と思ったよね」(マグナム氏)

 漫才ブームから40年以上、今も「笑いの王様」として君臨するビートたけしの真骨頂が発揮されたのは82年10月1日に放送された「笑ってる場合ですよ!」の最終回だ。マグナム氏は回想する。

「たけしさん、『何でもゲラゲラ笑いやがって! 本当はお前らみたいな客、大っ嫌いだったんだよ!』ってぶっちゃけたの。お客はギャグだと思ったみたいだけど、明らかにガチだった。たけしさんは火曜日担当でブスを競い合う『勝ち抜きブス合戦』の司会。クラスメイトが出たからびっくりしたよ。あれって当日の朝に行けば出れたの。オーディション当日だからね。ブス合戦だけど、匿名希望とかあらへんもん。堂々と実名で出てたからね。映像ってほとんど残ってないんじゃないかな。レギュラー出演者の1人が新宿御苑に“ヤリ部屋”を持ってたんだけど、俺の知り合いもそのマンション住んでたのよ。それを別の知り合いに話したら、そいつ観覧に行った時に『●●~、あそこのマンションで何してるの?』と大声で野次ったの。その声、思いっきりテレビでも聞こえたからね。生放送は怖いよ」

 記録はないが、記憶はある。熱かったあの頃のことを思い出すたびに、至福の瞬間がよみがえる。

【写真ギャラリー】大きなサイズで見る