もっとやれるからこそ――。MF小林志紋に指揮官が送った“愛ある厳しい言葉”。注目株に求めた代表選手としての自覚【U-16代表】

[U-17アジア杯予選 第3節]日本 5-0 カタール/10月27日/Aspire Academy Pitch7

 来年4月にサウジアラビアで開催されるU-17アジアカップ(U-17ワールドカップの最終予選)の出場権をかけ、同大会の予選を戦っていたU-16日本代表は、3連勝で首位通過を決めた。

 各組1位と2位の上位5か国が本大会に進めるレギュレーションにおいて、今予選のホスト国を務めるカタールとの最終戦は最大の山場。最も実力差がない相手との戦いだったが、蓋を開けてみれば序盤から日本のペースだった。

 前半はFW谷大地(鳥栖U-18/1年)のゴールだけに留まったが、後半に4得点を奪取。2連勝中同士の大一番を5−0で制し、危なげなく次のステージに進んだ。

 予選突破の喜びを分かち合うなかで、安堵の表情を見せていた者がいる。カタール戦で今予選初出場&初先発を飾ったMF小林志紋(広島ユース/2年)だ。

 初戦の前日(10月22日)に行なわれた試合会場の視察後に発熱し、同日夜のトレーニングを欠席。ネパール戦(9−2)は登録から外れ、翌日24日の練習から再合流を果たしたものの、25日のモンゴル戦(7−0)はベンチから戦況を見守った。

 2戦目が終わった時点でフィールドプレーヤーでは唯一の出番なし。仲間たちが結果を残すなか、ひとりだけチームに貢献できていなかった。

「フォワードの選手を中心に攻撃陣が得点を取っている中で自分は試合に出られない。アピールするチャンスにも関われなかった。それが悔しかったし、焦りにも繋がって…」(小林)

 最終戦で掴んだ出番は無駄にできない。3−4−2−1のシャドーでスタメンの機会を得た背番号8は、持ち前のサッカーIQの高さと機動力を生かし、チャンスメーカーとしての役割を全うする。
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 相手DFとボランチの間でボールを受け、正確なラストパスやフィニッシュで存在感を発揮。17分にMF今井宏亮(東京Vユース/2年)のクロスから谷がアクロバティックなボレーを決めたが、その起点は小林のスルーパス。右サイドを抜け出した今井にピタリと通した。

 1−0で迎えた51分にもゴールに絡み、谷の2点目をお膳立て。右サイドを打開し、正確なクロスからヘディング弾をアシストした。

 2得点に絡む活躍で可能性を示したが、廣山望監督は注文をつける。

「あれぐらいはやれる。本当は3試合フル回転できるポテンシャルがあるので。ただ、あいつもまだ子供なところがあるから、体調管理次第で(飛躍する)チャンスを失うかもしれないということをちゃんと感じてほしい」

 厳しい言葉を投げかけた指揮官だが、叱責は期待をしているからこそ。異国の地で戦うため普段とは異なるし、環境への適応が難しいのは理解できる。実際に今予選では、気温30度以上の屋外の気候と、冷房を効かせている室内との寒暖差で、コンディションを崩した選手が数名いた。

 だが、どんな状況でもピッチに立てる状態にしなければならない。もちろん小林が準備を怠っていたわけではないが、上のステージを目ざす以上は細心の注意を払う必要がある。

「体調の問題で試合ができないのはすごくもったいない。その大切さは痛感しました」とは小林の言葉。16歳で経験値も浅く、実際に体験しなければ分からない事象も多い。ちょっとした油断でステップアップのきっかけを失う場合もあるだけに、今回の出来事は良い教訓になったはず。小林にとって、プロサッカー選手になるための階段をひとつ登るための機会になった。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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