2024年秋の話題作には、従来の役柄のイメージとは異なる「新境地」に挑戦するキャストが多く登場しています。マンガ原作の作品で「無能」なエリート、美貌の連続殺人犯など、意外性のある役柄に挑戦する女優を振り返ります。



白石由竹(演:矢本悠馬)に薬を打つ家永カノ(演:桜井ユキ) (C)野田サトル/集英社 (C)2024 WOWOW

【画像】え…っ? 桜井ユキさん演じる「家永」が山田杏奈さん演じる「アシリパ」の大事なモノを舐めようと…? こちらがドラマ『ゴールデンカムイ』の「アウト」な場面です

人気女優たちが演じる「新境地」な役どころとは

 今期の秋ドラマでは、個性的な女性キャラクターたちが異彩を放っています。マンガの実写版のドラマでは、原作の強烈なキャラに合わせた実力派女優の「新境地の姿」も話題になりました。

 主演キャストの新境地の姿に驚かされるのは、2024年10月11日(金)23時15分からテレビ朝日の深夜ドラマ枠で放送が始まったドラマ『無能の鷹』(原作:はんざき朝未)です。クールビューティーなビジュアル、スマートな身のこなしに落ち着いた声、自信に満ちたふるまいが印象的な主人公「鷹野ツメ子」は、実は驚くほど「無能」な人物でした。

 その鷹野は、本作がテレビ朝日のドラマは初主演となる菜々緒さんが演じています。菜々緒さんは「FRAU」のインタビューで、鷹野について「お仕事ドラマって、ダメダメな主人公が成長していくとか、バリバリ仕事ができる人が活躍するものが多いですが、そんななかで主人公が最初から最後までまったく成長しないんです(笑)」としながらも「一方で、鷹野はとにかく自分に嘘がなく、自分のことを信じていて、常に自分らしくいられる人間です」と、その魅力を語っています。

 原作ファンの間では、もともと鷹野の役に菜々緒さんをイメージしていたという意見もあり、SNS上では、「よくこの役を受けたなぁって思うくらい、乗りこなしてるよね(笑)。コメディエンヌとしての活躍ぶりがすごい」「菜々緒さんをこの役に起用した制作陣の発想が天才過ぎる」「意味分かってないのに英語の発音だけ上手いのとか、菜々緒さんがやると本当にかわいいし、なおかつ腹立つし見事」「コピーに手こずる菜々緒ってだけでもう笑うの確定やん」と、彼女の凛としたイメージとコメディエンヌとしての一面に対する称賛の声が多く出ていました。特に、第2話のきれいな姿勢で延々と「ペン回し」をしようとしては失敗する鷹野の姿に、思わず笑ってしまった視聴者が多かったようです。

 また、現在36歳の菜々緒さんが新卒の鷹野を演じることを疑問視する声もありましたが、そもそも原作の鷹野も新卒には見えないくらい落ち着いたビジュアルで、「デキるオーラ」を放っているので、やはり菜々緒さんのキャスティングが正解といえるでしょう。

 そのほか、見た目の説得力だけはすごい鷹野とタッグを組む気弱な営業マン「鶸田道人(ひわだ みちと)」を演じるのは、2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』で「一条天皇」を好演した塩野瑛久さんです。『光る君へ』では若き名君を演じた塩野さんの『無能の鷹』での気弱なキャラとのギャップに、「帝(一条天皇)との振り幅がすご過ぎる」「キャラが違い過ぎて、最初同じ人だと思わなかった」と、視聴者から驚きの声があがっています。

 その鶸田役の塩野さん(奥山夏太郎役)や、「鳩山樹」役の井浦新さん(ウイルク役)、「雉谷耕太」役の工藤阿須加さん(月島基軍曹役)など、『無能の鷹』キャストとのかぶりも一部で話題になっているのが、2024年10月6日22時からWOWOWで放送が始まった『連続ドラマW ゴールデンカムイ- 北海道刺青囚人争奪編 -』(原作:野田サトル)です。

 明治期の北海道を舞台に「アイヌの埋蔵金」を巡る戦いを描いた冒険活劇『ゴールデンカムイ』は、2024年1月に実写映画が公開され、大ヒットを記録しました。その続編であるドラマシリーズにも実力派キャストが多数出演しており、そのなかでも衝撃の役柄と高い演技力が話題を呼んだのが、第4話「殺人ホテルだよ全員集合!!」から登場した「家永カノ」役の桜井ユキさんです。

 家永はアイヌの金塊の隠し場所の暗号を刺青で彫られた脱獄囚のひとりで、元医者ながら患者を監禁し殺害した罪で網走監獄に収監されていました。彼の正体は老人の男性ですが、脱獄後は若い美女の姿に変わり、無数の罠や迷路が仕掛けられた「札幌世界ホテル」でさらなる殺人を繰り返しています。

 家永は自分が欲しいと思う他人の身体の部位を食べることで完璧な姿の自分に近付こうとしており、4話ではアイヌの少女「アシリパ(演:山田杏奈)」の青く美しい目を求めます。ドラマでは家永が眠らせたアシリパの目玉を舐めようとするシーンが、舌が触れるギリギリまで煽る演出で再現され衝撃を呼びました。

 また、若女将姿の自分に欲情して迫ってくる「牛山辰馬(演:勝矢)」の舌を噛んだり、「全身チンポ野郎!」と叫んだり、殺そうとした脱獄王「白石由竹(演:矢本悠馬)」に手榴弾を投げられて「タコ坊主!」と悪態をついたりと、中身は凶悪犯の老人である家永を説得力を持って演じる桜井さんの名演も大きな見どころです。

「『白石ウシロ~ッ』の言い方も、その後の『ダメだこいつ 殺そう』の切り替えた表情も原作イメージ通り過ぎる」「片目だけピクつかせたり、言い回しの強弱が丁寧な演技力で本人だろと思うほど!」「牛山の舌を噛んだ後の表情が完璧」「女将の顔と囚人の顔使い分けてる演技すごかった!」と、原作ファンからも絶賛されています。

 また、終盤でホテルが爆発する寸前に家永が牛山に言う「あなたの完璧はいつだった?」という名ゼリフの場面は、原作とは違い家永の目元に涙がひと筋流れており、より感動的なシーンとなりました。

 自前の口元のホクロが家永とほぼ同じ位置にある桜井さんは、事前の期待を超えるほどのはまり役な演技を見せてくれました。家永は1話限定のゲストキャラではなく、今後も変態であることに変わりはありませんが、要所で重要な活躍を見せます。また、「あなたの完璧はいつだった?」の問いへの牛山のアンサーは、原作終盤で回収されるため、早くも今後のエピソードの実写化にも多数の期待の声が出ていました。

『無能の鷹』はまだ3話まで、『連続ドラマW ゴールデンカムイ- 北海道刺青囚人争奪編 -』は4話までしか放送されておらず、まだまだ余裕をもって追いつける時期です。話題の衝撃的演技を、確認してみてはいかがでしょうか。