シーズン最終盤に突入したJ1で3位のFC町田ゼルビア。史上初となる“J1初挑戦での優勝”を目ざす戦いが続く。旋風を巻き起こしてきたなか、逆転優勝へのキーマンの一人が、FWエリキだ。
ブラジル出身のエリキは、母国のクラブや横浜F・マリノス、中国の長春亜泰足球倶楽部を経て、2023年に町田に加入した。同年8月に左膝前十字靭帯断裂など全治8か月の大怪我で離脱も、それまで30試合18得点を記録。J2のMVPに選出され、クラブのJ2初優勝に大きく貢献した。5月に復帰した今季は、ここまで23試合に出場して3ゴールをマークしている。
そんな30歳にインタビューを実施。現在のコンディションやプロ意識、黒田剛監督の印象、逆転優勝に向けた決意などを訊いた。
――◆――◆――
――現在のご自身のコンディションを教えてください。
コンディション的にも、メンタル的にも100%の状態です。ただ、フィジカル的には試合で培われる体力や試合勘があり、もう少し長い時間プレーすると戻ってくるので、その点に関しては、まだ100%とは言えないですけど、試合に向けてしっかり準備しています。
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――今季は、ここまで23試合3ゴール。この成績をどう見ていますか?
自分の気持ちとしては、不十分かなと。個人的には、もっとスタメンで、レギュラーとして試合に出る必要があると思っていますので、物足りない。ただ、常にモチベーションは高く、可能な限り自分のベストを尽くしてプレーすることを心がけています。スタメンで出場したルヴァンカップでゴールやアシストを決めたように、もっとプレーができるように。良いアピールをしていかなければいけないし、ゴールやアシストを積み重ねていきたいです。
――チームはJ1で一時首位に立っていましたが、現在は3位です。
今から状況はもっと良くなると思っています。常に高みを目ざし、先を、上を見て進んでいます。私自身は、2019年に横浜F・マリノスにいた時にJ1での優勝を経験しています。夏の移籍で加入し、その時には上にFC東京、川崎フロンターレ、鹿島アントラーズがいましたが、逆転しました。
自分のスタイルとして、仲間を鼓舞する、サポートするのも持ち味の一つです。町田はスタッフも含め、みんなでしっかりまとまって同じ方向に進んでいます。みなさんからすれば、今は難しい状況にあると思われるかもしれませんが、こういう状況こそ個人の力が必要なので、プレーでチームをしっかりと引っ張っていきたいです。
――34節時点で首位の広島とは勝点5差です。
個人的な見方ですけど、自分たちは首位に返り咲く大きなチャンスがあると信じています。J1に昇格して、ここまで多くのサポーターの方々に応援していただいていますし、去年から比べても今年は、さらにファンの方々が増えています。このシナリオというか、クラブが歩んでいるヒストリーは正しい方向だと思っています。
――ピッチ内外での前向きな言動が、クラブのYouTubeチャンネルで“エリキマインド”と称されていました。エリキ選手が思うプロ意識について教えてください。
素晴らしい質問ですね(笑)。4歳ぐらいの時、自分が幼少期の時からサッカーに触れてきて、ここまで自分はサッカーと共に歩んできた人生で、常にサッカーに情熱を持って接してきました。自分の身体にはサッカーの血が流れていると自負しているので、たとえば決断力や、ポルトガル語でRACA(ハッサ)という戦う気持ちですね。そういう強い気持ちが、いつも自分の身体の中に流れている。また、ピッチ外の自分には違う顔があって、常に笑顔で明るく、誰とでも打ち解けられる、人懐っこいところがありますね。
子どもの頃からプロになる夢を描き続けてここまで来ました。それが叶って、自分がプロサッカー選手を仕事にして人生を歩めているので、あの頃の気持ちを忘れずに過ごすのが大事だと思っています。これから先もそういう気持ちを維持し、チームとファンのために戦っていきたいです。
――エリキ選手にとって、黒田剛監督はどういう指導者、監督でしょうか?
自分にとって黒田監督は特別です。一昨年末に町田と契約するまで、正直、黒田監督の存在は、さほどよく知りませんでした。契約交渉の際に藤田(晋)社長、原(靖)フットボールダイレクターと話をしているなかで、黒田監督の実績や招へいの経緯を聞きました。高校で先生をされていたと聞き、自分にとってはまた新たな経験ができ、この監督からポジティブなことを学べると思いました。
アスリートとしていろんな要求や鼓舞されることもあります。自分にとって、監督としても人としてもスペシャルな存在です。黒田監督と当然世代も違いますし、歩んできた歴史も違いますけど、おそらく監督のなかでは、自分には得点王を期待されていると思いますので、それに応えたいですね。
――現在、町田のサッカーのスタイルに対して一部で批判も出ています。エリキ選手は、どう感じられていますか?
もし町田が優勝争いをしていなくて、下の順位にいたら、そういった批判は少ないと思います。常に上位にいるチームは厳しい目で見られます。自分自身も、今までブラジルや中国で複数のタイトルを獲ってきました。タイトル争いでは常に外部からプレッシャーがかかるので、そういうものを背負ってここまで来ました。個人的にも今までありました。
強く守備に行くスタイルが批判されることもありますけど、我々はプレーしていて、相手に怪我をさせたり、傷つけたいわけではありません。自分たちはチームの勝利を目ざしてプレーしていますし、サッカーのルールと相手をリスペクトしています。勝利のために、手段を選ばないわけではありません。
黒田監督も本当に素晴らしいです。我々はリスペクトしていますし、監督からダーティなプレーをしようと言われているわけでもない。ちゃんとルールに乗っ取って、相手をリスペクトしてプレーしている。その点は理解していただきたいと思っています。
激しい守備の時もありますけれども、たとえばカタール・ワールドカップで優勝したアルゼンチン代表や準優勝のフランス代表、ブラジル代表など、レベルの高い選手が集まっている国でもそうだと思います。高いレベルを求められている。タイトルのために、アグレッシブになる。時に激しいプレーもあるでしょう。そして自分たちは今、タイトルを手にするために、高いレベルを追求して戦っています。
もちろんクリーンなプレーで勝利を得られれば一番良いですけど、サッカーはそんなには甘くない。勝利やタイトルを目ざすには、激しいプレーだったり、周りのプレッシャーに負けず期待に応えるプレーが必要になる。高みを目ざすチームにとって、通常のことだと思います。
——さて、11月9日には国立競技場でFC東京と対戦します。
一番の目標は当然、勝利。それを目ざしてプレーします。FC東京戦は自分にとって良い思い出がたくさんあります。横浜時代に、FC東京とたくさん戦い、ホームの日産スタジアムでも、アウェーでも点を決めています。国立にも良いイメージがあります。8月の浦和レッズ戦(2-2)では、同点ゴールを決めた。ですから、今回も点を狙っていきたい。間違いなくビックゲームになると思っています。
——最後に、今季の目標を教えてください。
自分たちの目標である優勝に関しては、すごくモチベーション高く、狙っていきたいです。そこだけに集中していきます。
取材・文●野口一郎(サッカーダイジェストWeb編集部)
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