ツッコミはあくまでライブ!事前準備はするな!
──やはりツッコむワードって、あらかじめいくつか用意しておいたほうがいいんですか?
ツッコミってボケが存在しないとできないんですよ。ボケのカウンターとしてあるもので、リンクしたときに1番ウケるんです。ボクシングで相手がパンチにきたところをかわして、カウンターを打つみたいな感じ。
デビュー当時は、それこそ練りに練ったツッコミワードをあらかじめ用意してたんですが、やってて楽しくないんですよ。「太鼓の達人」でいうところのタイミングよく当たってない感じ。芯で捉えられてないんですね。
自分が1番言いたいことを、その都度言ったほうが、用意したものよりも語彙力が低くなっても、タイミングとパッションでうまくいくんです。極端な話、タイミングが合えば「あっ!」とかでもウケると思います。だから事前準備はしないほうがいいと思うようになりました。
──前もって用意しないんですね。橋本さんは「例えツッコミ」するとき意識していることはありますか?
例えば、僕はサッカーが好きなので、パーマをあててる方に「UAEの10番やん!」ってツッコんだことがあります。アフロヘアのサッカー選手、オマル・アブドゥッラフマーンを引き合いに出して笑いを誘いました。
オマル・アブドゥッラフマーン選手なんて、ほとんど誰も知らないですよ。でも、みんなが知らなくても、自分が例えたかったら、例えればいいと思います。人って案外、熱量で笑うんです。好きっていうパッションが大事だと思います。
なので、まずお試しで、自分と好きなものが共通しているコミュニティで、例えてみたら、めっちゃ楽しいと思います。アニメ好き、野球好き、相撲好き同士……。お互いハッピーな状態で例え合うのは、1番幸せですよね。
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ツッコミって負の感情のレクイエム!
──エッセイを書き上げるのは大変でしたか?
以前、夕刊紙で連載を持っていたんですが、そのときと比べて文字数がずいぶん多いんですよ。短距離走と長距離走くらい違う。こんなにスタミナがいるんやって思いました。しんどかったけど、楽しかったです。
──長い文章を書く中で気づいたことはありますか?
日常生活で腹が立ったことなど負の感情を、書く中で成仏させることができるようになりましたね。
最近、ラーメン屋のカウンターで、隣のお客さんが調味料の豆板醤を台にして、スマホで映画見てたんですよ。隣にいる自分も使う豆板醤をですよ。しかも耳にワイヤレスイヤホンして、つけ麺を食ってる! もう腹立ってしょうがないわけですよ!
でも、そういうムカついたときこそ、脳内でツッコミ口調に変換してみると、なんか少しだけそのことがボケに見えてくるんですよ。ツッコミって負の感情の鎮魂歌に近いと思います。ボクはたまたまそうした思いをエッセイにできましたけど、一般の方なら、日記を書くとか、ポッドキャストでしゃべるとか、吐き出すところがあったほうがいいですね。
──今後の抱負は?
このエッセイも評判がよければ次も出したいですね! エッセイでは相方の鰻さんがボクの文章に合わせて、4コマ漫画を描いてくれていて、絵もうまいんですが、実は鰻さんって文章もいけるんです。海外のひとり旅の話とか最高です。
(担当編集者に向かって)鰻さんのエッセイも出版しません?
取材・文/集英社オンライン編集部 写真/松井秀樹