パチンコで鳥を狙う中国人女性(タイのSNSより)

奈良公園の中国人観光客と思わしき人たちによるマナーが問題視されているが、タイの観光地を訪れた中国人観光客の蛮行も、タイのSNS上で大ひんしゅくを買っている。

タイ政府はこれまで「公衆の面前で小便をする」「路上に唾を吐く」「寺院の神聖な鐘を蹴飛ばす」などのマナー違反を嫌というほど体験してきたが、背に腹は代えられないと耐え忍んできた。

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タイのGDPにおける観光業の(直接・間接的な)比率は20%以上に達するとされる。同国観光庁などの推計によれば、観光業の直接的な収入はGDPの約12~15%に相当し、さらに関連産業(小売、運輸、サービス業など)を含む間接的な収入を加えると、GDPの20%を超えるという。

パンデミックの影響で大きな打撃を受けたが、近年の観光回復により、再び高水準に戻りつつある。なかでも金離れが良い中国人観光客は貴重なお客様だ。

ということで、中国語で書かれたマナー教則本を大量に用意するなど、マナー違反被害を食い止めようと努力してきたが、さすがに今回の行為は教則本に書かれていなかったようだ。

SNS上で拡散された16秒の動画の舞台は、タイの人気観光スポット、パタヤ北東およそ40キロ、「カオ・キアオ=緑の山」という名前そのままに、山を丸ごとサファリパークにしたような開放的な国立カオキアオ動物園。今年7月に生まれたばかりのコビトカバの赤ちゃん「ムーデン」がつい最近、日本でも注目を集めた。

動物園が実施したインターネット投票で「ムーデン」と名付けられた。タイ語で「豚肉団子」の意味(タイ国政府観光庁HPより)

動物園といっても、世界最大級の敷地を活かし可能なかぎり自然環境に近い形で設計されており、飼育されている鳥類だけでも約80種類以上。タイ国内に生息する固有種や世界中の異なる地域からの鳥が含まれている。コウノトリやペリカンの野生化プロジェクトも実施中だ。

そして、大ひんしゅく中の蛮行動画では、その鳥たちを、20代と思わしき中国人女性がパチンコで嬉々としながら狙っているのだ。

「タイ人にだって民度が低い人はいる」

周りの人たちはまったく咎めない様子(タイのSNSより)

その中国人女性は中国人観光客グループの1人と見られる。動画はグループを遠巻きにしながら撮影されており、タイ語訛りの英語で「オーマイゴット! オーマイゴット!」と制止を試みている。

にもかかわらず、数十メートル先に移動した中国人女性はパチンコのゴムをぎりぎりと引き絞り、バシッ!と弾く。短い動画のなかで1、2度シーンが切り替わっているので、命中するまで撃ち続けた中国人女性を追いかけながら撮影したのだろう。

このような行為が行われている最中、周りの中国人はまったく咎めていない。むしろ狩りの成果を注視し、パチンコ玉の行方を見守っているようだ。

中国には食文化を表すこんな格言がある。

「4本足のものは机と椅子以外、2本足のものは家族以外、飛ぶものは飛行機以外、水中のものは潜水艦以外、なんでも食べる」

悪気がないから、みんな笑顔で無邪気にハンティングといったところだろうか…。こうしたオーバーツーリズムの問題に日本も直面して久しい。

・トイレを流さない
・中国語の落書き
・ゴミのポイ捨て
・歩きタバコ
・お店での値切り
・大きな声での私語

花見の季節における、中国人観光客が桜の木の枝を折ったり、花見会場で大騒ぎしたり、トイレを汚すなどの粗悪なマナーは、もはや風物詩と化している。

加えて最近は観光名所で集合写真を撮影したり、人混みで自撮り棒を使用したり、待っている人のことを気にせず何分も同じ場所で撮影するなどの行為が、ニュースやSNSを騒がせているのはご存じのことだろう。

拡散された”ハンティング動画”は、あっという間に中華圏のSNSで拡散された。

そして、集まったコメントのなかで炎上していたのは、在日中国人と思わしき女性の「タイ人にだって民度が低い人はいる」という言い訳だ。

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法律やマナー違反が生まれない仕組みが必要

笑顔を見せる女性(タイのSNSより)

おいおい話題が変わっていないか?と突っ込みたくなるが、これぞ典型的な愛国無罪系話法。「経済的に余裕があるならマナーをわきまえろ」「民度が低い大陸人は海外に出るな」と袋叩きに遭っていた。

中国人観光客は今、世界の観光地で何かとバッシングの対象にされやすい。一部の中国人は、欧米人とアジア人に対する待遇の差などに過敏になっている。

以下、香港の旅行会社社長が反省を交えながらの分析。

「中国大陸人観光客に対しての誤解を払拭するべきです。かつて私たち香港人も、広東語ではなく、きれいな普通(中国)語で対応すれば状況が良くなると“勘違い”していました。簡体字の張り紙で注意を呼びかけても、中国大陸人スタッフを雇用しても現場の負担は減らず、かえってトラブルが増えたぐらいです。マナー違反を罰する法律、またはマナー違反が生まれない仕組みが必要だったのです」