特撮ファンの想像する怪獣のドリームマッチといえば、やはり「ゴジラ対ガメラ」でしょう。さて筆者の記憶では『ウルトラマンマックス』でそのシーンが描かれた気がするのですが、あれは夢だったのでしょうか



書籍「ウルトラマンマックス 15年目の証言録」(立東舎)

【画像】え…っ? そういやゴジラとガメラ、初代は「どっちがデカい」? こちらが比較です

サブスクにもDVDにもない? もしかして「削除」されたのか?

 あれは、怪獣好き少年たちが集団で見た「夢」だったのでしょうか?

 未だに実現できていない特撮の「ドリームマッチ」の代表としては、やはり「ゴジラvsガメラ」が挙げられます。怪獣二大スターの決闘は昭和、平成、令和と時代は変わってもなお、特撮ファンの夢でしょう。

しかし、筆者の記憶は少し違います。今から約20年前の2005年放送『ウルトラマンマックス』で、実際に「ゴジラとガメラの決闘」が描かれたような気がするのです。放送時間は土曜日の朝7時30分からということで、もしかしたら筆者がただ寝ぼけていただけかもしれません。果たして、この記憶はいったい何なのでしょうか。

 まず、『ウルトラマンマックス』という作品について、簡単に振り返りましょう。攻めた内容だった前作『ウルトラマンネクサス』とは対照的に原点回帰が謳われた本作では、黒部進さん、桜井浩子さんをはじめとする「ウルトラ」シリーズのレジェンド俳優たちが数多く出演しました。

 また、制作陣営も豪華です。飯島敏宏さん、実相寺昭雄さんといったウルトラシリーズを支え続けた、大ベテランから広くエンタメ映画のヒット作を手がけてきた大御所までが名を連ねる、非常にバラエティに富んだ布陣でした。

「ゴジラvsガメラ」の話に戻りましょう。ネットを調べると、なるほど筆者と同じくその「ドリームマッチ」を目撃した元少年少女の意見は、多く見受けられました。それを見る限り、どうやらそのシーンは第11話「バラージの予言」というエピソードの冒頭にあったようです。ということでさっそく、サブスク配信サービス「TSUBURAYA IMAGINATION」でその回を確認してみました。

 ただ、不思議なことに、見つかりません。そもそもこの「バラージの予言」は、タイトルが示唆しているとおり、1966年初代『ウルトラマン』に登場した怪獣「アントラー」がメインの話です。この回で、日本特撮の両雄が決闘するシーンなど、そもそも期待できるはずがないのです。では、あの記憶はいったい何だったというのでしょうか。

 可能性がひとつ残っています。それは公式で該当の場面が「削除」されている、という場合です。

 そして結論からいえば、その通りなのでした。確かに2005年9月10日、ゴジラとガメラが闘っているシーンがTVでオンエアされていたのです。

 大前提として、本当に巨大なゴジラとガメラが大暴れしたわけではありません。公園の砂場で子供らがゴジラとガメラの人形を突き合わせて「ゴジラ強いぞ」「ガメラ強いぞ」と戦わせていたのです。

 怪獣好きの子供なら一度はやったことのある、ありふれたシーンと見ることもできますが、それをTVで、ましてウルトラシリーズ作品の劇中で描かいたのは歴史的瞬間でありました。当然ながらこのシーンは、たとえ人形遊びであってもオンエア一度きりです。

 おそらく、これからもソフト化されることはないでしょう。まさに子供らの「夢」そのものだったのです。

 さていくらオンエア一度きりのシーンであっても、果たして撮影の段階で「大人の事情」が許してくれるものなのでしょうか。それを可能にしたのが、このエピソードの演出を担当した金子修介監督です。

 平成「ガメラ」シリーズ3部作、そして『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』と、ゴジラとガメラ両方を手がけた金子監督だからこそ実現できた頂上決戦であり、最初から再放送、DVD化されない予定で撮影されました。金子監督は放送当時のブログで「(11話は)ちょっとしたオアソビをしたんで、一回だけなら許してあげる、というワケで是非」と、コメントしています。

 金子監督自身の強い特撮愛あってこそ実現した、この間接的なドリームマッチは、確かにソフト化しないほうが「夢」として正しいのかもしれません。