25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF(国際テニス連盟)大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情や、ヨーロッパのテニス環境を綴る転戦記。
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海外にやってくる人の心配は、経済面以外に「言葉の障壁」もあるかもしれません。
僕がスペインにいた頃、ヨーロッパを拠点にする日本人ジュニアに何人か会いました。みんな最初は全く話せなかったり、英語の勉強を苦手にしていましたが、現地でコミュニケーションを取る気持ちのある子は、やがて何の問題もなく話せるようになっていました。
引きこもってしまうタイプの人だけは、海外だと苦労するかもしれません。日本と違い、恥ずかしいと思う必要が全くない文化ですから。
逆に、日本のように気遣いしてくれる文化はないので、何事も自分からどんどん行く姿勢がすごく重要になってきます。話せなくても全然いいので、滅茶苦茶でも話しかけることが重要です。その気持ちが伝われば、相手は何とか理解しようとしてくれます。
一方、日本人同士で海外に行く選手たちは、その仲間で部屋をシェアして生活したり、ほとんどの時間を日本語の会話で過ごすため、多くの場合英語を話せるようにはなりません。
確かに一緒に行く人がいると安心ですが、成長していくには、単身で渡った方が自分で物事を解決できるようになったり、現地の人たちとつながったり、様々なスキルを圧倒的に磨けます。こうしたスキルは選手としても後々非常に役立っていくものです。
僕がスペインやセルビアにいた際も、お店や練習などで必要な会話程度は、比較的すぐにスペイン語やセルビア語でできるようになりました。完璧な言葉からは程遠くても、カタコトの言葉で伝えようとする気持ちがあれば伝わります。
言葉は現地にいてコミュニケーションを積極的に取る気持ちがあれば何とかなるし、誰でも上達していくものです。単身で海外に渡る決心をした人ならば、大抵その一歩は踏み出せるし、頑張って話せるようになろうとします。
一度話しかけてしまえば何の躊躇もなくなるので、言葉は思ったほど心配しなくて大丈夫でしょう!
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
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