世界耐久選手権(WEC)最終戦バーレーン8時間レースのフロントロウを独占し、逆転でのマニュファクチャラーズタイトル獲得を目指すトヨタの小林可夢偉と平川亮が意気込みを語った。
苦汁をなめたホームの富士から1ヵ月半、トヨタはバーレーンの予選でフロントロウを独占。特に8号車のアタックを担当したブレンドン・ハートレーは、僚機7号車のニック・デ・フリーズに0.323秒差をつける会心のアタックでポールポジションを獲得した。
これにより、8号車は1ポイントを獲得。マニュファクチャラーズランキング首位のポルシェとの差を9ポイントとした。今回は8時間レースのため得点配分も大きく、トヨタ2台のどちらかが優勝すれば、ポルシェの結果に関係なくマニュファクチャラーズタイトルの6連覇を決めることができる。
7号車のドライバー兼チーム代表の小林は、予選の結果を喜びつつ、すぐにレースに向けて言及。決勝レースではいつも以上にタイヤマネジメントが鍵になると語った。
「予選をワンツーで終えられて、最終戦に向けて良いクルマを作ってくれた結果がまず出たかと思います。このレースで一番のキーとなるのはタイヤのマネジメントではないかと僕たちは考えています。いかにしてうまくできるかということを、練習の段階からああでもない、こうでもないと色々やっていたので、それがレースでうまく機能すれば、いいレースができると思っています」
8号車の平川も同様に、タイヤマネジメントをキーポイントに挙げ、苦しいシーズンを最高の形で締めくくるべく、決勝に向けて意気込みを口にした。
「ワンツーで終えられて非常に良い予選になったと思います。タイヤのマネジメントがキーになると思うので、そのあたりは僕らの強みを活かして、今季うまく行かないレースもたくさんありましたけど、良い結果を出してチャンピオンを獲れるように頑張ります」
予選では8号車が前に出たが、7号車は大逆転でのドライバーズチャンピオン獲得の可能性もかろうじて残っている。首位のポルシェ6号車とのポイント差は37点。7号車が優勝し、ポルシェ6号車のレースが散々な結果に終わる必要があるという厳しい条件だ。
レースではこの2台の位置関係を入れ替えることも戦略として考えられるが、小林代表は今のところ、そういったことは考えていないという。
「いや、もう行けるとこまでしっかり、まずどちらかのクルマがトップで帰ってこれるようにしたいので、今の段階では特にそういうフォーメーションっていうのは考えていなくて、純粋にチームとして勝つために必要なことを優先してやるという考えです。勝てばもう自動的にマニュファクチャラーズチャンピオンなので、そこは自力で獲りたいなっていうところです。行けるとこまで、まずはお互い最大限の力を出し切る、ドライバーが最後まで気持ちよく走れるっていうことを心がけたいなと思います」
ライバルたちに比べての強みについて聞かれると、その差は確実に縮まってきているとしながらも、純粋なマシンパフォーマンスではなく、チームの総合力といった面での勝負になるとふたりは考えている。
平川はこれまでの強みだったタイヤマネジメントにまだ改善の余地はあるとしながらも、ピットストップも含めて大事になってくると語った。
「タイヤマネジメントっていう意味では、このバーレーンはタイヤに大変厳しいサーキットなので、以前というか特に去年までは僕らの強みがあったんです。もちろん彼らもすごく力をつけてきていて、そこの差はものすごく縮まってはきていますけども、まだそこは僕たちの強みでもありますし、まだまだ良くできる部分ではあります」
「あとはピットストップもすごく大事ですし、そういった意味でチーム全体の力が強みかなと思います」
性能調整(BoP)を見ても、アウディとポルシェが去ったWECを王者として支えてきたトヨタのGR010ハイブリッドは重量も重く、パワーも少ないという厳しい調整が施されている印象を受ける。トヨタはレースディレクターのロブ・ロイペンがBoPの公平性に関して批判的なコメントをし、罰金を科せられたこともあった。
しかしトヨタはシーズンを通してそれを跳ね返すべく、チームの力を磨いてきた。小林は、そうした努力が結果に表れてこそ、強みになると示唆した。
「このレースに限っては特に、タイヤマネジメントがすごく重要になると思います。去年と同じタイヤとクルマということで、去年と同じようにやれば大丈夫じゃないかと思ってここに来たんですけども、思ったよりもそんな簡単にはいかない状態です」
「どんな状況でもできるだけ早く解析をして、分析をして、いかにクルマを作るかっていう、対応力やチーム力をしっかり上げていきたいです。それが結果に表れたら、そういう強みが僕らにあるんじゃないかなというふうに思います」
「やっぱりライバルたちも経験を積んで、僕らがずっとやってきたってアドバンテージは間違いなく無くなってきています。僕たちのクルマのパフォーマンスは非常に高いですが、クルマが重くてタイヤに厳しかったり、パワーが少なくて直線が遅かったり、ベストな性能が出せていない中でも総合力で勝負に勝つというのが、今年の一番の難しさだったかなと思います」
バーレーンの決勝レースはまだ明るい時間にスタートし、暗くなってからフィニッシュするトワイライトレース。すでにスタートは切られているが、8時間後にどんな結果となっているだろうか。