“水冷”タイヤでレースペース向上!? FIA、レッドブルからの指摘受け一部F1チームを調査か

 F1サンパウロGPでは、一部のチームがタイヤを内側から冷却するために水を使用しているとの疑惑が浮上した。

 現在はレッドブルとマクラーレンのチャンピオン争いが接戦となっており、両陣営間で互いのマシンの探り合いが激化している。

 マクラーレンはカーボンの柔軟性を利用した“ミニDRS”リヤウイングで批判を浴び、このコンセプトがレギュレーション違反だというクレームを受けて、チームは変更を余儀なくされた。

 最近では、レッドブルがフロントビブ(フロア前端部のTトレイ)アジャスターを利用してパルクフェルメ下で車高を調整したのではないかとライバルチームから疑いをかけられたこともあった。

 そんな中motorsport.comの調べでは、マクラーレンを含む数チームがレース中にタイヤを冷却するために“トリック”を使用しているのではないかとレッドブルが疑問視しているという話が聞こえてきた。

 というのも、いくつかのチームがレースでマシンにタイヤが装着される直前に、バルブを通してタイヤに水(あるいはその他の未確認の液体)を注入する方法を発見したというのだ。

 タイヤ内部にクーラントを注入することで、タイヤ大部分を冷やし、熱によるデグラデーション(性能劣化)を抑えてレースペースを改善することも可能だ。

 シンガポールGPの後には、いくつかのチームのホイールに液体が付着しているのが目撃された。通常では起こり得ないことであり、この問題に対して懸念が噴出した。

 通常であれば、チームはピーク時のタイヤ内圧を完璧に保つべく、タイヤ内部の水分をできるだけ除去しようとするものだ。実際、F1テクニカルレギュレーションでは、水分を“加える”のではなく“取り除く”ことに重点を起き、制限を設けている。

 第10条8.4項には「タイヤは空気または窒素のみ充填が可能」であり、「タイヤおよび/またはその充填ガスに含まれる水分量を減らすことを意図したいかなるプロセスも禁止されている」と記されている。

 motorsport.comの調べでは、FIAはこうした行為に関する懸念に対して注意喚起を行なっており、FIAシングルシーター主任のニコラス・トンバジスがサンパウロGPでピレリやF1チームと話し合いを行なっているようだ。

 さらにトンバジス主任は、サンパウロGPスプリント後にタイヤをホイールから外し、異常な液体が付着していないか目を光らせていたという。

 この件に関してFIAから正式なコメントは出ていないが、チームがこの領域を利用しようとしているかどうかについて懐疑的な見方があるようだ。

 F1スプリント後のFIA車検レポートでは「今回のスプリントで全ドライバーが使用したタイヤは検査された」として、問題なしとされていた。

 FIAが以前提示した技術指令によって、タイヤに水分を与えることは何年も前から禁止されており、何らかの形で液体を注入していた場合はスチュワードに通達される可能性が高い。

レースペースの謎

 レッドブルは今季、ライバルチームに対するレースペースのアドバンテージがなぜ消えたのか、その答えを探っている。特にマイアミGPではマクラーレンを始め他チームの多くがアップデートだけでは説明できないような躍進を見せた。

 レッドブルのマックス・フェルスタッペンはサンパウロGPを前に、ライバルチームのロングランペースは理解しがたいと語っていた。

「いくつかのチームはレースペースで大きな進歩を遂げた。それはかなり変わったことだ」とフェルスタッペンは言う。

「昨年と比べれば、僕らは予選でもレースでも改善しているからね」

「他チームも予選ペースではそれなりのステップアップを見せたが、レースペースではより大きなステップアップをしている。僕らにとっては理解しがたいことだ」

 レッドブルでチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナー代表は最近、motorsport.comに対して他チームのマイアミGP以降の伸びについてこう語っていた。

「懐疑的かつ偏執的なら、何かが変わったと言うだろう。我々は中国GPの頃のようなマシン構成に戻したとしても、我々が経験してきたのと同じ問題があるからね」

「とは言え、潜在的には誰にとっても変化はあった。しかし、これほど極端に振れ幅が大きくなったのは初めてだ。我々がその問題に取り組み、理解しなければならないのは明らかだ」