F1サンパウロGPの予選は、開始直前に大雨に見舞われた。なんとか開催しようと、スケジュールは度々延期されることになったが、日没時間が迫ったこともあり、土曜日中の開催を諦め、日曜朝に延期されることになった。
しかしこの日曜朝も悪天候に見舞われ、予選が開催できなかった場合、決勝レースのスターティンググリッドはどう決められるのだろうか?
実はこの問題については、明確な答えはない。驚くべきことに、2024年のF1スポーティングレギュレーションには、予選が開催できない場合のグリッド決定方法を、明確に規定するモノが何もないのだ。
しかし2025年のスポーティングレギュレーションでは、予選が開催できなかった場合に関する対処が施されている。
新しいスポーティングレギュレーションの第42.1条には、次のように規定されている。
「予選が行なわれない例外的な状況では、セッションが開催できないことをスチュワードが承認した場合、レースのグリッドはドライバーズチャンピオンシップの順位に基づいて決定される」
この条文は、先月行なわれたばかりのF1委員会と世界モータースポーツ評議会で承認された。しかし2024年シーズンにこれが適用されることはない。
では現時点で予選が行なえなかった場合、スターティンググリッドはどう決められるのだろうか?
予選タイムが記録されていなかった場合、グリッドを形成するシナリオに対処できる可能性のあるレギュレーションは、実はふたつある。しかし、予選セッションが行なわれないという状況に対処できるかどうかは、明確ではないというのが正直なところだ。
スポーティングレギュレーションの39.4b条には、「未分類(unclassified)」のドライバーの扱いが、明確に規定されている。この「未分類のドライバー」とは、「Q1またはSQ1でラップタイムを記録できなかった、あるいは全てのラップタイムが抹消された」ドライバーが対象となる。
そのようなドライバーの順位は、「FP3で分類された順位(スプリントセッションが予定されている場合はFP1)に従って割り当てられる」と説明されている。
しかしこのルールは、解釈の余地が大きい。
このルールを適用すれば、予選が行なわれなければ、全てのドライバーがQ1でタイムを記録できなかったということになり、FP1の順位でスターティンググリッドが決まるということになる。しかし一方で、スプリント予選は行なわれたわけであり、それによって「分類された」ことを意味するという解釈もできる。
その場合は、グリッド順の割り当てを規定する42.3条が適用される。
この42.3条には、次のように記されている。
「累積のグリッドペナルティが15以下のドライバーには、予選セッションまたはスプリント予選セッション順位にグリッドペナルティの合計を加えたモノに等しい、暫定グリッドポジションが割り当てられる」
つまりグリッド順位は、スプリント予選の順位で決められると解釈することもできるのだ。
これらの解釈は、最終的には国際モータースポーツ競技規則により定められることになる。
参考となるのは、2019年の日本GPである。この時は台風の接近により、土曜日予選が中止となり、日曜日の朝に延期されることになった。この時も、日曜日朝まで台風の影響が残り、予選が行なえないとうリスクあった。
当時スチュワードは、予選を行なわずにグリッドを決めなければいけない場合の詳細について記したメモを発表している。この際に彼らは、「FIAのF1スポーティングレギュレーションには、この件については何も触れられていない」と認めている。
その代わりに彼らは、国際モータースポーツ競技規則の第11.9.3b条に基づいて与えられた権限を行使し、グリッドの決定方法を決めた。この規則にはスチュワードに対して、「補足規則を修正する」完全な権限が与えられている。つまりスチュワードは、異例な事態が起きた時には、グリッドの決定方法を定めることができるということだ。
2019年日本GPの当時、スチュワードは土曜日のセッションが全て中止されたことを受けて、日曜日に延期された予選も行なえなかった場合には、金曜日のFP2のタイムを基準に、スターティンググリッドを決めると結論づけた。
今回のサンパウロGPで日曜日に延期された予選が行なえなかった場合、スチュワードにはどのセッションをグリッド決定に選択するか、その権限が与えられている。おそらく、スプリント予選の結果が採用されることになるだろう。
なお日曜日のサンパウロも、広範囲で雨が降るという予報も出ている。
予選は現地時間7時30分(日本時間19時30分)予定。決勝レースのスタート時刻も、午後遅い時間は雨が強まるという予報もあるためか、予定よりも前倒しされて12時30分(日本時間4日0時30分)に変更された。