11月3日、2024年スーパーGT第8戦の決勝レース(63周)がモビリティリゾートもてぎで行なわれた。優勝したのはGT500クラスが36号車au TOM'S GR Supra(坪井翔/山下健太)、GT300クラスが88号車VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)だった。
今季のスーパーGTは例年通りノーウエイトの第8戦もてぎラウンドでシーズンフィナーレ……の予定であったが、第5戦鈴鹿が台風の影響で12月に延期されたことで、このもてぎ戦はハーフウエイトのシーズン7戦目となった。ただタイトル争いの行方を左右する、重要な1戦だ。
レースウィーク土曜日はまたしても雨となったが、予選はヘビーウエットの状態で予定通り実施された。決勝は一転して快晴の下、13時からフォーメーションラップを挟み、スタートが切られていった。
■GT500クラス
GT500のポールポジションは、クラス唯一のダンロップユーザーである64号車Modulo CIVIC TYPE R-GT。雨の中、3年ぶりとなるポールを手にした。2番グリッドには同じくホンダ陣営の8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT、3番グリッドにはポイントリーダーの36号車au TOM'S GR Supraがつけた。
スタートが切られると、64号車Moduloを駆る伊沢拓也は首位の座をキープしながら周回を重ね、そこに8号車ARTA、36号車au TOM'S、38号車KeePer CERUMOがグリッド順通りに続いた。そして先頭集団のGT300の隊列に追いついた頃、GT300車両のストップによりフルコースイエロー(FCY)が出された。
上位陣のギャップが詰まった中でFCY解除となったが、その間隙をついて8号車ARTAの松下信治が64号車Modulo伊沢をオーバーテイクした。しかしそのすぐ近くにGT300の車両がいたこともあり2台は軽く接触。ただ大きなダメージはなかったようで、共に走行を続けた。
その後またしてもGT300車両がストップしたため2度目のFCYが出されたが、リスタートのタイミングで首位交代。64号車Moduloと36号車au TOM'Sが前に出て、8号車ARTAは3番手に下がった。そして36号車を駆る坪井翔は11周目に64号車をオーバーテイクし、一躍レースリーダーとなった。
そして36号車と明暗分かれたのが同じくトムス陣営の37号車Deloitte TOM'S GR Supra。37号車は第7戦終了時点で36号車と2ポイント差のランキング2番手につけていたが、レース12周目になんとスロー走行からガレージイン。その後チームがフロントボンネットを開けて作業をしている姿が確認されたが、痛い戦線離脱となった。
首位を走る36号車au TOM'Sは快調にリードを広げた。というのも、2番手の64号車Moduloのペースがガクンと落ちていたのだ。その影響で64号車の後ろには長い隊列ができてしまったが、そこを抜け出したのは38号車KeePer CERUMO石浦宏明。8号車ARTA、64号車を90度コーナーで立て続けに料理し、2番手に上がった。
レースは3分の1を消化し、ピットウインドウが開くタイミングとなったが、GT500の各車は22周〜24周の内にルーティンストップを実施(※トラブルで周回遅れとなっていた37号車Deloitte TOM'Sを除く)。36号車au TOM'S、38号車KeePer CERUMO、8号車ARTA、16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraというトップ5になった。
トップの36号車au TOM'Sは、山下健太のドライブで後続とのギャップを17秒まで広げ、レース後半は盤石の走りを見せた。8号車ARTAの野尻智紀は一旦は2番手の38号車KeePer CERUMOに追い付いたが、その後は膠着状態。中団では接近したバトルが展開された一方で、上位陣は順位変動が見られないまま終盤に入っていった。
しかし、8号車ARTAは再び38号車KeePer CERUMOとの差を縮め始めると、野尻が53周目に38号車をオーバーテイクして2番手に上がった。
その後方では入賞圏内を走るマシンに次々波乱が。14号車ENEOS X PRIME GR Supraはスロー走行の後にガレージイン。17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTは3号車Niterra MOTUL Zとポジションを争う際、S字で3号車とGT300クラスの31号車apr LC500h GTに挟まれる格好となり、ダメージを受けてこちらもガレージにマシンを収めた。
36号車au TOM'Sは後続に実に20秒ものギャップを築き、圧巻のひとり旅を見せつけてトップチェッカー。今季2勝目となった。2位は8号車ARTAで、3位は16号車ARTAを0.136秒差で退けた38号車KeePer CERUMOだった。
36号車au TOM'Sは、今回の勝利でポイントを74点まで積み上げ、最終戦を前にしてライバルに対して大量リードを築いた。6位に入った100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTが56ポイントでランキング2番手、38号車KeePer CERUMOが52ポイントでランキング3番手、37号車Deloitte TOM'Sが51ポイントでランキング4番手となっており、上記4台にタイトルの可能性が残されているが、ポールポジション+優勝で23ポイントということを考えると、逆転は容易ではない状況だ。
■GT300クラス
GT300は31号車apr LC500h GTがポール獲得。2番グリッド以下には7号車Studie BMW M4、18号車UPGARAGE NSX GT3、65号車LEON PYRAMID AMGと続いた。ランキングトップの65号車にとっては、ライバルである2号車muta Racing GR86 GTと88号車VENTENY Lamborghini GT3が共にグリッド下位に沈んだことから(それぞれ16番手、17番手)、タイトルをその手に手繰り寄せるチャンスと言えた。
31号車LC500hのスタートドライバーはルーキーの中村仁。その中村を7号車Studieのベテラン荒聖治が攻め立てるレース序盤となった。また、3番手には65号車LEONが浮上。そんな中、11号車GAINER TANAX Zがホームストレート上でストップし、25号車HOPPY Schatz GR Supra GTがタイヤ脱輪によるコースオフを喫するなどしてFCYが立て続けに出された。
31号車LC500hがややリードを広げ始めた頃、ピットウインドウがオープンする周回数に突入した。19周を走ったところで真っ先に入ってきたのが2号車muta。追い上げを狙い、ドライバー交代と給油だけを行なってタイヤ無交換でピットアウトしていった。トップの31号車も次の周にピットイン。こちらもタイヤ無交換作戦を採り、同じ周に入った7号車Studieより前でコースに復帰した。
56号車リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rが27周を走ったところでピットインし、全車ルーティンストップを完了。31号車LC500hの首位は変わらずだが、2番手は65号車LEONで、昨年のもてぎ戦ウイナーである88号車ウラカンが3番手までジャンプアップしてきた。
その3台のギャップは、次第に詰まっていく。中でも勢いがあったのが88号車ウラカンの小暮卓史。31周目の90度コーナーで65号車LEONの前に出ると、33周目には3コーナーで31号車LC500hを交わし、ついにトップに浮上した。
GT500先頭が45周目に入った頃、61号車SUBARU BRZ R&D SPORTが1コーナーのブレーキングの際にスピン、コースアウト。この日3度目のFCYとなった。61号車は前戦オートポリスでブレーキトラブルによってクラッシュ。今回のスピンの原因は不明だが、映像を見るとブレーキングのタイミングで左フロントホイール付近からパーツが弾け飛んだように見える。
首位陥落した31号車LC500hはペースが上がらず、表彰台圏内からも脱落した上、S字でGT500のバトルに巻き込まれるような形で接触、コースアウト。ポジションを大きく落としてしまった。
88号車ウラカンは独走状態のままトップチェッカー。驚異の追い上げを見せ、今季3勝目となった。2位は65号車LEON、3位は18号車UPGARAGE NSX GT3だった。
タイトル争いは、65号車LEONが84ポイントで依然としてリード。11ポイント差で88号車ウラカンが追いかける展開となった。ランキング2番手だった2号車mutaは入賞を逃したことでランキング3番手に落ち、トップとの点差も20点と、厳しい状況に置かれてしまった。