「タイポグリセミア」というネットミームをご存知だろうか。「こんちには みさなん おんげき ですか?」と言ったように、単語を構成する文字を並べ替えても、最初と最後の文字さえ合っていれば、読めてしまう現象のことである。

以前X上では、とある施設で発見された、どう見ても「読解不可能な案内」が話題となっていた。

 
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■この案内、何かがおかしい…

今回注目したいのは、新潟県三条市に移住して飲食店兼ギャラリーを開店予定だという、メゾン伊とうさんが投稿したポスト。

「ここまでヤバい長体(正確には平体)は見たことがない」と意味深な1文が綴られた投稿には、トイレの案内プレートの上に設置された「案内」の写真が添えられている。

「何かを説明している」のは感じられるものの、20文字ほどで構成された文章の文字がいずれも尋常でないレベルで縦方向に潰れており、解読不可能な状態だったのだ…。

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■「印刷設定のミス」説も浮上

インパクト満点、且つ謎すぎる光景は瞬く間に話題となり、件のポストは投稿から数日足らずで1.5万件以上ものリポストを記録。

他のXユーザーからは「この暗号、どうやって解くの?」「マジで読めない。何これ」「もはや、文字とさえ思えなかった…」「印刷設定を間違えたんだな」など、驚きの声が続出。

中には解読に成功したユーザーもいるようで、「横方向から見たら読めた」「これスマホで見てる人は、スマホを正面に持って縦中心を維持して、横方向に傾けると読みやすくなる」といったアドバイスも確認できた。

ポスト投稿主・伊とうさんに話を聞いたところ、こちらの案内は新潟県三条市にある日帰り温浴施設「いい湯らてい」にて発見したものと判明。

発見時の心境について、伊とうさんは「読めない異様さに、これがなぜ掲示されたのか考え込んでしまいました」と振り返っている。

果たして、こちらの案内は何と書かれているのか。そしてなぜ、このような文体で掲出されたのかを探るべく、いい湯らていに取材を実施することに。

その結果、衝撃の事実が明らかになったのだ…。

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■それにしても担当者、ノリノリである

話題の案内が掲出されたのは、今年6月の下旬ごろ。男女それぞれの脱衣場に掲出されているという。

掲出までの背景について、いい湯らていの担当者は「潰れて読めない文字が『斜めから見ることによって読めるようになる』という話をネット上で見かけ、掲示物にしたら面白そうだと考えたのが掲出のきっかけとなります」と、振り返る。

ちなみに、案内に書かれた内容は「牛乳は脱衣場入口向かって左手にて販売しております。」というもの。脱衣場の入り口に牛乳の自販機を導入したばかりの時期だったため、こちらのフレーズを採用したそうだ。

初見且つ、ノーヒントでは大半の人が読めなかったのでは…。しかし、写真で見ただけでは分からないが、現地の掲出場所に大きなヒントがあったのだ。

掲出の経緯をめぐり、担当者は「通路に掲示すれば、いやでも斜めから読まざるを得ないので、通路に掲出を決めました」「文字を潰すにあたって、正面から読みにくくするため、簡潔にできる内容の文言をあえて回りくどい長文にしました。ただし、長すぎると斜めからでも読みにくくなるため、丁度いい長さを見極めるのに苦労しました」と、説明している。

そのため、現地で目にした利用客の中には「意外と読めてしまった」という人も多かったのではないだろうか。

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■脱衣場ではルールを守ろう

このように、決して「バズること」を目的として掲出したワケではなかった件の案内。担当者は同僚から「掲示物がバズっている」聞き、実際にXを閲覧して大いに驚いたそうだ。

担当者からは「この掲示物をご覧になり、いい湯らていに興味を持って頂いた皆様、本当にありがとうございます。ぜひ、実際にお越し頂き、実物をご覧頂きたいと思います」と、感謝のコメントが寄せられている。

また、Xのリプライにもいくつか指摘があったように、脱衣場では「撮影禁止」が本来のルール。こちらを踏まえ、担当者は「くれぐれも撮影はご遠慮頂きますよう、お願いいたします」と呼びかけている。

しかし「せっかく行ったのだから撮影したい!」という人は、少なくないだろう。じつはなんと、そうした利用客のために、脱衣場の外にある階段の天井に「新作」が掲出されたので、ぜひチェックしてみてほしい。まさに「神対応」である。

そんないい湯らていは、「にいがた景勝100選」の、200メートルの切り立つ岩壁・八木ヶ鼻の麓にて2000年に開湯し、「八木ヶ鼻温泉」を源泉として利用する日帰り温浴施設。

泉質は弱アルカリ性の硫酸塩泉でメタケイ酸を含有する体に優しい美肌の湯で、耳に心地よい川のせせらぎの中、八木ヶ鼻を眺めながら自慢の湯に浸かれる露天風呂が好評だという。

館内は無料休憩所の他、テレビ付きリクライナーや仮眠室、マッサージルーム、マンガコーナーを完備。また、食事処では地元三条の食材を使用した料理を提供しており、1人でもグループでも、1日ゆっくりと過ごせる空間なのだ。

今回のポストで興味を持った人は、ぜひ一度足を運んでみてほしい。

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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ