日本代表ストライカー、小川航基(NEC)がオランダリーグ第11節の対フローニンゲン戦で2ゴール・1アシストを記録し、6-0の勝利に貢献。マン・オブ・ザ・マッチに選ばれると同時に、全国紙『デ・テレフラーフ』の週間ベストイレブンに選出された。
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6分、パネンカで決めたPK弾は相手GKの足に当たり、「ちょっと危なかったですね。もうちょっと(ボールを)上げたかったんですけれど、入ったんで良かった」と本人も一瞬ヒヤリとしたよう。しかし、左からの折り返しを左足でゴール左上隅に決めた2点目のゴールは、「僕の良さが出た。しっかりと、振り切ることなくちゃんと“面”で当てて狙い通り…」と、胸を張って答えたと思いきや、「ちょっと浮いちゃって『おっ!?』と思った」と続け、シュートの軌道が微妙にズレたことを明かした。
52分には左からのクロスを小川がファーで折り返し、ビト・ファン・クローイのゴールをお膳立てして今季初アシスト。74分にはGKからのロングキックをヘッドで流し、サミ・ウアイッサのチーム5点目の起点になった。
ミッドウイークに行なわれたKNVBカップ1回戦、対PECズウォーレ戦(4-3)でも小川は2ゴールを叩き込んでいる。9月21日の対ヘラクレス戦以来、所属クラブではしばらくゴールから遠ざかっていた男が完全復活だ。
好調の要因を尋ねると、小川は「ロヒール・マイヤー監督から『俺がやらないと』という気持ちになる言葉をもらえたから」と答えた。それはPECズウォーレ戦前のこと。指揮官は「ちょっと点を取れてないけれど、キープなどお前にしかできないことがある。チームはなかなか勝ててないけれど、お前のことを信じているぞ。お前ならやってくれる」と声をかけてくれたのだという。意気に感じるストライカーは、監督の信頼に結果で応えた。
これで今季の小川はリーグ戦4ゴール。数字としてはまだ物足りないが、フローニンゲン戦でもGKからのロングボールをヘッドで正確に味方につなげ、チームの5ゴール目の起点になるなど、ポストプレーが冴え渡っており、プレーの質は高みを維持している。
多機能プレーヤーで知られる佐野航大はMFプロッパーの長期離脱もあり、最近はセントラルMFとして定着した。
「今日は自分たちのプレスがしっかりハマって、相手も蹴るしかない状況だった。セカンドボールを拾って前につなげたりとか、キープしてビルドアップしたりすることができた。みんなのセカンドボールや球際への姿勢もすごく見せることができました。そういうことが内容や結果につながってきたと思います」
なかでも佐野のインターセプトが効いている。相手にトラップさせることなくパスをカットしたり、パスの出し手のコースを呼んで足を伸ばしてボールを奪ったり、佐野のインターセプトにはいくつかのバリエーションがある。
「あのへんは兄貴(佐野海舟/マインツ)の真似ですね。ずっと兄貴のプレーを見ていたので、パスコースをわざと空けてボールを取ったりすることが勝手に染みついている。コースを空けて取ることだったり。そういうことを真似してやってるつもりです」
兄の真似だけではなく、まるで欧州の選手のように足が伸びるようになったので、インターセプトが決まるようになったのでは?
「それもある。でも、日本でプレーしていたときのほうができましたね。ヨーロッパはパススピードが速く、シュートみたいな縦パスが入るので、そういうところが難しい。守備のところは自分でも楽しく成長できてます」
楽しく守備が成長できている!?
「そうですね。強く行くところが守備の課題だったので、それを克服してできるようになるとやっぱり楽しい。守備でも攻撃でももっと成長したいです」
期せずして佐野の口から「兄貴の真似」という言葉が出てきた。私自身、そろそろ彼に海舟のことを尋ねてみてもいい頃合いかなと思ってスタジアムに来ていた。それというのも最近、マインツでのプレーにまつわる記事が増えてきており、動揺することなく落ち着いて話ができるタイミングだと思ったからだ。この夏、兄の騒ぎでショックはなかったのか?
「落ち込むというより、『何事!?』ってビックリしました。しかし、俺があがいたところでどうにもならないし、キャンプもあったので『自分がやるべきことをやるべきだ』と、すぐに気持ちを切り替えました」
兄の試合は全試合、チェックしているという。
「やっぱり同じボランチとして学ぶところがいっぱいあります。特に守備のところで誰よりも危機を察知するところとか。あの人は言葉や態度で見せないけれど、プレーで見せるところが凄い。チームにフィットするにつれ『すげえな』と思って試合を見てます。兄貴がブンデスリーガでサッカーをやれている姿を見るだけで良いです。兄貴がサッカーできていることに、すごく喜びを感じてます。自分の試合以上に、兄貴のプレーしている姿が好きだし、毎試合見ています」
NECの公式SNSは夏キャンプ中、満開の笑顔でポーズを取る佐野の写真をポストし、ファンを安堵させた。今回、私の問いには「すぐに気持ちを切り替えた」と答えてくれた。しかし、それは簡単なことではなかったはず。佐野の言葉の端々に溢れ出る兄への熱い思いが、そのことを表していた。
取材・文●中田 徹
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