「理解できない」マドリーが前代未聞のボイコット。バロンドール授賞式の舞台裏を番記者が明かす。半信半疑だったロドリはカルバハルに電話を…【現地発】

 スペイン代表のロドリは、先月28日の朝、マンチェスターから飛行機でパリに飛んだ。シャトレ劇場の最前列で、ヴィニシウス・ジュニオールとジュード・ベリンガムと並んで、バロンドールの授賞式に出席するためだった。主催者側からはその上位3人までの名前だけ聞かされていた。

 飛行機から降りたときは、ステージ上のヴィニシウスに拍手を送る自分の姿を確信していた。しかししばらくしてから、奇妙な噂が側近の耳に入った。曰く、ヴィニシウスがパリ行きの飛行機をキャンセルしたという。ロドリは真に受けることはなかった。

 またしばらくしてから、さらに噂は飛躍。曰く、レアル・マドリーは幹部も含めて全員が欠席するという。しかしそれでもロドリは半信半疑だった。式典後の記者会見で、ロドリはその場で受賞を知ったことを強調した。

「僕の名前を呼ばれて初めて知った。本当さ。関係者は何も教えてくれなかった」
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 その噂が28日の朝にパリのロドリの関係者のもとに届いたとき、ヴィニシウスはすでに何時間も前から怒りを反芻していた。前日の午後、「100%信頼できる」情報筋から賞が贈られないことを知ったからだ。

 ヴィニシウスも関係者も、スリルを演出するために、事前に結果を伝えないという主催者側の意向を知っていたにもかかわらず、その情報を信じた。マドリーの組織全体を巻き込むことになる授賞式のボイコットという考えが芽生えた瞬間だった。

 一方、授賞式に同行する予定だったヴィニシウスの友人たちに通知が届くには時間がかかった。彼らがそれを知ったのは、式典向けのディナージャケットを用意してマドリードの空港に到着した後だった。その頃、受賞予想オッズは、ヴィニシウスの1ユーロあたり1.12ユーロに対し、ロドリは5ユーロ以上の値がついていた。

 その間、「敬意の欠如」と選考結果に憤慨するマドリー内ではボイコット案が支配的になっていった。28日の午後3時前に複数のメディアを介して、代表団がマドリードにとどまるという情報を流布。それはすでに決定事項であり、ただ一つ渉外部門ディレクターのエミリオ・ブトラゲーニョを派遣する可能性が残されていただけだった。

 チャンピオンズリーグよりもEUROのほうがタイトルの重みがあるという理由でロドリが選ばれたのであれば、その両方のタイトルを獲得したダニエル・カルバハルが受賞者に相応しいとマドリーは主張した。一方、主催者側は複数の通信社を通じて、マドリーの姿勢は「理解できない」と反論した。
 
 その頃、ロドリのスマホには、祝福のメッセージが殺到していた。午後中、勝利を指し示す風船が膨らんでいく中、ロドリはそのひっきりなしにメッセージが送られてくるスマホを手に取り、2週間遅れで、自身と同じ右膝に重傷を負った代表のチームメイトのカルバハルに電話をかけた。

 ロドリは受賞後のスピーチでもカルバハルに言及。さらに報道陣の前で、「カルバハルに受賞してもらいたかった」と付け加えた。カルバハルは、ロドリ、ヴィニシウス、ベリンガムに次ぐ4位にとどまった。
 
 その間も怒りを募らせていたヴィニシウスが授賞式の後、Xに「必要なら10倍やる。彼らは準備ができていない」とXにメッセージを投稿した。

 側近の1人が後にロイター通信に語ったところによると、ここでいう「準備」とは、人種差別との闘いにも身を投じる自身の姿と結び付けて、「サッカー界が体制と闘う選手を受け入れる準備ができていない」というニュアンスが込められているという。

文●ダビド・アルバレス(エル・パイス紙レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸

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