画像はAIで生成したイメージ

看護の専門学校を卒業し、看護師として大学病院に4年間勤めた後、シニア専門の風俗業界へと転職したのは小渕麻耶さん(仮名・26歳)だ。

 「主に病棟勤務でしたが、私が担当したのは高齢者ばかりでした。これは私の希望でもなんでもなくただの『いじめ』です。その大学病院には付属の看護大学出身者による派閥があって、私のように外部の学校を出た人間はあえて、一番大変なところに配属されるんです」

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高齢者の看護ケアはケガや病気以上に、日常生活や精神的な介助が多く求められ、「医療従事者である私が、なぜ介護士のように下の世話や入浴介助、話し相手などに従事しなければならないんだ?」という不満が常にあったという。

そんな麻耶さんが風俗に転身するきっかけとなったのは、ある高齢男性がなにげなく放った「同じ下の世話をするんなら、看護師なんかじゃなく風俗で働いた方が何倍も稼げるのに」という一言だった。

「目から鱗という感じでした。看護師という仕事への情熱を失くしかけていた時期でしたし、多少の違いはあっても確かにやることに大差はないしと思って転職することにしたんです(笑)」

「せっかくなら高齢者ケアの経験を活かしたい」と考えた麻耶さんは、ネットで見つけた高齢者専門のデリバリー風俗に登録。「元看護師」という経歴が功を奏したのかあっという間に指名が集中した。

「通常のデリバリーと違い、呼ばれるのはホテルでなく自宅がほとんどです。70代の方が多かったんですが、最高齢は84歳でした。この仕事で一番厄介なのは本番の強要だそうですけど、幸いそういう経験はなかったですね」

医療知識に基づく健康相談も評判に

肉体的な負担を考慮してプレイ時間は長くても30分。ただ、プレイタイムは60分以上と決まっているため「余った時間はだいたいおしゃべりしている」と麻耶さんは語るが、元看護師としての彼女の知恵や経験に基づいた健康相談やアドバイスは利用者に評判が良く、サービスよりもこちらがメインになることも多いのだとか。

「体力的なこともそうですが、認知症の人がほとんどいない分、老人病棟で働いていた時よりも精神的にすごく楽です。しかも医療とは別の意味で社会貢献ができている気分になれるし、収入は看護師時代の4倍。悪条件の中で働いている同業者におススメしたいですね(笑)」

余談だが、プレイ中の万が一に備えて、麻耶さんの在籍する店では麻耶さんが講師を務める形でAED(自動体外式除細動器)の使い方や救命措置などの講習を行うようになったという。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。