中国でスマートフォンや家電を扱う大手企業「小米科技(シャオミ)」が10月29日、最高時速350kmという世界初のEVスポーツカー「SU7 ウルトラ」の発売を発表。予約販売開始後、わずか10分で3680台の注文が殺到したことが話題になった。

 3基のモーターを搭載する「SU7 ウルトラ」は、最高出力1548馬力。0-100km/h加速は1.98秒で、設計上、最高速度は時速350kmに達するという。

「同社の発表によれば、同社が独自開発した最大回転数は2万7200rpmの『ハイパーエンジンV8s』という電気モーターが搭載され、これにより従来のV8ガソリンエンジンと同等のパワーを発揮。さらに車体全体にはカーボンファイバーを使用することで、軽量化と高剛性化を図ったと言われています。今年10月にはドイツのサーキット『ニュルブルクリンク』北コースでは、ポルシェの『タイカン・ターボGT』のラップタイム7分07秒55を上回る6分46秒87という記録を叩き出し、中国ブランドとして初めて『ニュルブルクリンク世界最速4ドア車』の称号を手にしたとして、モータースポーツの世界でも大きな話題になりました」(モータージャーナリスト)

 中国国内での予約販売価格は、テスラ「モデルSプレイド」を意識してか、同額の81万4900元(約1755万円)に設定。好調な滑り出しに同社の鼻息も荒いが、一方、さっそく飛び出しているのが、同車の安全性を危惧する声だ。

「同社では、今回のSU7ウルトラに先駆け、今年4月に450万円クラスのSU7を発売。こちらも発売予約開始からわずか27分で5万台の受注があったとして、世界の自動車メーカーに衝撃が走りました。ところが、夏ごろから頻繁にSU7の事故映像がSNSでしばしばアップされるようになり、安全性を懸念することが起こり始めたというわけなんです」(同)

 今月2日にも、中国湖北省武漢で走行中のSU7がバランスを崩し壁面に衝突。大破する映像が地元メディアをはじめSNS上で大々的にアップ。シャオミ側は「運転手が運転を誤り、カーブで急加速して衝突した単なる運転ミス」としているものの、専門家らは、車両の駆動力を制御するトラクションコントロールシステムが正常な状態で作動していればタイヤが滑るのを防ぐことができたはず、と指摘している。

「別に投稿された動画でも、タイヤが歩道に接触しただけでエアサスペンションが故障して車体が沈み込んでしまう脆弱さが映し出されていて、300数十㎞で走るSU7ウルトラの安全性はきちんと確保できるのか、という声が沸き起こっています」(同)

 確かに、性能やスタイリングなどについては「他の有名メーカーとも肩を並べる」と評判のSU7だが、なにぶん「車づくり」の歴史という観点からみれば、同社が新参者であることは言うまでもない。このまま事故やトラブルが続けば、同社が目論む世界のEVシェアNO.1を失う可能性もあり、ライバル社の厳しい視線が注がれている。

灯倫太郎

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