〈旭川・江別…続く全裸集団暴行死〉逮捕されたオンナは「陰キャ」と「陽キャ」…記者が見た2つの凶悪事件

旭川と江別。同じ北海道内で今年、相次いで起きた男女グループによる集団暴行死事件。両事件とも“首魁”が20歳そこそこの女で、被害者を全裸にしたうえで死に至らしめる凄惨な手口など共通点もあるが、一方で登場人物の人格には少なくない違いもある。現代風の表現なら「陰キャ」と「陽キャ」とでもいうような差を、両現場をくまなく歩いた記者の視点で比較してみたい。

記者がみた2つの事件の“共通点”と“相違点” 

1件目の事件は、北海道旭川市で女子高生(17)が吊り橋から突き落とされて殺害された事件だ。

今年4月から行方不明になっていた留萌市の女子高校生(17)が5月下旬に旭川市の石狩川で見つかり、道警が6月に内田梨瑚(21)と小西優花(19)に加え、16歳の少年と少女の計4容疑者(年齢はいずれも当時)を監禁などの容疑で逮捕した。

内田、小西両容疑者は殺人容疑で再逮捕され、殺人罪などで起訴された。

現在20歳の小西被告は事件当時は19歳だったが、改正少年法の「特定少年」として旭川地検が8月の起訴段階で氏名を公表、10月23日には旭川地裁で公判前整理手続きが行われた。

主犯格の内田被告の公判前整理手続きの期日は未定で、「従犯」の少年は初等・中等少年院送致の保護処分が決定し、少女は保護観察となっている。

この事件では容疑者グループと被害者には面識がなかった。

被害者の女子高生が自分の写真をSNSに無断掲載したことを知った内田被告が、金を脅し取ろうと画策。電子マネーで10万円の送金を要求したが受け取りがうまくいかず、4月18日に女子高生を留萌市の道の駅に呼び出して車に監禁した。

旭川市に向かう途中で逃げようとした女子高生を暴行し、神居大橋の近くで全裸にさせ土下座させる謝罪動画を撮影した。そして、女子高生を欄干に座らせ『落ちろ、死ね』などと脅し、石狩川に落下させ死なせたという陰惨な事件だ。

もうひとつの事件は、北海道江別市の公園で大学生の長谷知哉さん(20)=千歳市=が集団暴行を受けて死亡した事件だ。

交際相手だった八木原亜麻容疑者(20)=江別市=と川村葉音容疑者(20)、16~18歳の少年4人の計6人が傷害致死容疑で逮捕されている。

10月25日夜、現場近くの八木原容疑者の自宅で別れ話をしていた長谷さんを、川村容疑者をはじめとする5人が呼び出し、顔を殴るなど集団で暴行、外傷性ショック死させた。26日の早朝に公園で発見された長谷さんは全裸の状態で、身分証や財布なども残されていなかった。

八木原容疑者を除く5人のうちの数人が「長谷さんのキャッシュカードで現金十数万円を引き出して山分けした」と供述しており、道警は強盗殺人も視野に捜査を進めている。

なお、逮捕された少年のうちの1人は川村容疑者の交際相手だ。

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とにかくワルで評判だった“サンロクのリコ” 

これまでの報道でも明らかなように、両事件を主導していたのは旭川が内田被告であり、江別が川村容疑者だ。

内田被告は拘留期限満期まで『橋から落ちたかどうかは知らない。置いてきただけ』と殺人容疑を否認し、起訴されている。内田被告らは被害者のスマホを橋から離れた場所で破壊するなど証拠隠滅を図っており、事件後に複数の友人に『村山さんに謝罪させ、その後は本人も帰った』と告げるなど隠ぺい工作を重ねていた。

一方の川村容疑者については認否がまだ明らかにされていないが、逮捕前には友人の母親に『自分はあまり暴力を加えていない。ただ見ていただけ』と泣きながら打ち明けていたという情報があり、調べにも『八木原容疑者に対し長谷さんに謝ってもらおうと思った』などと供述しているとされる。

事件後の対応を比較すると、明らかに内田被告の方が「事件慣れ」している印象を受ける。実際に、両者の地元を取材した際の「所感」からもそれは感じ取れた。

まずは内田被告について。

近所の人らによれば両親や兄との家族仲も良く、自宅前でバーベキューをする姿なども目撃されている。

だが、内情はそれなりに複雑だったようだ。父親は建築関係の会社を経営しており、母親は化粧品メーカーの仕事や介護職に従事していたが、以前はキャバレーで勤務していたこともあった。

そんな母親に連れられ、内田被告は小学生の頃から夜の繁華街で多くの時間を過ごしてきた。古くからの知人は当時、内田被告に「お母さんはお父さんがいるのになんで他の男の人と一緒にいるの?」とよく尋ねられ、返答に困ったそうだ。

近隣住民の多くが内田被告を『とにかくワル』と認知していた。内田被告は中学時代から派手なタイプで目立っていて、男に対しても肉食だったという。気に入らない同級生については、容姿をイジる、無視をするなど陰湿なイジメを繰り返し、高校生になると酒やタバコだけでなく、大麻などもやっていたという証言がある。

地元を取材で回っていても、ヤンキーや今風の若者、多くのタイプの人間に『リコ』の呼び名で広く知られ、旭川随一の歓楽街「3・6(サンロク)街」でも多くの人間に認知されていた。

事件についても「リコならやりそう」という多数の声がある一方で、「知ってるけど話せねえ」と凄むアウトロー風の若者や、「話すなってグループLINEで回ってる」と擁護するような動きもあった。

内田被告自身がパパ活をしたり、ガールズバーで働いたりしたこともあるが、交友関係も夜の街の住人やヤクザ、現職の刑事らと幅広く、周囲からは暴力的な臭いが漂っていたのだ。

 (後編に続く)

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班