「ツウの間で知られる世界最高峰イベント」130を超えるブランドが集まった時計展示見本市『香港ウォッチ&クロックフェア』を時計ライターが現地レポート!の画像一覧

2024年9月3日から7日にかけて香港で開催された「香港ウォッチ&クロック・フェア」&「Salon de TIME」に参加してきました!時計通の間で知られる世界最高峰の時計業界イベントで、15 の国と地域から 700 以上のグローバルな出展社が集結。

名だたる高級ブランドから“掘り出し物”な新進気鋭ブランドまでの注目作を間近に見ることができた他、「隕石ダイヤル」「ローター」など特定部品・商材を得意とする業界関係者向けサプライヤーも出展していて、時計の魅力を多角度から味わえる貴重な場になっていました。そんな会場の様子をお届けします!

130を超えるブランドが集まった「Salon de TIME」


会場は、香港ビジネスの中心地に近い場所にある香港コンベンション&エキシビションセンター。


毎日のように世界クラスの会議や展示会を開催している大型施設で、日本でいえば東京ビッグサイトや幕張メッセに近いロケーションです。


初日には、業界関係者が一堂に集まってのオープニングセレモニーを開催。メディア関係者も世界各国から集まり、注目度の高さが伺えました。


では、さっそく会場内を遊覧。まずは「Salon de TIME」にお邪魔することに。

昨年までは「Salon de TE」の名で行われていた時計フェアで、本年からは一般公開&入場無料となり、より多くの時計ファンに門戸を広げての開催に。5つのテーマゾーンに分けられ、130以上の時計ブランドが展示されていました。

名だたる高級ブランドが集まった「ワールドブランドプラザ」


「ワールドブランドプラザ」では、世界で知られる一流ブランドが集結。


ボーム&メルシエは、スポーティ&エレガンスなスタイルで人気を博す「リビエラ パーペチュアルカレンダー40mm」などをお披露目。


モンブランのショーケースは、グレイシャーダイヤルと鮮やかなカラーリングが目を引く「モンブラン 1858 アイスシー オートマティック デイト」が中心でした。


パルミジャーニ・フルリエでは、バーリーコーン(麦の穂)模様のギョーシェが美しい2針モデルの「トンダ PF」をはじめとするドレスウォッチを展示。


ボヴェは、トゥールビヨンを搭載したコンプリケーションにダイヤまでセッティングした超高級モデルを含む、希少な時計を披露。

数十万円から数千万円もする高級時計が一堂に介した様は、実に圧巻。関係者をはじめ、地元の時計好きも大勢集まり、一番人気のブースになっていました。

クラシック&エレガンスな「ルネッサンス モーメント」

次に会場で目を引いたのが、ヨーロッパ発祥のブランドが集まる「ルネッサンス モーメント」。スイスやフランス、イタリアなどを母国とする複数のブランドが出展していました。


フランスからは、同国最大の時計メーカーであるピエール・ラニエが参加。クルマのホイールから着想を得たというスケルトンデザインが特徴の「パドック」は本誌でも紹介したことがありますが、その新作となるSSブレスモデルやラバーストラップモデルが展示されていました。


ロジェ・タロンがデザインしたMACH 2000シリーズでおなじみのLIPも。12時位置にリューズを配置したスクエアケースモデルなど、このブランドらしい独創的なモデルもラインナップしていました。


フランスの実力派ブランドとして知られるイエマでは、先出しとして「イエマ×アラン・シルベスタイン・リミテッドエディション」をお披露目。伝説的なフランス人時計職人かつモダニストアーティストならではのセンスを遺憾なく発揮したモデルとして、ジャーナリストやバイヤーが殺到していました。


日本ではさほど知名度はないものの、その独創性で一部のファンから支持されているスイスのグレコ・ジュネーブも出展。このブランドおなじみの六角形ケースにダイヤをセッティングしたラグジュアリーモデルを登場させ、アバンギャルドなスタイルを主張していました。


こちらも日本における知名度はそこまでないものの、1886年創業とスイスの老舗時計ブランドであるマタイ・ティソも展示。エレガントなデザインに大胆なオープンワークを組み入れ、モダンさを表現していました。


チェ・ゲバラも愛した時計として知られるスイスのマーヴィンも、1850年創業とやはり老舗のブランド。視認性に優れたムーンフェイズで、航空時計としての魅力を伝えています。

ファッショナブルなデザインが揃う「シック&トレンディ」

ファッションをリードするブランドを集めたという「シック&トレンディ」では、日本でもおなじみのブランドが参加していました。


イタリア生まれのスピニカーでは、ここが得意とするダイバーズを数多くラインナップ。海洋保護活動を行う「ホエール サンクチュアリ プロジェクト」とコラボしたモデルをはじめ、話題作を数多く発表していました。


展示ビジュアルから格別なこだわり見せていたのが、2010年に日本で生まれたタックス。カセットテーププレーヤーからインスピレーションを受けた「オートマティックカセット」や、ローライフレックスをモチーフにした「ツインレンズ」など、デザインソースと並べた展示が衆目を集めていました。

このほか、「Salon de TIME」では高度な職人技を活かした「クラフトトレジャー」、スマートモニタリング技術を搭載した先進の「ウェアラブルテック」といったテーマが設けられ、腕時計が魅せる多様な世界を表現していました。

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興味深いイベントやジャーナリスト向け会合も!

「Salon de TIME」では、数多くのイベントが催されていたのも特徴です。


「中国時計職人の美意識の進化」と銘打たれたイベントでは、中国の著名な時計評論家や中国時計ブランドのキーマンが登壇。これまでの歴史を踏まえたうえ、中国時計ブランドの現状と未来について熱く語り合っていました。


「ウォッチパレード」という、一風変わったショーも。モデルが次々とランウエイに現れながら手にした腕時計をアピールするという、他ではなかなか見られない構成です。時計そのものは小さくて肉眼ではよく見えないものの、そこは後ろのスクリーンに大きく写し出された映像でカバー。ただ座っているだけで何十もの時計を紹介してくれるのは、なかなかの体験でした。


本イベントの開催に合わせて行われたという「香港時計デザイン・コンペティション」の優秀作も展示されていました。香港の時計デザインの交流を促進し、創造性を育むことを目的としたもの。時計製造のこれまでの文脈からは離れた斬新なデザインや、中国らしい芸術表現がなされたものがあり、業界の明るい未来を感じさせるものでした。


一般公開は行わない、ジャーナリスト向けのイベントも。日本や中国、韓国、スイス、フランス、イギリスの時計協会関係者が一堂に介し、時計業界の現状を報告する場に。

  • スイスの時計輸出金額は2020年のコロナ禍以降堅調に回復しているが、2024年1-6月期輸出量は3.1%と微減。アメリカや日本は増加しているが、中国と香港がマイナスだった。
  • 2024年1-6月期にスイスから世界へ輸出された時計のうち、500~3,000スイスフラン(約9万円~約53万円)は量も金額も20%近く減じているものの、3000スイスフラン(約53万円)以上の売上金額は増加している。
  • 中国の時計産業は回復傾向にあり、2024年1-6月期は12.53%増だった。

といったことが伝えられ、新型コロナ禍騒動以降、業界全体が堅調に推移していることが報告されました。