ふたりの恩師・曺貴裁監督と鬼木達監督の前で川崎DF佐々木旭が示した成長の跡。芽生えた悔しさと手応え

[J1第36節]京都 1-1 川崎/11月9日/サンガスタジアム by KYOCERA

 5番を背負い今や川崎の最終ラインに欠かせない存在となったDF佐々木旭にとって、1-1のドローだった京都戦は、またひとつ忘れられないゲームになったのかもしれない。

 対戦相手のベンチに座っていた曺貴裁監督は、流通経済大時代に薫陶を受けた恩師。愛のある指導のお陰で、川崎でプロの夢を果たすことができた。

 一方、川崎には左SBとして入団し、今季はCBとして才能を開花させているなか、鬼木達監督からも大きな期待をかけられてきた。

 佐々木にとってふたりは「同じくらい怖い」と冗談交じりに振り返るが、その教えがあったからこそ、リーグを代表するCB、そしてSBも臨機応変にこなせる存在へと成長を遂げたと言える。

 京都戦では真骨頂のCBの位置からのドリブルも披露。相手をスルスルとかわしながら持ち上がり、クロスでFW山田新のシュートチャンスにつなげた一連のプレーは、ならではの姿であった。
【動画】京都戦の川崎のゴール
 加えて8日前の35節の鹿島戦、チームが1-3と完敗を喫したなか、佐々木もCBとしてフィジカルに長けた相手への対応に課題を残し、鬼木監督にも指摘されたという。

 ただ続くACLエリートの上海海港戦、そして3トップのラファエル・エリアス、マルコ・トゥーリオ、原大智が柔軟にポジションを変えてくる京都戦でも、インテンシティや空中戦の競り合いで堂々と渡り合ってみせた。このあたりの修正力も佐々木の持ち味と言えるのだろう。

「やっぱりあそこ(高い位置)で(相手に)収めさせてしまったら、ピンチになりますし、そこを潰せれば自分たちの攻撃を続けられる。収めさせてしまうとゴール前までいかれてしまうので、今日の対応は継続させていきたいです」

 一方で京都に勝ち切れなかったことも改めて悔やむ。失点はPKからで、味方同士がボールを見合って与えてしまったCKから、ハンドを取られ、点を失う形であった。

「あの時間帯はきつかったというか押し込まれている展開で、自分たちで何をすべきか、もっとハッキリできれば良かったです。PKに関してはチームの責任です」

 そして曺貴裁監督に成長した姿を見せられたかという質問には「まだまだでした。また来年ですね」と口にした。

 それでもふたりの指導者のエッセンスをブレンドさせた佐々木は、改めて興味深い存在である。

 ちなみに佐々木は後半途中から右SBに回ったが、マッチアップした相手の左SBは、流通経済大の同期である佐藤響。

「3年間同部屋だったので、特長は分かっていた」と対戦を楽しんだようだ。

 試合後には両チームのJ1残留も決定。来季の京都戦にも佐々木の姿はあるのか注目だ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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