マンガの実写化作品には、ときに刺激の強い描写を理由に年齢制限が設けられることがあります。そうならないために原作の過激なシーンをマイルドにしたり、思い切ってカットしたりする作品も珍しくありません。一方で年齢制限に臆せず、原作の過激さを映像に落とし込んでみせた「R指定」映画もありました。



映画『ばるぼら』ポスタービジュアル (C)2019「ばるぼら」製作委員会

【画像】え…っ?「『ばるぼら』の前にもR指定作品に?」「男装がいちばんドキドキするかも」 こちらが二階堂ふみさんが演じた衝撃キャラです(5枚)

映像化しちゃって大丈夫なんですか?

 大人向けマンガの多くには、刺激的な暴力表現や性愛描写がつきものです。こうしたマンガの実写映画化も年々増えていますが、表現が控えめになり、原作の過激さが薄まってしまった作品も少なくありません。逆に原作の過激さを見事に映像へ落とし込んだ作品もあり、そちらはそちらで物議をかもしてきました。

『俺たちに明日はないッス』(R15+)

 さそうあきら先生の性と青春をテーマにした短編マンガ『俺たちに明日はないッス』は、2008年に実写版映画が制作されました。主人公は「比留間(演:柄本時生)」、「峯(演:遠藤雄弥)」、「安藤(演:草野イニ)」のダメ男子高校生たちで、本編ではそれぞれの少しゆがんだラブストーリーが展開されます。

 同級生の「友野(演:三輪子)」の弱みを握って関係を迫る比留間、性知識が全くない「ちづ(演:安藤サクラ)」と関係を深めていく峯、グラマラスな女子高生「秋恵(演:水崎綾女)」の意外な性癖に翻弄される安藤、といった人間関係のなかでも印象的なのが、峯とちづのエピソードです。

 劇中にはふたりが初めて行為に及ぶシーンが描かれており、そこでちづを演じる安藤サクラさんがバストトップあらわな濡れ場に挑戦しています。ちなみに同作は、安藤さんが役者デビューしてから1年ほどの作品です。のちに『百円の恋』や『万引き家族』などで大胆な場面を披露した安藤さんにとって、原点ともいえる作品かもしれません。

『ばるぼら』(R15+)

 過激な性愛描写でいえば、手塚治虫先生の同題マンガを息子の手塚眞氏が実写化した『ばるぼら』も忘れてはいけません。物語は、天才小説家の「美倉洋介(演:稲垣吾郎)」が、謎の少女「ばるぼら(演:二階堂ふみ)」と出会うことで動き出します。異常性欲からくる幻覚に苛まれていた美倉は、不思議な力を持つばるぼらと奇妙な依存関係を築いていくのですが、それは美倉にとって破滅への入口でした。

 劇中にはふたりの情事が幾度となく登場し、ばるぼら役の二階堂さんが惜しみなく一糸まとわぬ姿を披露しています。ただ映像美の巨匠と謳われるクリストファー・ドイル氏が撮影監督を務めていることもあって、そこに変ないやらしさはありません。むしろ芸術ともいえる美しさで、ネット上では「二階堂ふみさんの美しい裸体が芸術の女神『ばるぼら』にぴったり」「濡れ場は想像以上。でも下品な印象はなく美しくストーリーに溶け込んでる」と、美しさが評価されていました。

『ダブルミンツ』(R15+)

 中村明日美子先生のダークなBLコミックを原作とする『ダブルミンツ』も、なかなか刺激的な作品です。読みは同じの主人公である「壱河光夫(演:淵上泰史)」と「市川光央(演:田中俊介)」は、高校時代の同級生で、光夫は冷酷で高飛車な光央の下僕でもありました。ある日、人を殺めてしまった光央は、遺体を隠すため光夫に協力を頼み、ふたりが共犯になるところから物語が展開していきます。

 刺激の強い性愛描写を理由に年齢制限が設けられた同作ですが、過激な部分はそれだけではありません。大人になった光央は裏社会に身を置いており、劇中には激しい暴力シーンが数多く登場します。特に光央のやらかしにより起こる、組からの容赦ない制裁は目を背けたくなるほどです。

 しかし、ふたりが苦難をともにするなかで、主従関係が変化し、お互いがなくてはならない存在になっていく過程は、過激な描写以上に高く評価されています。2024年8月に『ダブルミンツ 完全版』が発売されたのをきっかけに、リバイバル上映を期待するファンも多いようです。