MotoGPの2024年シーズンにドゥカティ陣営のグレシーニへ移籍して活躍しているマルク・マルケス。しかしそんな彼は、ホンダ時代末期には、かなり自信を喪失してしまっていたという。
マルケスは2013年に最高峰クラスへと昇格するといきなりチャンピオンとなり、その年を含む7シーズンで6回頂点に輝くという無敵ぶりを発揮してきた。
潮目が変わったのは2020年のヘレス戦だった。マルケスはここでクラッシュによって右腕を骨折。この怪我が原因となり、彼のキャリアは全く違う方向へと転がりだした。
マルケスはこの怪我で合計4回の手術を受ける必要があり、度々欠場が続いた。その期間にホンダは低迷してマシンのパフォーマンスはトップ争いから程遠いモノになり、マルケスをしても上位争いが難しくなった。
それでも昨年の日本GPでの3位などマルケスは奮闘していた。ただ彼は長年を共にしたホンダを離れ、2024年からドゥカティ陣営のグレシーニへと移籍する決断を下した。
結果的にこの判断は大成功となり、マルケスは上位争いに帰還。2025年のドゥカティファクトリーチーム昇格も勝ち取った。
しかしそうなる前、ホンダ時代の末期にマルケスは状況が厳しすぎたことで、自らのMotoGPキャリアは終わったのではないかと考えるほど自信を喪失していたという。
「2年前、そして1年前は多くの人が……そして僕でさえも疑っていた。僕は自分の時間が終わってしまったのではないかと、疑問に思っていたんだ」
マルケスはMotoGPのYoutubeチャンネルでそう語った。
「でもそうはならなかった。(グレシーニへ)移籍する決断をしたことでね。僕はいつの日か、なぜその選択をしなかったなんて後悔するのは嫌だったからだ」
「競争力を発揮しタイトルを勝ち取り、毎年それを争っていくために僕は手にしているモノ全てを使っていくつもりだ」
なおマルケスは、グレシーニ移籍が成功していなければ、MotoGPを引退していただろうとも語った。
「去年決めた移籍は、もう成功しているんだ。だってそうじゃなければ、僕は今年引退を発表していただろうからね」
「1年前、僕の脳内にはたくさんの疑問と疑念があった」
「それから1年が経ち、それら全ての疑念は消え去って、僕は競争力のある状態へ戻ってきた。2019年のようなレベルだとは言わないけれど、プッシュし続けてやり続け、特にMotoGPの特別な精神を持つには十分な競争力があるレベルだと思う」
「そして再び勝利や表彰台を味わうことができた。トップを争っている時のあの特別な緊張感は格別だね」
マルケスは2024年シーズン自体については以前、再び優勝することの重要性を低く見積もり、主な目標は2025年の移籍に備えることだと語っていた。しかし2024年中に勝利したことは、様々な疑念を克服するのには役立ったと改めて語った。
「優勝するというのは、大きな自信を与えてくれるんだ」とマルケスは言う。
「この3~4年間で僕は腕の手術を4回受けて苦しみ、良い結果も出せずにいると自信を失い始めて、疑念が頭の中を渦巻くようになった。バイクが悪いのか? 僕が悪いのか? 肉体的なコンディションが原因なのか? とね」
「一歩ずつそうした疑念に答えて、表彰台やポールポジション、スプリント勝利で自信を再構築していくことが必要だった。そして決勝での勝利は、とても重要なものだったよ」