ジャンボ! 今回もアフリカ・ケニアの首都ナイロビにあるポテト屋さんをポテロールしていくよ。
とある日のランチどきに訪問したのは、ケニアのみならず “アフリカ最大のスラム街” としても有名な「キベラスラム」のすぐ近く、ランガタロード沿いにあるポテト屋さん。
なお、店名はない。しかし、なぜ店名がないのか聞いてみたところ、「深イイ話」ではなく「深ヨクナイ話」が山ほど出てきた。
【フォト】スラム街から来るお客さんたちで大繁盛の「闇ポテト屋」さん
店先のショーケースでポテトを売る男性に声をかけてみたところ、「私がオーナーだ」との返事。
いろいろ聞きたい。まずは、この店の独特すぎる店構え。よーく写真を見ると分かると思うが、
店部分はテントなのだ。道路にせりだした感じになっている。いったいなぜ、こうしたのか?
オーナー「見ての通り、我が家は道路沿いにある。道路にあるドアを入ったら、すぐに家。ポテトを売る場所がない。なので、ポテト屋さんをするための場所を確保するため、道路(歩道)に少しだけハミ出す感じでテント建てにしたのさ」
──家の中には何があるの?
オーナー「ポテトの材料であるジャガイモとか、食器とかが置いてある。あとはトイレがあるけど、ウチのトイレは壊れているので使えない。もしトイレが必要なら他のトイレを当たってくれ」
──さっき私がここに来た時、あなたはいなかったけど、どこか別の場所のトイレに行ってたの?
オーナー「お客が来ない時のオレは、家の中でじっとしている。ポテトを調理する時やポテトを売る時にしか外には出ないようにしている」
──なぜ隠れているのだい? なぜ店名も出さないのだい?
オーナー「仮に店名(レストランの名前)が決まったら、収入の一部を政府に支払われなくてはならない(所得税的な税金?)。ウチは貧乏だからそんな金がない。だから名前を付けないのさ」
──店名がないデメリットは?
オーナー「ないね。見ての通り、お客はひっきりなしに来ているだろう。店名がなくても客が来るから問題ない。また、もしも店名があったら、毎年、健康状態について保健省で検査を受けなければならない」
──その “健康検査” にも金がかかると?
オーナー「その通り。健康状態の検査や、その他の検査。すべてにおいて、オレにとっては多額と感じる費用がかかる。なので店名を出す(=営業許可を得る)ことにメリットはないのさ」
──それって闇営業ってこと?
オーナー「まあそういうことになるね。たまに保健省の職員がオレのことを探しにくる。そんな時は事前に察知して店を畳み、ドアを閉めて家の中に隠れる。てな感じで、“すぐに店を畳む(普通の状態にする)ためのテント” でもあるってわけさ」
──すぐ近くがキベラスラムだけど、そのあたりの問題点は?
オーナー「それは非常に大きな問題だけど、なんとも言えない感じでもある。まず最大の問題は、キベラスラムの不良少年たちがウチのポテトを買いに来ること。スラムの彼らは金を払わず逃げていくことも多々あるから」
──食い逃げってやつだね。
オーナー「ウチの店の客の多くはキベラスラムから来ている。なので、問題も多いけど、逆にキベラスラムに助けられているという事実もある。だからなんとも言えないんだ」
インタビューもそこそこにしてポテトを注文してみた。50ケニアシリング(約60円)と100ケニアシリング(120円)の2種類あるとのことだったので、インタビューに答えてくれたお礼の意味も込め100kes版をオーダー。
食べてみたところ……
美味くはないし、衛生的にも良好とは言い難い。しかしながら、その後、お腹を壊すことはなかったので、そこまで悪いポテトではないのかもしれない。美味くはなかったけども。
ちなみにオーナーの話によると、先述の通り、この店を利用するのは、少し離れたキベラスラムの住人が主で、この店の近所の人たちはまったく利用してくれないのだという。
なぜだろう……と思いながら、店の中にいるオーナーのことを観察していたら、彼は家の中のトイレを使い始めた。私には「壊れているから使えない」と言っていたトイレを使い始めた。
お客を家に入れたくないのか。お客には絶対にトイレを使わせない方針なのか。それとも単なるウソつきなのか。
私はよくわからないが、私はこの店のことを好きになれなかった。クワヘリ。
執筆:チャオス(カンバ族)
超訳:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.