石破茂(C)週刊実話Web
第2次石破茂内閣が発足した。先の衆院選で与党過半数割れとなったため、少数与党としての船出だ。
衆院でキャスティングボートを握る国民民主党は政策面で自民党に高めのボールを投げ、石破首相は七転八倒。こんな状況が続くようではまともな政権運営をすることはできないだろう。
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そんな中、永田町では自民と立憲民主党との大連立構想が急浮上。国民民主は結局、自民から見捨てられるのか――。
自民党税制調査会は11月6日、幹部会合を開き、国民民主党が主張する、年収が103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」の対応について協議した。
また、14日には国民民主党との協議を開始した。
ただ、自民党内には「少数与党なんだから国民民主の主張をのむしかない」という諦めにも似た声がある一方で、「国民民主は103万円を178万円に引き上げるよう求めているが、簡単な話ではない。国と地方の1年間の税収が計約7兆6000億円減る」と国民民主の主張は受け入れられないとの声も根強くある。
国民民主のもう一つの看板政策であるガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除では、税収が国と地方で1兆5000億円減るという試算もある。
自民の閣僚経験者は「第4党の国民民主に第1党の自民が振り回される構図は健全とは言えない。第1党より第4党の意向が優先されては、民意が国政に正確に反映されたとは言えない」と憤る。
国民民主の政策に対し、自民が否定的な姿勢を示すと、玉木雄一郎代表ら執行部はすぐに「今年度補正予算案や来年度予算案、税制改正には協力できない」などと牽制してくる始末で、自民内には「玉木氏の好き勝手にはさせない」(中堅議員)との不満が鬱積するばかりだ。
そこでにわかに浮上したのが自民と立憲民主党との大連立構想だ。では、なぜ連立の相手は立憲なのか。
国民民主とは「やってる感」を演出
全国紙政治部デスクはこう語る。
「税収が減るという試算はいずれも財務省によるものです。立憲の野田佳彦代表は旧民主党政権で首相のほか財務相も務め、財務省ベッタリの政治家です。財政規律派であり、将来的に消費税増税は避けられないと思っています。財務省としては大連立を実現させて、消費税増税と財政健全化を進めたいと考えています。財政出動を強く求める旧安倍派が数多く落選した今こそ、財政再建を進める好機と思っていることでしょう」
自民党関係者は「個別政策ごとに国民民主の顔色を窺うより、野党第1党の立憲にしっかりと責任の一端を担わせるほうが、政権運営は安定するのではないか」と国民民主切り捨てをにおわせる。
それなら今のうちに国民民主と手を切り、立憲と大連立を模索する手もあるが、それをしないのには理由がある。
「政治改革をめぐり立憲は企業団体献金の禁止を訴えているのに対し、国民民主はこれに否定的です。企業団体献金を禁止したくない自民は国民民主と一緒になって政治改革に取り組み、『やってる感』を演出し、企業団体献金の禁止は免れたいというのが本音です」(政治部与党キャップ)
では、立憲との大連立は実際に実現するのか。
遡ること17年前の2007年秋。旧民主党が政権交代を果たす前のことだ。実は、このときも大連立構想が浮上している。
「衆参ねじれ国会」のもと、当時の福田康夫首相(自民総裁)は、民主党の小沢一郎代表に大連立を持ち掛けた。
党首会談で小沢氏はこれを受け入れたものの、党に持ち帰ったところ反対の大合唱に遭い、頓挫した。
このとき大連立に反対した1人が野田氏である。
当時は政権交代が見えていたため、自民とわざわざ連立を組んで、自民の延命に手を貸す必要はないとの声が大勢だった。
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小沢氏も「大連立構想」を推進か
だが、今回は状況が異なる。
来年夏の参院選で自公を過半数割れに追い込んだところで、政権交代が起こるわけでもなく、起こるのは混乱だけ。来年は衆参ダブル選挙も取り沙汰されているが、実際に行われるかどうかは見通せない。
展望が開けないのは自民だけでなく立憲も同じなのだ。
だったら、自民と大連立を組み、国政で影響力を発揮したほうが党勢拡大につながる。
立憲内にはそんなシナリオがくすぶっている。
遅くとも来年夏の参院選前までには自民内で「石破おろし」が起こることが予想されるため、連立を組むとすれば石破政権が退陣するまでということになるだろう。
この大連立構想には野田氏の後ろ盾である小沢氏も理解を示しているという。
政権担当能力があることを示す絶好の機会と判断しているようだ。
折しも、自民と立憲の国対委員長が常任委員長ポストをめぐり会談し、政府の予算案を審議する重要ポストである予算委員長を立憲に明け渡すことで合意した。
予算委員長には安住淳前国対委員長が起用された。
予算案の衆院通過に向け大詰めを迎えるのは例年2月ごろだ。
衆院通過を遅らせることで、予算案の年度内成立を阻むことは可能なわけで、立憲は新たな武器を手に入れたことになる。
自民は立憲と協調しながら国会運営をしていかなければならず、事実上、大連立は始まっているとも言える。
石破政権の生殺与奪は立憲が握っているとも言えるのだ。
「週刊実話」11月28日号より一部内容を変更