KTMは業績の悪化によって雇用の削減などに取り組まなければならなくなっているが、MotoGPプログラムへの影響はないという。
KTMは今年上半期の売り上げが27%も減少するなど販売不振にあえいでおり、さらに下半期も予想通りの成長が見込めないことが10月末に明らかとなるなど、会社は厳しい経営環境に直面していた。
この事態を受け、会社は上半期にオーストリアのオーバーエスターライヒ州の拠点で309人の従業員を削減。8月にはさらに200人の雇用が削減された。
KTMはつなぎ融資も受けた上で、さらに人員削減の判断を下しており、最大で300人の削減が見込まれている。さらに工場でも2025年1月と2月は生産が停止され、生産ラインも半減……従業員には有給での自宅待機が発生する予定だ。
株価という面でも親会社ピエラ・モビリティは2022年2月のピークから9割近い価値を失っている状況にある。
そうした経営状況にあることで心配されるのは、レースプログラムへの影響だ。実際、ハスクバーナやGASGASといった傘下ブランドよりも、よりグループの核心たるKTMへと焦点が集められることになっている。2025年のダカールラリーへの出場がKTMの3人のみとなっていることはその一例だ。
そしてMotoGPはKTMのレースプログラムの中でも、特に費用のかかるシリーズだ。しかし周囲の心配とは裏腹に、KTMはMotoGPプログラムへ影響が及ばないようにしているという。
サテライトチームのテック3・GASGAS代表のエルベ・ポンシャラルはmotorsport.comの取材に対して、現時点でMotoGPプログラムが危機にさらされていることはないと話した。
「当然だが、こういったニュースを読むのは、決して良いものではない」とポンシャラル代表は語る。
「しかしモビリティ業界全体を見ても、誰もが苦しんでいる。ドイツの自動車ブランドは常に強力だったが、今フォルクスワーゲンに何が起きているか知っているだろう。これは前例の無いことだ。自動車業界も、バイク業界も、誰もが経済的に苦しんでいるんだ」
「私はステファン・ピエラ(KTMのCEO)、そしてヒューバート・トランケンポルツ(取締役)のことをとても尊敬している」
「数日前にヒューバートと話をしたが、彼は最悪の状況は終わったと言っていた。彼らは正しい決断をしたと自信を持っていると、私に太鼓判をおしてくれた」
「今は痛みを伴う決断をしなくてはいけない。従業員の数や生産能力を減らしたり、在庫を減らすための値引きなどね。これらが現時点での最も厳しいことだ」
「レースへの影響はあるが、MotoGPには触れさせたくないと聞いている。ブランドのフラッグシップだからだ。これはステファンやヒューバートの言葉であり、彼らがボスなんだ」
「新聞の記事を読むよりも、彼らに話を聞きたい。情報源に聞きたいんだ。心配する必要はないと保証されている。もちろん、彼らは苦しんで辛い決断もしなくてはならないが、それはビジネスの営みの一部だ。人生には浮き沈みがあるんだ」
なおKTM陣営は2025年シーズンは、ファクトリーとテック3の2チームが同じレッドブル・KTMカラーで挑む予定で、テック3にはマーベリック・ビニャーレスとエネア・バスティアニーニが加入する。