16本のパスを繋いで均衡を破る。インドネシア戦の先制点で小川航基が果たした役割「たまたまのゴールではない」【日本代表】

[北中米W杯アジア最終予選]日本 4-0 インドネシア/11月15日/ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム

 日本代表は北中米ワールドカップ・アジア最終予選の5試合目となるインドネシア戦で4-0の勝利を飾り、勝点を13に伸ばした。

“完全アウェー”の過酷な環境でも、相手の5バックの守備に対して自陣からボールを繋いでチャンスを作った。その1つが35分の先制点に繋がったが、ここで大きなポイントとなったのが、ボランチの守田英正とシャドーの鎌田大地の幅広い関わり、そしてFW小川航基のストライカーらしい動き出しだ。

 結果的には相手DFのオウンゴールとなったが、このシーンは小川が左に流れてのクロスが弾き返されて、スローインになったところから始まり、16本のパスが繋がる形で得点に結び付いた。

 最終ラインのボール回しで左から右に展開し、そこから後ろに戻してインドネシアのディフェンスを日本側に引き出すと、バックパスを受けたGK鈴木彩艶から右ワイドの板倉滉に渡り、そこに守田がのぞいてボールを受けると、縦に運んで右外の堂安律を追い越して、同サイドのディフェンスを動かしながら、堂安に時間とスペースを与えた。

 そこから中央で鎌田が絡んで、中央に構えていた遠藤航につながると、遠藤は中央に守備を引き付けて、3バック左の町田浩樹に前向きでボールを持たせた。

 この間に、1つ前のところで絡んでいた鎌田と守田が、縦に間延びしたインドネシアの最終ラインと中盤の合間に揃って顔を出しており、そこから守田が町田から斜めのパスをターンしながら受けて、鎌田の3人目の動きを促した。
 
 鎌田は5バックの中央と右センターバックの間で守田から短い縦パスを受けると、ゴール前に持ち出してGKパエスを引き付けて中に折り返す。

 そこに反応した小川の合わせる動きとハブナーのクリアに行く動きが重なり、結果的にハブナーのオウンゴールとなった。しかし、仮にハブナーが触っていなければ小川が流し込むだけの状況であり、実質的な小川のゴールと言って良い。筆者が注目したのはその状況を生み出す、1つ前の小川の効果的な動き出しだ。

 この一連のシーンを少し巻き戻して、小川の視点で振り返ってみる。右サイドで守田から堂安にパスが渡る流れで、小川は1トップらしく深いポジションを取って、インドネシアの5バックを下げさせる。さらに鎌田がシャドーのポジションから下がって堂安からのボールを受けに行くと、守田は右シャドーの南野拓実の外側に流れた。

 そこから中盤の底の遠藤にボールが渡ると、インドネシアがコンパクトな陣形を取り戻そうとして自陣側に引くことで、一度は最終ラインと中盤のスペースが閉じられるのだが、ここで最前線の小川が裏抜けしながら、遠藤からの縦パスを受けようとしたことで、インドネシアのディフェンスラインにギャップが生まれた。

 遠藤はオフサイドポジションになった小川には出さず、左で前を向いた町田に繋いだことで、守田と鎌田が2列目でダブルフリーのようになったのだ。

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 この時、もう一人、目立たないながらも効果的なオフの動きをしていたのが南野だ。一度は小川とほぼ同じ高さのポジションから、小川とは逆向きの動きをして、インドネシアの間伸びを拡大させた。そして町田がパスを出す直前に、小川は一度オンサイドに戻って、そこから動き直して鎌田からラストパスを受けに行っている。

 守田、鎌田、小川が連動する関係が決定的な役割を果たすことになったが、スローイン以外は直接ボールを触らなかった左の三笘も、大外で右ウイングバックのディクスを外に開かせることで、起点の町田が左ワイドで前を向き、さらに鎌田が中央を破るためのスペースを空ける効果を生み出していた。

 日本は攻撃的なポジションの一人ひとりが個性をうまく発揮して、全体の動きとリンクしているが、やはりボールに直接関わっていない選手が、いかに相手のディフェンスにとって嫌なポジションを取り、ボールホルダーの選択肢を増やすかというイメージの共有ができている。
 
 そうした意識の中でも、1トップでスタメンのチャンスを得た小川が、今シリーズでは怪我で選外の上田綺世ともまた少し違った動きの特長で最初のゴールを導き出したことは、今後の森保ジャパンにとっても収穫だろう。

「しっかりと点を取れる一番危険な場所に入っていくということを意識してたので。ああいったところは自分の特長でもあると思っているし、たまたまのゴールではないというか、しっかりと相手の前に入れたんで、そこは良かったかなと思います」

 そう振り返る小川だが、フィニッシュに関わる動きの前に、最前線で周りの良い流れを作る役割をこなしたうえで、最後に絡んでいく流れが作れていたことが、先制点の場面でも証明された形だ。

取材・文●河治良幸

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