[本田泰人の眼]インドネシア相手に“4点しか奪えなかった”。小川も橋岡もアピールできず。むしろブレーキになっていた

 2026年北中米ワールドカップのアジア最終予選第5戦。日本は11月15日にアウェーでインドネシアと対戦し、4-0で勝利した。元日本代表で鹿島アントラーズのレジェンド、本田泰人氏は、この試合をどう評価したか。

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 日本の順当勝ちだった。

 立ち上がりから遠藤航、守田英正のダブルボランチを中心にボールを支配すると、ゴールを重ねていった。

 35分に相手のオウンゴールで先制すると、その5分後には三笘薫のクロスから南野拓実が左足ダイレクトで合わせて追加点をゲット。49分に相手GKのパスミスを拾った守田が3点目、69分には途中出場の菅原由勢がダメ押しの4点目を奪って快勝した。

 もっとも、9分に相手の縦パス1本から大ピンチとなり、これをGK鈴木彩艶が防げなかったら、もう少し苦戦していたかもしれない。ただタレントの差を考えると、日本が勝利を逃すことは想像できない。

 対戦相手のインドネシアはかつてオランダの植民地だったことから、オランダ人の帰化選手が多くいて、彼らを主力として固めていた。以前に比べればレベルアップに成功したものの、良い選手はオランダ代表としてプレーするはずだ。言い方は悪いが、オランダ代表の「3軍」とも言えるレベルだろう。

 その相手に“4点しか奪えなかった”というのが、私の率直の感想だ。ワールドカップで優勝を目ざすならば、もっと完膚なきまでに叩きのめしてほしかったのだが、それができなかった背景には、2人の主力選手の欠場が影響していたことは否めない。
 
 インドネシア、中国と対戦する11月シリーズでは、CB谷口彰悟とFW上田綺世が負傷のため不在に。ここまで今予選の全4試合でスタメン出場してきた攻守の要を欠くなか、その代役を務めたのはFW小川航基とDF橋岡大樹だった。

 上田不在の攻撃面、谷口不在の守備面、それぞれのパフォーマンスは維持できるのか。インドネシア戦のポイントはまさにそこにあったが、残念ながらこの日の2人はアピールに成功したとは言い難く、むしろチームのブレーキになってしまった印象だ。

 3バックの右サイドに入った橋岡は久しぶりの出場からなのか、ビルドアップのクオリティ精度もポジショニングも悪く、足を引っ張る存在に。上田の代わりに1トップを務めた小川もボールの収まりが悪く、くさびのパスを受けてもプレッシャーに押される形でパスの出し手に戻してしまうなど、上田のように前線の起点になれなかった。

 そのほかのサブメンバーも合格点を与えられる選手はいない。

 たとえば、菅原もしかり。強烈なシュートを決めたことがクローズアップされがちだが、肝心の守備は相変わらず心もとない。代表デビューを果たした大橋祐紀はオフサイドとなったGKとの1対1の場面で止められるなど、終始バタバタとプレーしていた印象が強い。旗手怜央もしかり。スルーパスを狙いすぎてミスを連発。もっと“つなぎ役”として攻撃に厚みを与えながら、試合の終わらせ方も意識すべきだった。

 及第点を与えられるとすれば、安定の運動量とポジショニングが冴えていた前田大然くらいか。伊東純也は言うまでもなくサブではなく主力のため割愛する。

 振り返れば、前回のオーストラリア戦でもキャプテンの遠藤が体調不良で離脱し、その代役を田中碧が務めた。パフォーマンスは決して悪くなかったが、ボランチとしてのリスクマネジメントに疑問符が付いた。

 試合の強度を考えたら、オーストラリア戦での田中のパフォーマンスはまだ目をつむることができる。しかし、インドネシア戦はアウェーとはいえ、グループ最下位との対戦である。途中出場の選手を含め、サブメンバーには主力不在をチャンスと捉えて、もっと活躍してほしい。

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 つまり、次戦の中国戦でもサブメンバーの奮起に期待したい。

 森保一監督のスタメンを予想すれば、おそらく今回のインドネシア戦と大きくは変わらないだろう。ただし、インドネシア戦のパフォーマンスを見れば、チームの戦い方としては小川の1トップ起用は再考すべきだ。

 たとえば私が監督なら「ゼロトップ」を採用する。具体的な予想スタメンは以下のとおりだ。

GK:鈴木
3バック:瀬古、板倉、町田
ボランチ:遠藤、守田
ワイド:伊東、三笘
2列目:久保、南野、堂安

 システムは3-4-3。インドネシア戦のスタメンからは、アピール不足の橋岡に代わって、3バックの右サイドは瀬古歩夢にチャンスを与えたい。同じく1トップの小川もスタメンから外す。代わりにゼロトップにし、3シャドーの形で久保建英、南野、堂安律を並べるイメージだ。

 インドネシア戦を見ても、堂安は単独突破できるタイプではないため、周りに気の利いたパサーがいなければ孤立する。このコラムで何度も伝えているが、久保と堂安の相性は良い。この2人は常にセットで使いたい。

 現在、日本は最終予選で4勝1分の勝点13で、グループCの首位を独走中だ。勝点6で並ぶ2位のオーストラリア、3位のサウジアラビア、4位の中国とは勝点7差だ。最終予選突破は時間の問題だろう。

 いずれにしても、今後の最終予選では、ワールドカップに向けて勝利を目ざしながら、新戦力の発掘など様々なオプションを試すべきだ。次回の中国戦では勝利はもちろん、新たな発見があることを期待したい。
 
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 本田泰人氏のインドネシア戦の採点は以下のとおり。

▼先発
GK 1鈴木彩艶 6.5
DF 3橋岡大樹 5.5
DF 4板倉 滉 5.5
DF 16町田浩樹 6.5
MF 6遠藤 航 6.5
MF 5守田英正 7.0 MOM 
MF 8南野拓実 6.5
MF 10堂安 律 6.0
MF 7三笘 薫 6.0
MF 15鎌田大地 7.0
FW 19小川航基 5.5
▼途中出場
FW 11前田大然 6.0
DF 2菅原由勢 5.5
MF 14伊東純也 6.0
MF 21旗手怜央 5.5
FW 18大橋祐紀 5.5

森保一監督 6.0

※採点は10点満点で「6」を及第点とし、「0.5」刻みで評価。
※MOM=この試合のマン・オブ・ザ・マッチ

【著者プロフィール】
本田泰人(ほんだ・やすと)/1969年6月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・1得点。J1通算328試合・4得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。

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