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まさに朝鮮半島は厳戒態勢だ。
12月3日深夜、韓国の尹錫悦大統領は野党を「体制転覆を狙う反国家勢力」として非常戒厳を宣布した。
6時間後には解除されたが、7日には尹大統領に対する弾劾訴追案が国会で採決された。
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結果は不成立だったものの、韓国社会は大混乱をきたしている。
今回の戒厳令は、主に尹大統領が反国家勢力と批判する最大野党・共に民主党に向けられた。
同党は親北朝鮮として知られ、北朝鮮の金正恩総書記がこの混乱に乗じて何か仕掛けてきても不思議ではない。
とはいえ、北朝鮮軍はウクライナ侵攻したロシアを支援するため派兵中。その規模は1万人以上とされる。
ウクライナとの戦闘で北朝鮮兵に死亡者が発生したという報道もあり、不測の事態が起きかねない状況だ。
「ロシア西部のクルスク州に派遣された北朝鮮軍は最前線で戦う歩兵ではなく、主に後方支援の役割を担っている。11月23日には、アメリカの軍事関連情報メディア『Global Defense Corp』が、11月20日にウクライナ軍が行った英国供与の長距離巡行ミサイル『ストーム・シャドー』による攻撃で、クルスク州で膨大な人数の北朝鮮軍兵士が死亡したと報じました。これについて米・国防総省は『確認できていない』との立場。ただし、ウクライナの通信社RBCウクライナが24日に伝えたところによると、北朝鮮の戦死者は未確認ながら500人以上とされている」(国際ジャーナリスト)
500人との数字は、2〜6個程度の中隊から編成される1個大隊の兵員数に相当する。
にわかには信じ難いが、11月28日、韓国・国会の国防委員会に出席した金龍顕国防相(当時)はロシアに派遣された北朝鮮兵について、ロシア軍の中隊1、北朝鮮軍の小隊1という編成で参戦していることを明らかにした。
北朝鮮兵は戦地で“弾よけ”に
さらに、この部隊編成は「北朝鮮兵士がロシア軍主導の下で戦うことを意味し、派遣された北朝鮮兵は“弾よけ”に使われている」と述べている。
1小隊は20人から50人編成だから、少なくとも10小隊規模の戦死者が出ていることになるが、こうした戦闘情報の発信源は、ウクライナのメディアや同国を支援するリトアニアの非政府組織(NGO)『ブルー・イエロー』などテレグラムチャンネルや言論人のSNSからだ。
「その信ぴょう性ですが、一部情報筋では、ウクライナ当局が北朝鮮の派兵を米国やNATO(北大西洋条約機構)から長距離砲などを引き出すため、あるいは北朝鮮と対峙している韓国を引き込むため、『意図的に誇張しているのでは』との疑念も指摘されています」(外交関係者)
兵士らの戦死情報が北朝鮮国内に伝われば、兵役忌避の増加が予想される。
それよりもっと深刻なのは、北朝鮮人民軍内では、将校のなり手がいなくなっていることだ。
米・政府系放送局『ラジオ・フリー・アジア』によれば、朝鮮人民軍総政治局は2年ほど前、将校候補に選ばれた対象者を調査して、「理由なく選抜を逃れようとする者がいれば、処罰する」との警告を発しているという。
「つまり、それほど軍から逃れようとする兵が多い証左です。衣食住に不自由がなく、羨望の的だった将校に対する特別配給はかなり前に止まってしまい、食糧と住宅不足で苦しい生活を強いられています。それでいて、命令が遂行できない場合には、重い処罰を受ける。コロナ禍においては、国境封鎖の任務をまっとうできなかった国境警備隊の将校らが処刑された例もありますからね。ロシア派兵で戦死するかもしれない、特権のなくなった将校に誰がなりたいと思うでしょうか」(北朝鮮ウオッチャー)
しかも、将校候補となれば、自軍の兵器がいかに粗末な代物かも十分把握しているというわけだ。
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北のロケット砲は精度の悪さと不発弾だらけ
11月16日、英フィナンシャル・タイムズ(FT)はウクライナの情報機関の情報を引用し、今年初めにウクライナ軍に奪われた領土の奪還を目指すロシアを支援するため、北朝鮮はロシアに自国産の『170ミリM1989自走榴弾砲』50門と『240ミリ多連装ロケット砲システム』20基を提供し、それらはクルスク州に移送されたと報じた。
「北朝鮮は今年8月、240ミリ多連装ロケット砲システムの試験射撃を実施していますが、このロケット砲は開発中ですから、まだロシアへ提供できないはずですが…」(軍事ライター)
北朝鮮は2010年、各種多連装ロケット砲を韓国西海、北朝鮮から11〜15キロにある延坪島に撃ち込んだことがある。
「このとき、1回目150発と2回目20発に分けて発射しましたが、1回目の150発のうち延坪島内には約60発、残りは海に着弾しました。島内にわずか40%しか撃ち込めなかったのは、射撃精度の悪さを証明している。また、合計170発のうち約20発、12%が不発弾でした。通常100発発射すれば不発弾は1〜2発程度です。北朝鮮が実戦場で使用した弾が12%も不発というのは度を超しています。北朝鮮が、現在戦闘中のクルスク州で砲撃すれば、友軍陣地にも弾が落下する恐れがあるうえ、多くの不発弾が発見されることになる」(同)
将校選抜を逃れようと健康診断書を偽造した容疑で摘発された兵士は、朝鮮労働党への入党や除隊後の大学入学の推薦が全面保留となり、除隊しても重労働の現場に追いやられる不利益を受ける。
それでもなお、選抜を避けようとする風潮は減っていないという。
「加えて、ウクライナ戦争に参戦させられ、粗末な欠陥兵器で、戦死しなくても命の危険に晒されるとなれば、将校になろうと思う者がさらに減り続けるのは容易に予想がつく」(同)
北朝鮮、そして韓国で勃発した不測の事態はどこまで広がりを見せるのか。
「週刊実話」12月26日号より