ニチアサ枠で放送されている「戦隊」と「プリキュア」は、共にクリスマス回があることで知られています。しかし、クリスマスをめぐってのエピソードでは、真逆ともいえる展開が多くありました。



2024年12月現在放送中のシリーズ最新作『爆上戦隊ブンブンジャー』ポスタービジュアル (C)テレビ朝日・東映AG・東映

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戦隊にとってクリスマスが一大決戦になる理由

 おなじみ「スーパー戦隊」シリーズと「プリキュア」シリーズは、ともに1年間にわたり放送されており、そして年末のこの季節には「クリスマス回」と呼ばれるエピソードが定番です。ところがその展開は、両シリーズで真逆となっているケースが多いようです。その違いに関して解説していきましょう。

 そもそも両シリーズには、いくつかの共通点があります。なかでも番組の放送時期は、、共に2月前後から放送を開始して、翌年の同時期に最終回を迎えるのが通例です。もちろん例外もありますが、ほぼこのフォーマットです。

 それゆえ両シリーズには、年を越して年始になると、最終回の最終決戦に向けて怒涛の展開が待ち受けています。そして、その前にイベント回として「クリスマス回」があるというわけです。

 特に戦隊シリーズは、このクリスマス時期に必ず行われるといってもいい展開があります。それがクリスマス商戦に向けた販売促進です。

 この戦隊シリーズのクリスマス回は、おおむね2話から3話に渡って繰り広げられてきた大激闘の決着がつき、この間に、これまでの装備や巨大メカが劇中で総登場するなどします。

 こうしたメカや巨大ロボの見せ場をたっぷり作ることで、メイン視聴者である子供たちにオモチャが欲しいと思わせる、というのが、基本的な戦隊シリーズのクリスマス回です。

 もちろん戦隊シリーズすべてがそういうわけでなく、例外もありました。

 たとえば、シリーズ第42作『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018年)の第45話「クリスマスを楽しみに」がそうで、こちらは敵役「サモーン・シャケキスタンチン」の名セリフ「クリスマスにはシャケを食え!」で、ファンだけでなく一般層にまで広く知られるエピソードです。

 もっとも、この『ルパパト』第45話も、前週の第43話、第44話は前後編で最終戦に向けた展開のストーリーとなっていました。それらは「パトレンジャー」側の活躍となっており、第45話では逆に「ルパンレンジャー」側の巨大ロボに見せ場を作ることで目的を補完しています。これは、対立するふたつの戦隊が中心となった作品ゆえの、クリスマス展開だったのでしょう。

 ともあれこのように、戦隊シリーズではクリスマスまでに一度、話を大きく盛り上げ、翌年に行われる最終決戦に向けてのエピソード開始までひと段落つける、というのが定番でしょうか。

 一方のプリキュアシリーズは、戦隊シリーズとはまた違ったクリスマス回が多く制作されてきました。



2024年12月現在放送中のシリーズ最新作『わんだふるぷりきゅあ!』キービジュアル (C)ABC-A・東映アニメーション

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クリスマスのムードを一転させるプリキュアの受難

 プリキュアシリーズのクリスマス回は、ほとんどのシリーズ作品で制作されています。ファンのなかには可愛らしいサンタコスを思い出す人も多いことでしょう。

 そのように、華やかなサンタコスでクリスマスそのものは和やかに迎えるプリキュアシリーズではあるものの、一方で、平穏無事なままクリスマスを終えることは少ない印象です。あくまでも個人的な印象ですが、プリキュアシリーズの多くは、クリスマスを境に最終決戦へ向けた展開を迎えるように思えます。

 たとえば、『フレッシュプリキュア!』(2009年)第45話「4人はプリキュア! クリスマスイブの別れ!!」では、家族にプリキュアであることを明かして敵地に乗り込んでいました。『デリシャスパーティ●プリキュア』(2022年)第41話「メリークリスマス!フェンネルの大切なもの」では、事件が解決したと思ったらいきなりラスボスが現れています。このように、文字通り怒涛の展開を迎えた作品も見られます。

 必ずしもというわけではありませんが、プリキュアシリーズには「この展開で年を越せというのか?」という、先が気になるシチュエーションがよくある印象です。それゆえ「プリキュアのクリスマスは悪いことがよく起きる」といった印象を持つ人も少なくありません。

 これには理由がありました。プリキュアはもともと、基本的には後にひかない1話完結ながら、最終回に向けての展開は1か月ほどかけることが多く、時にはクリスマス直後、年末からひと続きのストーリーになっている、というわけです。

 一方のスーパー戦隊は、連続したストーリーではあるものの、数話ごとに一度、ピリオドを打つ傾向にあります。それは監督が2話から3話ごとにローテーションするせいかもしれません。

 この制作スタイルの違いが、クリスマス時期に真逆な展開が多くなる要因でしょうか。結果、ひと時の平和なクリスマスを楽しむ戦隊と、楽しいクリスマスが一転して不穏な空気に包まれるプリキュア、というイメージになるわけです。

 ちなみに同じニチアサ枠の「仮面ライダー」シリーズは、当初は戦隊やプリキュアと同じく1月末前後に番組が切り替わっていたものの、2024年現在は9月前後が改編期となって、物語の展開のパターンが変わりました。

 もっとも、近年のライダーシリーズにも、クリスマス時期に退場者が出るというジンクスがあります。このジンクスを恐れて、ファンのなかには毎年のクリスマス回を戦々恐々と見ている人も多いそうです。

 今年のニチアサのクリスマス回はおそらく12月22日になることでしょう。はたして今年はどんなクリスマス回になるのか、放送が今から楽しみです。

※『デリシャスパーティ●プリキュア』の「●」は、正確には白抜きハートマーク