「地面師たち」に「ふてほど」『シン・ウルトラマン』から『はたらく細胞』へ!山本耕史が演じてきた“クセ強キャラ”を総ざらい!

シリーズ累計発行部数1000万部を突破しテレビアニメ化もされた清水茜の同名コミックを、「翔んで埼玉」シリーズなどで知られる武内英樹監督のもと、永野芽郁と佐藤健のダブル主演で実写映画化した『はたらく細胞』(公開中)。人間の体の中にいる“細胞”を擬人化するユニークな設定で話題を集める本作には、数多くの個性的な“細胞キャラクター”が登場。そのなかでもひときわ異彩を放つのが、山本耕史演じるキラーT細胞だ。


人間の体内で戦う“キラーT細胞”を演じた山本耕史 / [c]清水茜/講談社 [c]原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社 [c]2024映画「はたらく細胞」製作委員会
キラーT細胞とは、細菌やウイルス感染細胞などの異物を見つけて破壊する、強力な殺傷能力を持つ免疫細胞の主力部隊。“KILL”と書かれた帽子をトレードマークに、金髪で筋肉ムキムキという体育会系の超武闘派。山本自身が「キラーT細胞を演じているというよりも、一人の戦士を演じているつもりだった」と語っているように、激しいアクションシーンが見せ場となっている。

山本といえば、わずか0歳で芸能界入りを果たし子役として初舞台を踏んでから、映画やテレビドラマ、舞台など数多くの作品に携わってきた生粋の俳優。NHKの大河ドラマ「新選組!」をはじめ、これまで何度も土方歳三役を演じてきたように、甘いマスクのイケメン俳優の一人として脚光を浴びてきた彼だが、なぜかここ数年は強烈な個性のキャラクターを演じることが相次いでいる。そこで本稿では、近年山本が演じてきた“クセ強”な役柄の数々を振り返っていこう。

■勝利を噛み締め一瞬で転落…気の毒すぎるデベロッパーを熱演


【写真を見る】パワハラ気質のデベロッパーから、ヤンキー化した“終末の戦士”まで…一度観たら忘れられないキャラがいっぱい / [c]Netflix

まずは今年話題沸騰だったNetflixシリーズ「地面師たち」。ここで山本が演じてたのは地面師たちのターゲットとなる大手不動産会社「石洋ハウス」のデベロッパーの青柳という役柄。どんな手を使っても土地を奪い取ることをモットーにした旧体質の持ち主で、当初進めていた大規模な再開発プロジェクトが頓挫してしまったことで焦りを感じ、地面師たちが仕掛けた罠にまんまとハマってしまうことになる。

常に眉間にシワを寄せて「戦争にコンプライアンスもクソもねえ」と部下を怒鳴りつけ、出世競争を制するために社長にすり寄って根回しをし、土地を購入する決裁を獲得。そして勝利を噛み締めるように、手に入れた土地を見下ろす高級ホテルで愛人である社長秘書との情事にいそしむ…。その向上心の高さと自己顕示欲の強さが仇となって不幸のどん底へと突き落とされていく姿は、SNS上でも語りぐさになるほど。このドラマシリーズ屈指のインパクトを放った役柄といえよう。

■コメディやSFでも強烈なインパクト…「私の好きな言葉です」
SNSである種のネットミームと化したキャラクターといえば、やはり庵野秀明監督の『シン・ウルトラマン』(22)のメフィラス役だろう。高い知能を武器に地球の人類へと接触し、紳士的な態度で静かに地球征服を目論む。なにか格言めいた言葉を言ったあとに「私の好きな言葉です」や「私の嫌いな言葉です」と付ける“メフィラス構文”は大ブームを巻き起こし、近年の山本の代表作・代表キャラクターとなったといっても過言ではないだろう。

ほかにも今年「新語・流行語大賞」にも輝くなど話題を集めたテレビドラマ「不適切にもほどがある!」では、テレビ局のプロデューサー役としてシリアス顔でコメディ演技を披露するだけでなく、ミュージカル演技も披露。同じく宮藤官九郎が脚本を務めたNetflixシリーズ「離婚しようよ」では、松坂桃李演じる主人公と対立する野心的な政治家役で迫真の演技を見せる。どちらも「地面師たち」の青柳を想起させる、会心の当たり役であった。

また、若杉公徳の人気漫画を伊藤英明主演で実写化した『KAPPEI カッペイ』(22)では、“終末の戦士”として育てられ、突如として現代社会に解き放たれた戦士の一人、正義役を体当たりで熱演。45歳にして尾崎豊の歌に傾倒し、茨城のヤンキー中学生とつるむシュールなキャラクターで、鍛え上げられた肉体を無駄遣い。フィジカルを駆使したアクションとコメディの融合という点では、今回の『はたらく細胞』にも通じるものがある。


武闘派細胞として、鍛え上げられた肉体を惜しみなく披露! / [c]清水茜/講談社 [c]原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社 [c]2024映画「はたらく細胞」製作委員会
今回の『はたらく細胞』について「身体のなかのことを描いていますから、全世界、全人類に当てはまる。勉強して医学書を読んで…となると結構プレッシャーもありますけど、これは観るだけで『へー、そうなんだ』ということがわかるし、それぞれのキャラクターがすごく魅力的。自分の身体を改めて大切にしようと思える作品だと思います」とアピールする山本は、先日解禁された「『はたらくさいぼう』うた動画」で劇中衣装をまとって名曲「はたらくくるま」の替え歌を圧巻の歌唱力で歌い上げた。

コメディから悪役、さらには時代劇やミュージカルまで、俳優としての引き出しがとにかく多く、どんな作品でも観る者の記憶に焼きつく強烈なキャラクターを見事に演じ抜いてきた山本。本作でのキラーT細胞としての“クセ強キャラ”ぶりに注目しながら、人間の体の中で繰り広げられる“世界最小の物語”の世界を楽しんでほしい。

文/久保田 和馬