第97回アカデミー賞はハイレベルの大激戦に!?「第82回ゴールデン・グローブ賞」のノミネートをチェック

現地時間の2025年3月2日(日)に行われる第97回アカデミー賞に向けた前哨戦「第82回ゴールデン・グローブ賞」のノミネートが今週発表された。大本命といえる作品がないことから、例年以上の大激戦が予想されている今年の映画賞レース。今回発表されたノミネートリストをチェックしながら、注目作品をピックアップしていこう。

■このなかにオスカーの主役が!?複数ノミネートを獲得した有力作

まずは本年度の最多となる8部門10ノミネートを獲得した『Emilia Perez(原題)』(2025年3月28日公開)から。『ディーパンの闘い』(15)や『ゴールデン・リバー』(18)のジャック・オディアール監督がメガホンをとった本作は、弁護士のリタが麻薬カルテルのボスであるマニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受け、数年後“エミリア・ペレス”という名で生きるマニタスと再会するという物語。


【写真を見る】トランスジェンダー俳優の初候補に、ミュージカル・コメディ部門の新記録!最多ノミネートを獲得したのはこの作品 / [c] 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS – FRANCE 2 CINÉMA

作品賞(ミュージカル・コメディ部門)と監督賞、脚本賞、作曲賞、非英語作品賞に加え、助演女優賞と主題歌賞ではそれぞれ2ノミネートを獲得。また、カンヌ国際映画祭でトランスジェンダー俳優として初めて女優賞を受賞したカルラ・ソフィア・ガスコンが、主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にもノミネートされる快挙を成し遂げている。

ちなみに8部門10ノミネートという数字は、第33回の『ナッシュビル』(75)が記録した7部門11ノミネートに次ぐノミネート数であり、ミュージカル・コメディ部門に限定すれば第30回の『キャバレー』(72)、昨年の『バービー』(23)の9部門を上回る新記録。ゴールデン・グローブ賞の最多受賞記録である『ラ・ラ・ランド』(16)の7部門を超える可能性も充分に秘めており、大きな注目が集まるところ。


カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた『ANORA アノーラ』は5部門にノミネート / [c]2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
ミュージカル・コメディ部門で『Emilia Perez(原題)』と競うことになるのは、同作と同じカンヌ国際映画祭でお披露目され、最高賞のパルムドールに輝いたショーン・ベイカー監督の『ANORA アノーラ』(2025年2月28日公開)。こちらは計5部門にノミネート。また、北米で記録的な大ヒットスタートを飾った『ウィキッド ふたりの魔女』(2025年3月7日公開)も4部門ノミネートと存在感を示した。

一方、ドラマ部門は2つの作品が牽引。ひとつは第81回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いたブラディ・コーベット監督の『ブルータリスト』(2025年2月21日公開)。ホロコーストを生き延びてアメリカへと渡ったハンガリー系ユダヤ人建築家の数奇な半生を描く215分にわたる大作で、7部門でノミネート。『西部戦線異状なし』(22)で高い評価を得たエドワード・ベルガー監督が、ローマ教皇を決める“コンクラーベ”の舞台裏を描いた『教皇選挙』(2025年3月20日公開)が6部門で続いている。


ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞の『ブルータリスト』は7部門で候補入り! / [c]DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED.[c]Universal Pictures

■『リアル・ペイン』などサーチライト4作品がそれぞれノミネートを獲得!

ここからは複数の作品で多くのノミネートを獲得したスタジオをチェックしていこう。毎年賞レースを賑わせてくれるサーチライト・ピクチャーズからは、一挙に4作品が主要部門でノミネートを獲得。


サーチライト・ピクチャーズ作品が続々候補入り!最多は『リアル・ペイン〜心の旅〜』の4部門 / [c]2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
ジェシー・アイゼンバーグが監督と主演を務めた『リアル・ペイン~心の旅~』(2025年1月31日公開)が作品賞(ミュージカル・コメディ部門)ほか計4部門に。ティモシー・シャラメがボブ・ディランを演じる『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(2025年2月28日公開)が作品賞(ドラマ部門)など3部門にノミネート。また『憐れみの3章』(24)からはジェシー・プレモンスが主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)に、『ナイトビッチ』からはエイミー・アダムスが主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にそれぞれノミネート。

サーチライト・ピクチャーズ作品を含むウォルト・ディズニー・カンパニー系列の作品は、他部門でも台頭。アニメーション作品賞にはピクサーの『インサイド・ヘッド2』(24)と、現在世界中でメガヒットを記録中の『モアナと伝説の海2』(公開中)がノミネート。昨年新たに創設された興行成績賞には『インサイド・ヘッド2』と『デッドプール&ウルヴァリン』(24)、『エイリアン:ロムルス』(24)の3作品が候補入りを果たした。


エミー賞席巻の「SHOGUN 将軍」からは日本人キャストがノミネートされる快挙も / [c] 2024 Disney and its related entities
またテレビ部門でも、プライムタイム・エミー賞で歴史的快挙を成し遂げたFX作品「SHOGUN 将軍」(ディズニープラスにて独占配信中)が作品賞(ドラマ部門)に加え、主演男優賞(ドラマ部門)に真田広之、主演女優賞(ドラマ部門)にアンナ・サワイ、助演男優賞に浅野忠信がノミネート。そのほかにも「一流シェフのファミリーレストラン」(ディズニープラスにて独占配信中)などがノミネートされており、映画とテレビ両部門あわせてディズニー系列は35ノミネートを獲得している。

一方、Netflixオリジナル作品は映画部門では『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』(2025年1月3日より独占配信)のアニメーション映画賞のみにとどまったが、テレビ部門では「イカゲーム」シーズン2(12月26日より独占配信)が作品賞(ドラマ部門)にノミネートされたほか、「私のトナカイちゃん」(独占配信中)や「リプリー」(独占配信中)など、計24ノミネートを獲得。なお、オリジナル作品ではないが『Emilia Perez』は北米でNetflix提供のもと劇場公開されている。


19年ぶりの長編新作『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』もノミネート! / Netflix映画『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』2025年1月3日(金)世界独占配信
12月に入ってから全米各地の批評家協会賞が発表されるなど、本格化している映画賞レース。そのなかでも重要な一戦となる「第82回ゴールデン・グローブ賞」は、現地時間2025年1月5日(日)に授賞式が行われる。続報に乞うご期待!

■第82回ゴールデン・グローブ賞映画部門ノミネート作品

<ドラマ部門>
●作品賞
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
『教皇選挙』
『デューン 砂の惑星PART2』
『Nickel Boys(原題)』
『セプテンバー5』
『ブルータリスト』

●主演男優賞
エイドリアン・ブロディ『ブルータリスト』
コールマン・ドミンゴ『Sing Sing(原題)』
ダニエル・クレイグ『Queer(原題)』
レイフ・ファインズ『教皇選挙』
セバスチャン・スタン『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
ティモシー・シャラメ『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』

●主演女優賞
アンジェリーナ・ジョリー『Maria(原題)』
フェルナンド・トーレス『I’m Still Here(原題)』
ケイト・ウィンスレット『Lee(原題)』
ニコール・キッドマン『ベイビーガール』
パメラ・アンダーソン『The Last Showgirl(原題)』
ティルダ・スウィントン『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』

<ミュージカル・コメディ部門>
●作品賞
『リアル・ペイン~心の旅~』
『ANORA アノーラ』
『チャレンジャーズ』
『Emilia Perez(原題)』
『The Substance(原題)』
『ウィキッド ふたりの魔女』

●主演男優賞
ガブリエル・ラベル『Saturday Night(原題)』
グレン・パウエル『ヒットマン』
ヒュー・グラント『Heretic(原題)』
ジェシー・アイゼンバーグ『リアル・ペイン~心の旅~』
ジェシー・プレモンス『憐れみの3章』
セバスチャン・スタン『A Different Man(原題)』

●主演女優賞
エイミー・アダムス『ナイトビッチ』
シンシア・エリヴォ『ウィキッド ふたりの魔女』
デミ・ムーア『The Substance(原題)』
カルラ・ソフィア・ガスコン『Emilia Perez(原題)』
マイキー・マディソン『ANORA アノーラ』
ゼンデイヤ『チャレンジャーズ』

<共通部門>
●助演男優賞
デンゼル・ワシントン『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
エドワード・ノートン『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
ガイ・ピアース『ブルータリスト』
ジェレミー・ストロング『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
キーラン・カルキン『リアル・ペイン~心の旅~』
ユーリー・ボリソフ『ANORA アノーラ』

●助演女優賞
アリアナ・グランデ『ウィキッド ふたりの魔女』
フェリシティ・ジョーンズ『ブルータリスト』
イザベラ・ロッセリーニ『教皇選挙』
マーガレット・クアリー『The Substance』
セレーナ・ゴメス『Emilia Perez(原題)』
ゾーイ・サルダナ『Emilia Perez(原題)』

●監督賞
ブラディ・コーベット『ブルータリスト』
コラリー・ファルジャ『The Substance(原題)』
エドワード・ベルガー『教皇選挙』
ジャック・オディアール『Emilia Perez(原題)』
パヤル・カパディア『All We Imagine as Light(原題)』
ショーン・ベイカー『ANORA アノーラ』

●脚本賞
『ブルータリスト』
『The Substance(原題)』
『Emilia Perez(原題)』
『リアル・ペイン~心の旅~』
『教皇選挙』
『ANORA アノーラ』

●作曲賞
『Emilia Perez(原題)』
『ブルータリスト』
『デューン 砂の惑星PART2』
『野生の島のロズ』
『チャレンジャーズ』
『教皇選挙』

●主題歌賞
「Beautiful That Way」『The Last Showgirl(原題)』
「Compress / Repress」『チャレンジャーズ』
「El Mal」『Emilia Perez(原題)』
「Forbidden Road」『Better Man(原題)』
「Kiss the Sky」『野生の島のロズ』
「Mi Camino」『Emilia Perez(原題)』

●非英語作品賞
『All We Imagine as Light(原題)』(インド)
『Emilia Perez(原題)』(フランス)
『I’m Still Here(原題)』(ブラジル)
『The Girl with the Needle(原題)』(デンマーク)
『聖なるイチジクの種』(ドイツ)
『Vermiglio(原題)』(イタリア)

●アニメーション作品賞
『Flow』
『インサイド・ヘッド2』
『Memoir of a Snail(原題)』
『モアナと伝説の海2』
『野生の島のロズ』
『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』

●興行成績賞
『エイリアン:ロムルス』
『ビートルジュース ビートルジュース』
『デッドプール&ウルヴァリン』
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
『インサイド・ヘッド2』
『野生の島のロズ』
『ツイスターズ』
『ウィキッド ふたりの魔女』

文/久保田 和馬