パナソニックLUMIX「S1RII」レビュー。6年ぶりに刷新されたスチル向けフルサイズフラッグシップ機[OnGoing Re:View]

作例とインプレション

今回の作例は三重県でこの季節だけ営業を行う「鈴鹿の森庭園」にてライトアップされたしだれ梅を撮影してきた。高画素機で最も気になるノイズ感を確かめるべく、夜間の撮影とした。
撮影は8.1K30pをV-Logで撮影したものを、DaVinci Resolveにてメーカー提供の709Lutで戻して若干コントラストと色見を触っている。

夜間の撮影ではあるが、しだれ梅自体はライトアップされているので、ISO800~4000程度の比較的低ISOで撮影できており、ノイズ感はあまり見られない。作例外の映像でテスト的にISO12800で撮影してみたが、そこまで来るとノイズが目立ってくる。ただしDaVinci Resolveのノイズリダクションで十分処理できるレベルのノイズ感だった。

今回、レンズはSIGMAのシネレンズ FF High Speed Prime Line 28mm T1.5と65mm T1.5の2本を使用して撮影した。非常に抜けの良いクリアに撮影できるレンズなので、S1RIIの素性をそのまま表現できていると思う。ぜひ作例からS1RIIのポテンシャルを感じ取ってもらえればと思う。

(広告の後にも続きます)

外観

左S1H 右S1RII

 
  


※画像をクリックして拡大

外観はS1Rと比較すると大きくサイズダウンした。S5IIと比較しても奥行が1.7mm大きいだけで、正面から見た高さと横幅はほぼ同じだ。重さも1016g(本体、バッテリー、SDカード1枚含む)から約795gと22%近い軽量化を果たした。

小型化をすることで、長時間の撮影でも疲労感を感じにくくなり、手の小さい人でも扱いやすくなった点は評価したい。

そんな「ほぼS5II」な大きさのS1RIIではあるが、中身は全くの別物となっている。
S5IIと同じ軍艦部には冷却ファンが搭載されており、長時間収録でも熱停止が起きにくくなっている。マイクロフォーサーズのスチル機フラッグシップG9PROIIでは、その軍艦部にはジャイロセンサーが搭載され、手振れ補正の高機能化に一役買っているが、S1RIIではグリップ内に小型化されたジャイロセンサーが搭載され、5軸 8.0段分(B.I.S時)の手ブレ補正を実現している。つまりS5IIとG9PROIIの良いとこ取りをした訳だ。

上面方向には水平まで開く

下面方向には垂直から60°程度まで開く

チルトフリーアングルモニターではこれまでのLUMIXにない上下方向へのチルト動作を実現。背面液晶の見やすさはもちろん、USB-CやHDMIケーブルを接続した状態でのバリアングル液晶の操作でもモニターに干渉しないなど、撮影時の利点は多い。S5IIより奥行1.7mmの大型化だけでこの機構を入れてきたことは驚愕に値する。ちなみに液晶モニターのサイズは3インチで、LUMIX S5IIやGH7と同じである。保護フィルムが余っている人はそのまま使用できるので使ってほしい。

写真動画S&Q切換スイッチ

LUMIXではじめて「写真/動画/S&Q切換スイッチ」が搭載された。今までもLUMIXに慣れているユーザーにとっては使いやすい仕様ではあったのだが、このスイッチが搭載されたことにより、写真や動画の設定を完全に切り分けて保存できるなど、LUMIXらしいユーザーフレンドリーな仕様となっている。カスタムダイヤルがC1~C5とあるが、それがスチル用と動画用で、単純に倍使えるのは嬉しい限りだ。個人的には一押しの改善ポイントになった。

撮影者側と被写体側それぞれに録画状態を示すタリーランプが搭載され、ファインダーの左隣りには撮影時の不用意な誤動作を防止する操作ロックレバーも搭載され、正面レンズ左側にはサブ動画記録ボタンがつくなど、挙げだしたらキリがないほどS5IIとは差別化されており、似ているのはサイズだけだ。逆にこれだけの機能をよくこのサイズに納めたものだと感心してしまう。

サイズ感がここまで似ているのであれば、S5IIからの買い替えでケージの流用ができるのでは?と考えるのは真っ当なことだろう。答えは、残念ながらNOだ。

ケージと付けた状態でのバッテリー取り出し口

SmallRig社とTILTA社のフルケージでしか確認できていないが、ボディの奥行サイズが増しているためか、S5IIのケージをS1RIIに装着した場合、バッテリー部の蓋がケージに干渉してしまい開閉が出来なくなっている。新規にケージを購入する際は必ずS1RII対応のものを購入されることをオススメする。

ちなみに筆者はSmallRig製S5II用ケージをリューターで削り開閉できるように改造してみたが、労力からして一般の方にはあまりオススメできない。メーカーの保証も受けられなくなると思うので、改造する際は各自の判断で行ってもらいたい。