〈奈良4歳女児傷害致死・判決公判〉「やってない」逮捕当初から犯行を否認してきた元交際相手に無罪判決「暴力以外により外力が加わった可能性を排斥できず」と奈良地裁

奈良県橿原市で交際女性の4歳の娘に暴行を加え、死なせた罪などに問われている大阪府門真市の建設作業員・山下翔也被告(28)の裁判員裁判の判決で奈良地裁(沢田正彦裁判長)は19日、無罪(求刑・懲役8年)を言い渡した。被告は取り調べ段階から一貫して犯行を否認、裁判でも母親である交際女性が暴行した可能性を訴えていたが、検察側は山下被告が暴行を繰り返していたと主張していた。

「母親の証言が変遷していることについて信用性に疑問がある」

起訴状などによると山下被告は2023年6月18日、橿原市の集合住宅などで田川星華ちゃん(当時4歳)の腹部を圧迫する暴行を加え、翌日に死亡させたとされる。

公判は2月27日から始まり、検察側は冒頭陳述で、山下被告は女性と交際関係になった2023年4月下旬当初から星華ちゃんを激しく叱責していたと指摘。

犯行当日は女性も集合住宅にいたが、被告と星華ちゃんが2人だけでいる時間帯もあったなどとし、犯行の2日前には「4歳児内臓破裂」などと被告がスマートフォンで検索していたことを明らかにした。

母親である女性は検察側の尋問に「宝物の娘を亡くしてしんどいしつらい。被告にも同じ気持ちになってほしい」などと心情を訴えていた。一方で山下被告は「母親が星華ちゃんに何度も平手打ちしたのを見た」と被告人質問で訴えるなど、双方の主張が対立していた。

事件に絡み、山下被告は同年8月16日に同5月に星華ちゃんを暴行した容疑で逮捕され、同9月6日に傷害致死容疑で逮捕された。

山下被告は暴行容疑も含めて当初から犯行を一切否認。一方で山下被告が女性の存在も知らなかった2020年ごろから星華ちゃんに対する虐待を疑う通報が寄せられており、集英社オンラインでは一連の経緯を詳報し、無実を信じる山下被告の友人たちの証言も報じた。

3月19日の判決で沢田正彦裁判長は「母親の証言が変遷していることについて信用性に疑問がある」「暴力以外により外力が加わった可能性を排斥できず、立証が不十分だ」として無罪を言い渡した。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班