Credit: canva

日の沈む瞬間は、地球の1日でも最も美しい時間帯の一つです。

では、月面の上からだと日没はどのように見えるのでしょうか?

この疑問に答えてくれる素晴らしい写真が、米テキサス州の航空宇宙企業「ファイアフライ・エアロスペース(Firefly Aerospace)」によって撮影されました。

一体どのような過程で月面の日没が撮影されたのでしょうか?

実際の画像とともに見てみましょう。

目次

「月面の日没」を高解像度で撮影月で観測された「謎の霧」とは?

「月面の日没」を高解像度で撮影


ブルーゴースト/ Credit: en.wikipedia

普段、私たちは地球の夕日を見て、その美しさに心を奪われます。

でも、月面から見る日没はどうなのでしょうか?

地球のように大気が存在しない月面では、太陽光が地平線に沈むと、瞬時に空が暗くなるため、地球で見るようなオレンジ色の空は見られません。

その代わりに、月面では急激に光と影が交錯し、太陽が沈む瞬間、あたかも静寂の中に入り込んだかのような不思議な雰囲気を感じることができます。

これまでも、月面から見た太陽の様子は何度も注目されてきましたが、実際にその沈む瞬間を高解像度で捉えたことはありませんでした。

しかし今回、ファイアフライ・エアロスペースの月面着陸船「ブルーゴースト(Blue Ghost)」が初めて高解像度での月面の日没を撮影することに成功しました。

ブルーゴーストは2025年3月2日に月面の北東部にある火山地形に着陸し、3月16日に電源が切れるまで運用されていました。

その活動の中で撮影された月面の日没がこちらです。

 

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画像の一枚では、太陽が月面の地平線のすぐ上で明るく輝き、その周囲のハロ(太陽の周りにできる光の輪)が緑色に染まっています。

そのやや右上には、小さな光の点で示された金星が写っており、さらに上部の太陽と同じくらい明るい光は私たちが暮らす地球を示しています。

これらの画像は地球で見る日没と月面で見る日没が大きく異なることを視覚的に実感させる貴重な写真となりました。

さらに研究者によると、この日没画像は「1960年代に月面で観測された謎の霧の解明に役立つ」といいます。

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月で観測された「謎の霧」とは?

実は、月面には長年解明されていない謎が存在しています。

それは1960年代から観測されていた「月面の霧」の存在です。

NASAの初期の探査機は、月面の空気に微細な霧が漂っている様子を捉えましたが、その原因は不明のままでした。

その後、アポロ計画の宇宙飛行士たちも、月面での活動中に同様の現象を確認していますが、当時はその発生メカニズムについて結論が出ませんでした。

今回のブルーゴーストによる日没の写真は、この謎に新たな光を当てるものと期待されています。

NASA(アメリカ航空宇宙局)の専門家らは、この謎の霧現象を「地平線の輝き(horizon glow)」とか「塵の浮遊(dust lofting)」と呼んでいます。

研究者らはこの現象について、月の塵粒子が太陽からの紫外線によって電気的に帯電し、それが表面から浮き上がる原因となる可能性があり、その浮き上がった微粒子が霧のように見えるのだと考えられます。

そしてこの霧のような現象は、ちょうど日没を捉える角度で撮影されたときに見えやすくなると今回の研究は示しています。


日没や日の出の角度で捉えたときに「月面の霧現象」が見えやすくなる/ Credit: OPERA Project

ブルーゴーストが撮影した月面の日没画像は、単なる美しい景色にとどまらず、月の環境を深く理解するための重要な手がかりとなります。

これまで謎に包まれていた「霧」の正体を解明することで、月面探査の新たなステージが開かれるでしょう。

参考文献

Stunning Sunset Images on The Moon Could Help Solve Enduring Mystery
https://www.sciencealert.com/stunning-sunset-images-on-the-moon-could-help-solve-enduring-mystery

NASA Science Continues After Firefly’s First Moon Mission Concludes
https://www.nasa.gov/news-release/nasa-science-continues-after-fireflys-first-moon-mission-concludes/

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部