税務署はみている…相続人がとってはいけない「NG行動」5選【税理士が解説】

税理士おすすめ、税務調査を意識した相続税対策

以上、相続人がとってはいけないNG行動を5つピックアップして解説しましたが、次に、税務調査を意識した相続税対策を紹介したいと思います。

対策1|生前贈与を活用する

第一に、生前贈与です。本人が生きているうちに配偶者や子、孫等に贈与することで、相続税の対象となる財産を減らす効果があります。相続税対策の王道とされ、有効な手段です。

生前贈与のメリットはもう一つあります。それは、生前に本人の意思を明確にできることです。

ただし、「贈与」として認められるためにはハードルがあります。「単なる家族の名義を借りただけではなく、実態が伴っている」ことが必要になります。つまり、贈与契約として成立させるために「双方の合意」が必要になります。この点については、「NG行動3|名義預金」を参考にしてください。

対策2|所有不動産の棚卸しをしておく

第二に、不動産についての申告漏れを防ぐために、不動産の所有関係を明らかにし、「棚卸し」をしておくことです。

特に、他人と共有している不動産や、相続したあと未登記のままの不動産については、申告漏れが発生しやすくなっています。

実務では、前者について、相続人が一度も会ったことがない親族と共有名義不動産があったというケースがみられます。また、後者については、登記名義が先代名義や先々代名義のままの土地・建物等をうっかりして申告漏れしてしまったケースがみられます。

そのような不動産がある場合、あとに残された相続人は相続財産の把握が困難になり、故意ではないにしても結果的に申告漏れとなる可能性があります。このようなことが起きないようにするためにも、生前に所有している不動産の棚卸しをしておくことをおすすめします。

対策3|生命保険の棚卸しや見直しをしておく

第三に、生命保険の「契約者」「被保険者」「受取人」をはっきりさせておくことです。

生命保険について、税務調査との関係でもっとも要注意なのは、「家族名義の貯蓄型の保険で、被相続人が保険料を支払っていたケース」です。税法上、生命保険の「契約者」とは、「契約名義人」ではなく、「保険料を実質的に負担していた人」をさすからです。

たとえば、生命保険の「契約名義人」「受取人」が配偶者や子であっても、「保険料の支払い」を実質的に被相続人が行っていれば、「契約者」は被相続人となります。したがって、その保険契約は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となるのです。

つまり、生命保険に関しては契約名義だけではなく、保険料負担者が誰かということが重要です。納税資金対策などで生命保険を活用している場合、次のことを見直して整理しておいてください。

  • 保険料を支払っていた人は誰か(契約者)
  • 保険が掛けられていた人は誰か(被保険者)
  • 保険金は誰が受け取ることになっているか(受取人)

相続対策は基本的に親心からスタートし、いろいろな対策が行われていきますが、対策を講じるのと同じく重要なことが、相続人となるべき家族とコミュニケーションをとり、必要な情報を開示することです。税務調査が行われるときは、本人は亡くなっており、相続人たちは残された状況証拠をもとに税務署とやりとりをしなければなりません。

税務調査の現場において、「なんでお父さんはこういう対策をしたんだろうね」「教えてくれればちゃんと対応できたのに」「すでに亡くなっているので私たちにはわかりません」といった声をよく聞きます。亡くなった後に残された家族が困ることも想定して、生きているうちに、家族への想いや所有財産に関する情報を相続人にしっかり伝えることで、相続対策は実のあるものとなります。