【老後資金づくり】「会社員の同級生がうらやましい」…50代・個人事業主が受け取れない「退職金約2,000万円」のハンデを埋めるには?新NISAでシミュレーション

個人事業主は会社員と違って退職金や厚生年金がないため、老後に不安を感じている方もいるのではないでしょうか。2024年から始まった新NISAを利用すれば、50歳からでも老後資金としてまとまった金額を用意することができます。この記事では、安心して老後を迎えるための「新NISAを利用した運用方法」について解説します。

大企業サラリーマンの退職金は約2,000万円

会社員には厚生年金や企業年金、退職金がある一方、フリーランスなど個人事業主は自分で老後の資金を用意しなければいけません。たとえば、厚生労働省の「令和3年賃金事情等総合調査」*によると、大企業(資本金5億円以上、労働者1,000人以上)の平均退職金額(男性)は、以下の通りです。

  • 大学卒  2,230万4,000円
  • 高校卒 2,017万6,000円

参照元:厚生労働省|令和3年賃金事情等総合調査

50代であれば定年が見えてくるので、個人事業主の方は会社員の同級生がうらやましいと感じるかもしれません。会社員が定年のタイミングで、退職金の金額によっては会社員と個人事業主では老後資金に約2,000万円の差が生じる可能性もあるからです。

ただ、50歳の方でも2024年から始まった新NISAで、自分で積立投資をしていけば、この差が埋まる可能性があります。

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個人事業主が自分で積立投資をする際のポイント

投資の基本は「長期・積立・分散投資」

投資を始める際の基本は、長期的な視点で運用することです。長期を見据えた方法を選ぶことで、資産運用を効果的に行うことができます。金融商品の価格は上がったり下がったり、波打つように変動します。ですから、投資は当面使わないお金で行い、値動きに一喜一憂しない心の余裕が必要です。

ただ、定期的に一定額を積立投資することで、リスクを抑えることができます。株式の売却益を得るには、買った価格よりも高い価格で売る必要があります。未来の価格を予測するのは難しいですが、定期的に一定額を積み立てると、その時点での株価に応じて株を購入できます。結果として、購入価格を平均化できるのです。

また、リスクを抑えるために投資先を分散させることも重要です。分散投資には、主に特徴の異なる資産(株式・債券・預貯金など)を組み合わせる「資産の分散」、複数の地域や通貨を組み合わせる「地域の分散」、投資のタイミングを何度かにわける「時間の分散」の3つがあります。

個人事業主が使いたい「投資の非課税制度」はiDeCo、NISA

「長期・積立・分散」投資をするときに利用したいのが、非課税制度です。個人事業主の投資による運用益の非課税制度には、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「NISA(少額投資非課税制度)」があります。

iDeCoは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別の私的年金制度です。公的年金とは異なり、自分自身で加入申込や掛金の拠出、掛金の運用を行うことができます。そして、掛金とその運用益の合計額に基づいて給付を受け取れます。公的年金と組み合わせることで、より豊かな老後生活を送る一助となるのです。

iDeCoは、国民年金被保険者であれば加入できます。そして、運用益が非課税になるだけでなく、掛金を拠出した分は全額所得控除の対象となるなど税制面の優遇を考えると、iDeCoは非常に魅力的です。

ただ、あくまでも年金づくりを目的とした制度なので、60歳以降にならないと運用したお金を受け取れません。個人事業主として生活しているとき、急な出費に対応できない点に注意が必要です。

また、2022年から65歳まで加入して掛金を積み立てられるようになりましたが、これにはさまざまな条件があり、60歳までしか積み立てられない人もいます。

この記事では50代の方を対象に10年以上の長期投資を前提としているので、iDeCoに投資するよりも、2024年から始まる「新NISA」が資産運用の本命と考えています。

新NISAとは?


出典:金融庁|新しいNISA

新NISAでは、非課税保有期間が無期限になりました。現在50歳の方でも「人生100年時代」を迎え、これから50年間運用するかもしれないことを考えると、これは非常に大きなメリットといえるでしょう。

また、「つみたて投資枠」では年間120万円、「成長投資枠」では年間240万円投資できるので、併用することで年間360万円(月30万円)まで投資ができるのです。

さらに、非課税保有限度枠は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)となりました。これは投資元本ベースなので、運用益を合わせると1,800万円を大きく上回る可能性があります。

リターンのシミュレーションにはGPIFが参考になる

投資でどの程度のリターンが期待できるかを判断するときは、公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用実績が参考になります。GPIFでは複数の資産に分散投資することでリスクを抑えながら中期運用するポートフォリオを構築しているからです。2023年9月末時点におけるGPIFの運用資産額・構成割合は、以下の通りです。


出典:GPIF|2023年度の運用状況

基本ポートフォリオは、

国内株式 25%
国内債券 25%
外国株式 25%
外国債券25%

となっています。そして、2001年度以降の収益率は+3.91%(年率)、収益額は+126.7兆円(累積)となっています。


出典:GPIF|2023年度の運用状況