確定申告を楽にするためルーティン化しておきたいこと


時計と書類
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会社員は、基本的に年末調整で税金の申告が完結します。ですので、確定申告をする必要がある場合は、難しく億劫に感じるかもしれません。また、個人事業主などで申告を毎年している人でも、申告の準備を少しずつやっておけば良かったという声が聞こえてきます。どうすれば確定申告をスムーズに終わらせることができるでしょうか。ここでは、確定申告を楽に行うために、日頃からやっておきたい下準備についてみていきましょう。

➀会社員の場合

年末調整で手続きできない医療費控除や住宅ローン控除の初年度の手続きがあげられます。医療費は、薬局で購入した風邪薬や胃薬など治療のために購入したものも対象で、家族の医療費を支払った場合も合算可能です。

申告する時にあちこちから医療費の領収書を集めるとなると、手間だけでなく、領収書を紛失して見つからないという場合もあります。ですので、最初からリビングなど皆が集まる場所に専用の箱を置き、医療費の領収書は全て箱に入れるようにルールを作っておくと良いでしょう。

住宅ローン控除の手続きは、家を購入する時に交わした契約書「売買契約書または、建築請負契約書の写し」を無くさないように管理しておきます。住民票や登記簿謄本は年が明けて、時間がある時に、役所や法務局で発行してもらいましょう。「借入金年末残高等証明」は、年末調整の時期に住宅ローンを借りている銀行から届きます。

会社員で副収入がある場合

会社員で副業をしていて事業所得がある場合は、収入を得るためにかかった経費の管理が必要です。確定申告をする時にまとめてやると、記憶をたどりながらになってしまうため煩雑になりがちです。「収入がある月は必ず月末に整理する」などルール化すると良いでしょう。

➂個人事業主の場合

個人事業主も同様です。会社員の副収入に比べると、経理処理のボリュームも多くなるため、月末など必ず月に1度は処理をするようにルーティン化しておくと安心です。帳簿をつけるのは大変ですが、近年は会計ソフトも高度化しており、銀行口座やクレジットカードを連携すると、情報が定期的に計上され便利です。それを光熱費、交際費、旅費交通費などと勘定科目に振り分けます。これらは、スマホのアプリで処理できる場合もありますので、移動などの隙間時間に少しずつ処理をするのも有用です。

また、現金で支払った場合は、自分で一から入力することになりますが、スマホで領収書の写真を撮り、アップロードすることで、内容が自動的に読み込まれるソフトもあります。自分が使いやすいと思う会計ソフトを検討してみましょう。

また、取引先に発行した請求書の控えは日付順にして、きちんと資金を回収できたか管理する必要があります。期日までに支払ってもらえているか確認し、回収できてない資金があれば先方に連絡しなければなりません。これも月末などのルーティン業務にしたいものです。

2023年10月から、インボイス制度が始まりました。消費税を納める立場であるのなら、取引先のインボイス番号が必要です。確定申告が終わると直ぐに消費税の申告期限(4月1日)がきます。慌てなくて済むように、経理処理をする時に相手先のインボイス番号を確認しておくと安心です。

その他

ふるさと納税の寄附金受領証明書は寄附をした都度、生命保険料控除証明書は秋頃に届くため紛失しないよう保管します。そういった書類は、種類ごとにファイルに分けておくと良さそうです。忙しくて時間がない時は、わざわざ開封せずファイルにポンっと入れておくだけでも良いでしょう。

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確定申告の提出方法、早くて簡単に終わるのは?


TAX
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確定申告の提出方法は、次の3通りです。

・税務署に持参する
・税務署に郵送する
・e-Taxで申告する

紙の申告書を作成する場合の提出方法は、税務署へ持参することになります。申告時期になると税務相談や申告書の書き方を相談しながら確定申告をすることができる特設会場が設けられます。そこで記入し提出することも可能です。また、忙しくて持参できない場合は、税務署に郵送することも可能。その場合は、申告書(控)と返信用封筒を同封しておくことで受領印の押された控えが返送されます。

もし、申告書類が手元にない場合は、国税庁HPからダウンロードできますが、おすすめは、国税庁が提供している「確定申告作成コーナー」というサイトの活用です。紙の書類に記載していくと、記入漏れや計算ミスが起こりやすくなりますが、こちらのサイトでは、申告内容に合わせて、順に入力して進んでいくようになっているため、楽に進めることができます。自動的に計算を行ってくれるため、計算ミスは起こりません。また、作成の途中で一時保存もできるため、少しずつ進めることも可能です。完成したら申告書をプリントアウトして、税務署に提出します。

そして最も簡単に申告する方法は、国が推奨しているe-Taxです。「確定申告作成コーナー」で作成した申告書をそのまま電子申告することで完結します。申告方法は、大きく3パターンあるので順にみてきましょう。

1つ目は、パソコンで申告する方法です。ICカードリーダライタを使ってマイナンバーカードの情報を読み取ることで本人情報と紐づけられ、申告ができます。ICカードリーダライタと耳慣れない言葉を聞くと身構えてしまう人もいるかもしれません。しかし、家電量販店やネットショッピングで手軽に入手できるので安心してください。

ICカードリーダライタでの申告にハードルを感じる場合は、2つ目の方法となるスマートフォンでの申告がおすすめです。確定申告作成コーナーでスマホでの申告を選択すると、パソコンにQRコードが表示されます。それをスマホで読み取って申告の手続きを進めます。マイナンバーカードの情報は、スマートフォンをかざして読み取れば良いため先ほどのような機器の準備は必要ありません。なお、その場合、スマホにマイナポータルアプリをダウンロードしておく必要があります。

また、これらの申告は、マイナポータルと連携して進めることも可能です。連携すると、収入や控除証明書等のデータを一括取得し、確定申告の該当項目に自動的に入力されるのでとても助かります。

マイナポータルから取得できるデータは、次のようになっています。

(収入)
給与所得の源泉徴収票
公的年金等の源泉徴収票
株式の特定口座

(控除)
医療費
➄ふるさと納税
➅社会保険(国民年金、国民年金基金掛金)
➆iDeCo(個人型確定拠出年金)
➇小規模企業共済掛金
➈住宅ローン控除関係

給与所得の源泉徴収票、社会保険のうちの国民年金基金掛金、iDeCo(個人型確定拠出年金)、小規模企業共済掛金は、令和5年分の確定申告から連携できるようになりました。

最後に3つ目の方法です。これは、ID・パスワード方式といって、e-Taxでの申告をする方法の1つです。税務署で発行されたID(利用者識別番号)とパスワードを入力して申告を進めます。

その他には、自営業の方などが利用している会計ソフトを使って、直接e-Taxで申告できる場合もあります。利用している会計ソフトが対応しているかどうか確認してみましょう。なお、e-Taxのメリットは、税務署に行く手間や交通費、郵送料の負担がなくなることに加え、生命保険料控除証明書などの添付書類を省略できるようになる点です。

更に、個人事業主が青色申告をする場合に受けられる青色申告特別控除が最大65万円となります。紙の申告書で提出する場合は最大55万円ですからe-Taxの方がお得というわけです。また、申告書の控えも直ぐにダウンロードすることができ、何回でも発行可能です。定期的に確定申告が必要な場合は特にe-Taxの利用を検討すると良いでしょう。

参考:
国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)
国税庁「確定申告書等作成コーナー