予約困難なレストラン、知る人ぞ知る名店、大人のバーetc. 今までメディアでも掘り下げてこなかった、秘密のスイーツをお届けする連載、鈴木セイラ『金曜日、秘密のデザート』。今回舞台となるのは、2023年の末にOPENし、新しい食の発見地として、そして観光地として話題の麻布台ヒルズ。

人気店から新規出店のお店まで、数多くの名だたる名店がひしめく中でも、とりわけ異彩を放つお店が「LANIGIRO (ラニギロ)」。この麻布台ヒルズの開業から少し遅れてのOPENとなったものの、すでに話題のお店に。この麻布台ヒルズが「LANIGIRO (ラニギロ)」としての初の店舗であり、ここでしか食べられないお菓子を楽しむことができる。

「レストラン」という強いマインドを感じさせる、常識を覆すお菓子

広大な敷地と複雑な構造の麻布台ヒルズ。最寄り駅は神谷町駅で、立地としては六本木や虎ノ門にとても近く、ビジネスパーソンから観光客まで多くの人が足を運びやすい。お店は駅からガーデンプラザA/Bを抜けた先にあるガーデンプラザC。人通りも多いこの通りには様々なショップがひしめき合う。

「LANIGIRO (ラニギロ)」は、白金台で人気を博した「TIRPSE(ティルプス)」のオーナー大橋直誉氏が手掛けるお店で、小さな販売カウンターには即完売してしまうクッキー缶やアメリカンなチャンククッキー、そしてフランスやイタリアで愛される「ババ」など、その取り扱うお菓子のジャンルは多国籍で幅広いラインアップ。

そして中でも人気なのが、注文を受けて焼き立てで提供される「ストロープワッフル」。オランダのおやつで、オランダ流でいえば味わいはキャラメルとシナモンではあるが、味わいとしては「キャラメルブールサレ」と「チョコキャラメル」の2種類で、特に「キャラメルブールサレ」はゲランドの塩を使うなどフランス菓子の片鱗を感じさせる部分も。

ザクっと繊細な生地からあふれるソースは焼き立てだからこその美味しさ。この“出来立て”にこだわるのは「レストラン」がやる“お菓子屋”という強いマインドから来ている。

“お菓子屋の常識は、レストランの常識ではない”

最高の料理を、デザートを出来立てで提供してきたシェフ陣が、パティスリーでは具現化できない、常識を覆す新しい世界を繰り広げる。

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小さなラボで「ケイオス」が起こる

小さなお店のカウンターの奥は、オープンキッチン。そこで出来立てのお菓子を仕立てていく。この小さなキッチンの中で、0から始まった「LANIGIRO (ラニギロ)」で日々新しい挑戦を繰り広げている。商品のラインナップも、模索をしながら一つ一つ試作をしており、その中心にいるのがシェフパティシエを務める新進気鋭のパティシエ堀内 凜。

フランスで経験を積み、その後大橋氏が手掛ける先述の「TIRPSE(ティルプス)」へ。その後「TIRPSE(ティルプス)」が香港に移転をし、2022年には香港で名誉ある賞「SCMP Best pâtissier」を獲得し、この「LANIGIRO (ラニギロ)」へジョインすることになった。

国際色豊かなシェフが腕ふるうことで、扱うお菓子のジャンルも国もさまざま。「へんてこりんなお店にしたい」そう話す大橋さんの想いは、店内にも。お店の色合いはもちろんのこと、器はバカラもあれば現代作家の作品や九谷焼とボーダレスだ。

ラボと店内では天井の高さも雰囲気も異なる。“統一感が全くない状態を組み合わせた価値観の集合体”が、この「LANIGIRO (ラニギロ)」である。

決して広いとは言えないこの敷地の中で、価値観が様々に入り混じった“ケイオス”が、新しいお菓子を情熱的に作り上げていく。活気あふれる厨房は、目を見張るものを感じた。