日本テレビが2024年5月31日、ドラマ「セクシー田中さん」(日本テレビ)原作者で漫画家・芦原妃名子さんが急死したことをめぐって、調査報告書を発表した。その内容の一部について、漫画家・本島幸久さんがXで私見を述べた。

「ドラマ界をけん引してきたプロデューサー」からのコメント

ドラマ制作側とのトラブルを明かしていた芦原さんが1月29日に亡くなった問題で、日テレは2月15日に「ドラマ制作部門から独立した社内特別調査チーム」の設置を発表していた。5月31日に公式サイト上で公表した報告書では、ドラマの制作過程において、原作側と制作側の間に、認識の食い違いやミスコミュニケーションがあったとした。

競馬を描いた漫画『風のシルフィード』(講談社)などの作品で知られる本島さんは6月2日にXで、日テレの報告書を読んだと報告した。投稿で問題視したのは、報告書の別紙として公表された「有識者の方々からいただいたコメント」の中にある発言だ。「多くの人気ドラマを手掛けドラマ界を牽引してきた在京各社元ドラマプロデューサー5名」からのコメントが並ぶなか、「今回のことを受けて」の項目に、以下の発言が載っている。

「これで怖がっちゃいけない。安全にドラマを作る方法なんてない。それはみんな意見が違うし考え方が違う。その中で人間の生き方みたいなものを提示していかなければいけない。意見の食い違いもケンカもいろんなことがあって、プロデューサーが代表して、こういうドラマを世に問うんだと原作者、脚本家をまとめやっていかなきゃいけない。それを怖がっていたら面白いモノが出来なくなってしまう」

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「何の考えも覚悟も無い者は怖がって立ち止まって欲しい」

これについて、本島さんは「『これでドラマ作りを怖がってはいけない』ってのは酷過ぎる。スポーツを始めたばかりの子供に『積極的にいければミスはいくらでもOKだぞ』って言うのとは訳が違うんです」「怖がるべき」と訴えた。

続けて、「その言葉が表現が、作り手も受け手も含めた創作に関わる全ての”誰か”を傷付ける事は無いのか──徹底的に怖がって、あらゆる方向に想像力を働かせて、もし少しでもマイナスの可能性があるならそれを回避する為に話し合い、考察し、必要な取材を徹底的にして、プロの作り手としての工夫をして欲しい」と求めた。

本島さんは、「それは『納期が迫ってる』とか『契約書を交わしてないから』で済ましていい話ではないんです」とも主張する。「手間と妥協を一切惜しまず創作の為に身を削る覚悟のある者だけが、怖くても前に進んでいいのだと僕は思います」とし、自身もそういった思いで創作活動に取り組んできたと明かした。

「それは原作者だろうがプロデューサーだろうが、脚本家だろうが一スタッフだろうが、創作に関わるプロなら全員同等なはずです」と本島さんは続け、「二度と悲劇を生まない為に、何の考えも覚悟も無い者は怖がって立ち止まって欲しい」と締めた。