日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。

「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸のデザイナー、志村紀子がご紹介いたします。

2024年6月5日から二十四節気は芒種に

芒種(ぼうしゅ)の「芒(のぎ)」とは、稲や麦など、実の殻にある針状の毛の部分を指す言葉で、こうした植物の種をまくころを表した節気です。

今回はつる性植物の女王と呼ばれるクレマチスが主役。世界中に300種の自生種があり、園芸品種ともなると2,000~3,000種があるとされる、種類がとても豊富な植物です。花の色と形もさまざまですが、春だけ咲くものもあれば、春と秋のみ、秋から春にかけて咲くものなどもあって、同じ種とは思えないほどのバリエーションが存在していますが、初夏はいろいろなクレマチスが見られる花盛りの時季です。ここでは、咲き方の異なるクレマチスで楽しむ、花あしらいをご紹介します。

束感を楽しむ

ベルのようでもあり、逆さまにした壺のような形でもあることからベル咲き、または壺咲きと呼ばれるクレマチス「ロウグチ」だけをまとめてシンプルに生けました。

ロウグチは半つる性で、鮮やかな葉と伸びやかなシルエットが美しいクレマチスです。1本ですとお茶室の花のような楚々とした雰囲気ですが、花・葉・茎をひと固まりの束にすると、生命力を感じる花あしらいになるかと思います。

こんな風に、花全体を楽しむ花あしらいの場合は、きれいに洗った透明のガラスの器を使ってみてください。

茎がきれいに見えるのはもちろんですが、曇りのないガラスは全体をより美しくみせます。

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動きを楽しむ

こちらのクレマチスは、八重咲クレマチスの「ベル オブ ウォーキング(ウォッキング)」。先ほどのロウグチとは花や葉の姿形も全く異なり、こちらは花が大きく華やかで、一輪ごとに動きがあります。

この花あしらいではそんな自由奔放に咲く花を活かすように、あちこちに花が向くように生けてみました。

クレマチスの茎はとても細いので、そのままだと生けたい位置に花が固定しづらいかと思います。ここでは花留めを兼ねて器の中にあえて葉を入れ、初夏のみずみずしさを演出しつつ、花を固定しています。

水に浸かった葉は傷みやすいので、1日程度で取り除く必要がありますが、ときにはこんな方法も便利で楽しいかと思います。