子どものころからこれまで、何も考えずに使ってきた階段。そんな階段に足がすくむほど恐怖を覚えるようになってしまう日が来るなんて、想像もしていませんでした。加齢からついついおっくうで運動不足になり、知らぬ間に動かしにくくなっていた足。階段を落ちかけて、しばらく怖くて使えなくなってしまった体験談です。

階段が使えない

私が階段を怖いと思うようになったのは、足を踏み外したことがきっかけです。その日、私は車を運転して買い物へ行きました。行き先はクリニックや本屋なども入っている5階建ての複合型施設。4階から屋上までの上層階が駐車場、3階以下がすべて店舗になっている施設です。私は大体エレベーターやエスカレーターを使って駐車場から店舗のある階まで下りていましたが、その日は子どもにせがまれて久しぶりに階段を使ったのでした。

階段を下り始めてすぐのことです。突然なぜか足が踏み出しにくいと感じ、そのまま足が階段を踏み外して、体が投げ出されるように落ちる感覚に襲われました。私は半ばパニックになって必死に手すりにつかまり、何とか階段を転げ落ちることはありませんでしたが、あまりのショックで心臓がドキドキと音を立てていました。このとき、不思議そうに振り返ったわが子の顔は忘れることができません。

階段は、高くも低くもないいたって普通の階段で、何度か使ったこともあります。その日は久しぶりではありましたが、まさか落ちかけるなんて思ってもみませんでした。そのときの投げ出されるような恐怖が頭にこびりついてしまったようで、その後しばらくはどこの階段も怖くて使えませんでした。

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恐怖を感じる原因は…

私は若いころ、職場や駅などでは運動も兼ねて階段を利用し、エスカレーターやエレベーターはほとんど使っていませんでした。ところが、出産して子どもの歩みに合わせて生活するようになると一変し、エレベーターを使う機会がぐんと増えました。子どもが大きくなって階段が使えるようになっても、加齢による体力の衰えとエレベーターに慣れてしまったことから、おっくうで、階段を使わないことがほとんどです。

ネットで調べてみたところ、そういった運動不足による体の柔軟性の低下や、加齢による膝の関節や筋肉の衰えが、階段をうまく下りられない原因とありました。そういえば、私の介護福祉士としての経験でも、施設を利用する方々に向けて膝周りのストレッチや体操をおこなっていたのは、まさに階段を下りるときの負担を軽くし階段事故による介護予防につなげるためでした。

ただ、私の場合は体の機能面だけでなく、足の踏み出し方がわからなくなり階段が下りられないという感覚も伴っていました。体の誤作動を頭が覚えてしまい、怖い思いをしたことで心理的にも階段を下りられなくなっていたのです。しばらく階段を使わなかったので、階段を下りるときの無意識な体のバランス感覚まで衰えてしまっていたようでした。