2024年6月21日から二十四節気は「夏至」に
夏至は二十四節気の中でも暦の基準となる重要な節気のひとつで、夏の季節の中心を示す節気です。一年の中で北半球の昼がもっとも長く、正午の太陽の高さが一番高い位置にある日が夏至ですが、対を成しているのが冬至です。こちらは昼がもっとも短く、太陽は一番低くなります。
そして、夏至は夏の暦の折り返し地点でもあり、この節気を過ぎれば季節は早くも晩夏に入ります。
夏至の季節感
紫陽花の花守り
いつのころから始まったものかはわかりませんが、紫陽花が旬を迎える時季を「紫陽花節句(あじさいせっく)」と呼んで、花守りを吊るす風習が見受けられるようになりました。
この花守りとは、6月1日、6月の6のつく日、7月の土用丑の日などに、願い事を書いた紙に紫陽花の切り枝を包み、水引などで結んだものを玄関や軒先などに逆さに吊るすという風習で、地域によって縁起は異なり、魔除け、金運、病除けなどさまざまあるようです。
花毎では2018年の夏至の花月暦で広田千悦子さんがご紹介してくださっています。
ちなみに、紫陽花には古くから未だ明らかになっていない毒性成分*があるとされています。紫陽花が魔除けとされる理由はこうしたことに由来しているからかもしれません。
ともあれ、夏至は一年の折り返し地点。ここで、災厄を祓い、冬至までの無病息災を願いたいものです。
*厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アジサイ」より
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「茉莉花」
□開花時期:6~9月
□香り:あり
□学名:Jasminum sambac
□分類:モクセイ科 ヤスミヌム/ソケイ属
□和名:茉莉花(まつりか)
□英名他:Arabian jasmine、Pikake/Pikaki、Sampaguita
□原産地:熱帯アジア
今回ご紹介するマツリカは200~300種あるとされるヤスミヌム(ジャスミン)属*の一種です。
ジャスミンの名が付くもので、日本でよく見かけるものは4月から5月に開花する「ハゴロモジャスミン」、春から夏にかけて黄色の花を咲かせる「カロライナジャスミン」、白く香りのよい花を咲かせる「マダガスカルジャスミン」があります。
「ハゴロモジャスミン」はヤスミヌム属に属し、柱などに絡みついて大きく成長。マツリカとは異なる、濃厚で甘い香りが特徴です。
「カロライナジャスミン」はゲルセミウム科ゲルセミウム属なので違う種の植物です。香りはハゴロモジャスミンよりも弱く、黄色い花を咲かせますが、蜜や樹液を含めて、植物全体に毒性があります。
「マダガスカルジャスミン」は花の姿とよい香りはジャスミンの仲間のように見えますが、キョウチクトウ科シタキソウ属ですのでジャスミンとは違う種の植物です。こちらも樹液に毒性があります。
*和名ではソケイ属
歴史
マツリカの歴史は古く、中国で3世紀に記された最古の植物誌「南方草木状」に中国名でマツリカの意味の「末利」の記述が。また、日本では1614年、島津家久が駿河に献上*したとの記録が残されています。
ヨーロッパでは17世紀末にインドのゴアから伝わった八重咲き品種の栽培がはじまり、最初に定着したのはイタリア・ピサにあるグランド・デューク庭園(現Orto e Museo Botanico)です。現在でも「Grand Duke」「Grand Duke of Tuscany」「Tuscan Jasmine」などと名前が付けられた八重咲き品種があり、その名残りと考えられます。
*慶應義塾大学学術情報リポジトリ「明治前園芸植物渡来年表」より
名前の由来
マツリカの「茉莉花」はサンスクリット語でこの花を表す「マリカー」に漢字をあてたものと考えられます。タイではMali(マリ)で、こちらもマリカーが転じたものでしょう。
ハワイ語ではPikake/Pikaki(ピカケ)と呼ばれています。孔雀も同じくピカケと呼ばていて、これは花と鳥の両方を好んでいた、カイウラニ王女に由来するといわれています。
フィリピンではSampaguita(サンパギータ)で、タガログ語で「永遠の愛を誓う」という意味があり、国花となっています。
ジャスミン茶
ジャスミン茶の香りの正体がマツリカの花です。高価なジャスミン茶は、つぼみの状態で摘まれた花が夕方から夜にかけて開き、香りを放ちはじめた花を茶葉の上に敷き詰め、攪拌を繰り返して着香させます。高価なものほど何日もこの工程を繰り返し、より香り高く仕上げます。
母の日の花
毎年8月12日のタイの母の日には、マツリカなどで作ったプアンマーライ(花輪)を母親への感謝の象徴として贈ることが一般的です。
これはマツリカの香りが長く続くことから、途切れることのない純粋な母の愛情を象徴しているとされ、タイの母の日のシンボルとなっています。
ちなみに、このプアンマーライはマツリカのつぼみやマリーゴールド、チューベローズ、バラなどを丁寧に編み込んだもの。数珠に房が付いたようなタイプや、首飾りのように長いタイプなどデザインも価格もさまざまで、タイの至る所で売られています。
タイの人々はこのプアンマーライに祈りや願いを込めて、仏像や祠にお供えしたり、目上の人への贈り物に添えたり、車の中に飾ったりと、日々の暮らしに取り入れています。