「日当8500円」ヒグマ駆除の報酬額めぐり北海道奈井江町と地元猟友会が対立!? 過去にも道内のハンターと自治体のトラブル

各地で目撃が相次ぐクマ。その駆除報酬をめぐり、北海道奈井江町で活動する猟友会と出動要請した町がモメていた問題は、町が要請を断念する形で幕引きが図られた。しかし、引き続き町ではクマが目撃されるなど予断を許さない状態が続いているがー。

アルバイトのように安い報酬額、町「要請を断念せざるを得ない」

「北海道・空知の奈井江町の猟友会が、クマ出没時の対応を辞退したことを受け、町は猟友会への依頼を断念したと明らかにしました」(6月10日、STVニュース北海道)

町側が猟友会側に対し、日当8500円、発砲した場合は1万300円の報酬額を提示。猟友会側はこの金額が「アルバイトのように安い。私たちは命をかけている」などと抗議したが、町側は「町だけで解決できる問題ではない。(猟友会への依頼を)断念せざるを得ない」として猟友会に対し、駆除の要請を行わないことにしたのだ。

ちなみに、札幌市では出動1回で約2万5000円、捕獲した場合は約3万6000円の報酬が得られるなど、周辺自治体では奈井江町と比較してもハンターに対して高い報酬が支払われている。

「ハンター不足には陥っていない、今までと変わらない」と町は強調

奈井江町産業観光課の担当者によると、町が砂川市の猟友会と契約している金額が「日給8500円、銃を撃つと1万300円」だと説明。町は猟友会と一度協議しようとしたところ、猟友会側は「金額について検討したい」とし、「一度持ち帰る」と伝えてきたという。その後、細かい内容の検討をしている最中、「猟友会と町の対立」との報道が出た。その後に猟友会側が「人がいないから要請を辞退する。猟はしない」などと断ってきたという。

一部報道では、町のハンター不足が取りざたされていたが、これについて町の担当者は「町内や近隣自治体に20人前後のハンターがいる。人手は確保できているため、今までと変わらない。ハンター不足には陥っていない」と半ば困惑しながら回答している。

砂川市ではハンター銃所持取消訴訟、今もなお続く

過去を振り返ると、自治体とハンターとの間で訴訟になった騒動もある。

2018年、奈井江町の隣にある北海道砂川市から要請を受け、猟銃を所持していたハンターが、北海道公安委員会から銃所持の取り消し処分を受けるという事態が発生した。ハンター側は北海道公安委員会を相手取って訴訟を提起し、裁判になった。

きっかけは2018年8月、砂川市が地元のハンターらに対し「ヒグマが出た」として出動を打診したことに始まる。ハンターは要請を受け出動するも子グマだったことから「撃たない」と決断する。しかし、市側は「銃で駆除してほしい」と猟銃による対応を求め、あらためてハンターはライフル銃を発砲して、小グマの駆除に成功している。これで平和な日常が訪れる、はずだった。

ハンターが子グマを駆除した数カ月後、砂川警察署はハンターを事情聴取して銃を押収した。併せて北海道公安委員会も銃所持許可を取り消している。

「地元から要請を受けて銃を発砲したのに、なぜ銃所持許可を取り消されるのか」

ハンターの男性は処分の撤回を求めて20年5月、訴訟を提起した。21年12月の札幌地裁判決は、「本件ライフル銃の所持許可を取り消すというのは社会通念に照らし著しく妥当性を欠く」などとしてハンター側の勝訴判決を言い渡した。しかし、公安委員会側は判決を不服として札幌高裁に控訴し、審理が続いている。

鈴木道知事「報酬額引き上げを国に求める」

ヒグマ対策をめぐっては、6月14日、北海道の鈴木直道知事が農業被害対策でヒグマを捕獲した場合、報酬額(1頭あたり)の引き上げを国に求めると記者会見で明かした。現在は8000円を1頭分として国から支払われている。自治体はこの8000円に金額を上乗せし、ハンターに報酬として支払っている現状がある。

奈井江町ではさらにヒグマが目撃されているとの情報もある。北海道では特にヒグマと人間との関係性が注目を集め、過去にはヒグマ「OSO18」の駆除をめぐり、「かわいそう」などと苦情が殺到したのは記憶に新しい。ヒグマをめぐる話題は、今後も尽きそうにない。