Aさんの“隠しごと”が税務署にバレたワケ

実は、Aさんは「家賃収入」を目的とした賃貸用不動産を購入しており、その分の確定申告を長いあいだ怠っていたのです。

では、なぜAさんの”隠れ副業“が税務署にバレてしまったのでしょうか?

不動産を購入すると、その所有権を明確にするために、所轄の登記所にて不動産登記を行うこととなります。

この不動産登記の際、その登記所から「所有権異動」の連絡が税務署に届くようになっているのです。

通常、不動産の購入には多額の資金が必要となるため、税務署は購入者に「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」という文書を送ります。この「お尋ね」の中身は、「不動産を購入した資金はどこから調達しましたか?」といったアンケートのようなものです。

これに対し、購入者は「住宅ローン」や「自己資金に加え、親から住宅資金の贈与を受けた」といった旨の回答を行います。

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「お尋ね」に無回答でもペナルティはないが…

税務署がこの「お尋ね」で確認したいポイントは、「その資金が適正に申告されたものであるかどうか」という点です。

たとえば、毎年の所得状況よりも大きな買い物である場合は「収入の申告漏れ」がないか、専業主婦で収入がないはずなのに不動産を購入した場合、「誰かからの贈与」があったかどうか確認します。

この「お尋ね」に回答しなかったといっても、特にペナルティはありません。しかし無回答の場合、「なにか回答できない理由でもあるのだろうか」と不審がられ、税務調査の対象に選ばれてしまうことがあります。

Aさんの父が亡くなったとき、相続財産は自宅と預金のみでしたが、預金は4,000万円ほどありました。

Aさんは、「このまま4,000万円を寝かせておくよりも、不動産投資で家賃収入を得たほうが、自分の老後にゆとりが持てるかもしれない」と考え、自己資金の1,000万円を加え、自宅近くの賃貸アパートを購入しました。

購入後しばらくして税務署からの「お尋ね」文書が届いていましたが、むやみに自分の情報を晒すのも気が引けたAさんは、それほど重要度も高くないだろうと、無回答のまま放置しておいたのでした。

しかし、「お尋ね」に無回答で事なきを得たとしても、家賃収入を得ているにもかかわらず「確定申告」を怠り無申告であった場合には、深刻なペナルティが課せられます。