「こんな風に食べたい」を突き詰めた、とんかつ店の理想形|外苑前【とんかつ ここまでやるか。】

なんともキャッチー過ぎる店名に驚かされるが、外苑前の人気店【malca】の北野司シェフがプロデュースと聞けば納得。無類のとんかつ好きとのことで、その“とんかつ愛”が高じて、「スタッフも皆とんかつ好きで

  • 本能に訴える熱々ジューシーのとんかつ
  • とんかつを引き立てる名脇役も勢揃い
  • アラカルト、美酒も充実。“呑める”とんかつ割烹

本能に訴える熱々ジューシーのとんかつ

老舗の天ぷら店か割烹料理店を訪れたような落ち着いた雰囲気。店名とのギャップに戸惑います。「“ふざけた名前” “本当に旨いのかな?”と半信半疑で来られた方も、この雰囲気なら安心していただけますよね」と、料理長の田代昌雄氏が笑顔で出迎えてくれます。

カウンターには真っ白のナフキン、落ち着いた色調の食器、そして電動の岩塩用のミルが整然とセッティングされています

「おしぼりも厚手のタオル生地を使用しています。味だけでなく、お客様が手を触れるものすべてのクオリティを高める細かいホスピタリティに対しても“ここまでやるか…”と感じてほしくて」(田代氏)

揚げ場に立つ料理長の田代昌雄氏。料理の技術の中でも“揚げ物”の奥深さにハマり、日々研究している

雰囲気からして常識を変えていこうという静かな闘志が伺える。では主役のとんかつは「どこまでやったのか」を聞いてみました。

「近年とんかつ業界で流行っているのは、低温でじっくり揚げた衣が白っぽいとんかつ。油から揚げた後は、肉汁が安定するまで休ませてから提供されます。こういったとんかつは、やわらかくてしっとりとした仕上がりですが、何か物足りない。肉の旨みを引き出すには、“じっくり”の火入れは重要ですが、食べる時に本能に訴えてくるのは香りやジューシー感、熱々ということも重要なんじゃないか、というのがとんかつマニアの北野シェフや私をはじめ、うちのスタッフの理想とするとんかつなんです」と熱弁する田代氏。

誰にでも愛される癖のない兵庫・神戸ポークや旨味濃厚な北海道・どろぶたなど個性の違う豚肉をを2〜3種厳選。ロースは200gか100gを選べる

田代氏が目指すのは、目の前に置かれたときに立ち上る香ばしい香りも大切にした本能に訴える熱々ジューシーなとんかつです。

とんかつは低温と高温で仕上げる2度揚げ方式

まず低温で下揚げ。その後、高温に設定した鍋に入れて田代さんが油の音、触った時の感触、衣の色など五感をフル活用して仕上げていきます。

白っぽかった衣が徐々に色づいて食欲を刺激する狐色に。包丁を入れた時のザクッと小気味良い音にも食欲をそそられます

「お肉の味をちゃんと味わってほしいので、パン粉の味は控えめながら、香ばしくサクサクの食感になるものをとパン粉専門店からパンの糖度、挽き方などを変えて何種類も見本を届けてもらって決めました」とパン粉も徹底的にこだわっています。

大きめのカットで揚げる『神戸ポーク、特上ヒレカツ』160g 3,200円、80g 1,800円のハーフサイズもあり。衣はサクサク、肉の中心はロゼ色でしっとり。コクが深く鼻に抜ける肉の旨みと甘い香りがしっかり脳に刻まれる

ロースもヒレも厚切りで一見ボリューミーですが、ロースは脂が軽やか。サクサクと食べすすむことができ、完食しても重たい印象は残りません。「熱々で食べる方が口溶けも良く、軽やかに食べることができるんです」と田代氏。

また、お肉にまぶす打ち粉も小麦粉に卵白パウダーをミックスしたものを使用することで衣がしっかりお肉に密着し、お肉と衣の一体感もしっかり保ったまま味わうことができます。

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とんかつを引き立てる名脇役も勢揃い

“とんかつ愛”のこだわりは、ソース、キャベツ、ご飯やお味噌汁など脇役にも徹底されています。「まずソースは、トマトソースをベースに、甘過ぎす重過ぎずのバランスでブレンドして、誰の好みにも合うオーソドックスな味にしつつ、少しだけカルダモンやナツメグなどのスパイスを加えてアクセントをつけました」と田代氏。

このソースを熱々で提供するのは「せっかくとんかつが熱々でも、冷たいソースで温度が下がってしまっては台無しなので……」と田代氏。キャベツを別添えにしたのも温度を下げたり、ドレッシングがとんかつに影響を与えたりしないようにという思いからです。

とんかつを待つ間に擦っておいた胡麻の上に熱々のソースが注がれる

熱々ソースだけでなく、地中海風、イタリア風に味変ができるソースやさっぱり食べたい人のために、こだわりの塩、だし醤油と山葵も目の前にずらり。ご飯と共に食べる時はとんかつソースや塩だけでも充分に楽しめますが、アラカルトとしてお酒の飲みながらという場面では味わいの幅が広がり満足度がより一層あがること間違いありません。

スペインやモロッコでメジャーなスパイシーソース“モホ”バジル、アンチョビを使ったイタリア風“サルサヴェルデ”などで味変も楽しめる

塩でシンプルに肉の味わいを堪能するのもおすすめ。塩はバスク地方の湧き塩水を天日干しにしたもの。電動ミルが用意されている

もちろん定食として食べる時のご飯、お味噌汁もとんかつ味を邪魔せず引き立てるお米の品種、お味噌の種類を厳選しています。