バリアフリーリフォームを考えているけれど、「どこをどうリフォームすればいいの?」「誰に依頼すればいいの?」とお困りの方も多いのではないでしょうか?
バリアフリーリフォームの基本は「自立」と「動作の単純化」です。
バリアフリー工房
内間さん
そうおっしゃるのは合同会社バリアフリー工房の内間さん。
今回はバリアフリー・介護リフォームを専門とする合同会社バリアフリー工房の内間さんにご協力いただき、バリアフリーリフォームの基本や場所別の具体的なバリアフリーリフォームのポイントなどを解説します。
また、バリアフリーリフォームは知識と技術がないと難しく、手すりひとつ設置する場合も下地工事をして、使う人に合った場所に設置しなければ意味がありません。そのためリフォーム会社選びは慎重に行う必要があります。会社の選び方もお伝えしますので、参考にしてみてください。
※「介護する・される」に特化したリフォームは「必ず知っておきたい!介護リフォーム成功のための基礎知識」の記事へお進みください。
1.バリアフリーリフォームの基本
バリアフリーリフォームの目的は居住者の「自立」。
そのために考えるべきバリアフリー工事は、大きく分けて以下の2つです。
転倒予防
動作の単純化
すべてのバリアフリー工事につながる考え方ですので、最初に理解しておきましょう。
また、バリアフリーリフォームをする際には、今の状態だけでなく将来も見据えたリフォームを心掛けることが大切です。今後身体状況がさらに不自由になることを考慮し、今できることをこの機会に行っておくと良いでしょう。
[基本1] 転倒予防
基本の一つ目は、転倒を予防することです。
転倒予防のためのバリアフリーリフォーム例
手すりの設置
段差の解消
滑りにくい床に変更
身体の自由が制限されると、ほんのわずかな段差でもつまずく原因になります。
できるだけ自力で、安全に生活するためには、転倒の危険性がある場所をあらかじめリフォームし、転倒を予防することが大切です。
手すりの設置
階段を上がる時、廊下を歩く時、ちょっとした段差の昇降で壁などに捕まっていませんか?壁をつたって歩くのは安全とは言えません。身体を支える為の手すりの設置をおすすめします。
手すりの設置にあたっては、しっかり壁の下地工事を行い、丈夫な手すりを設置しましょう。また、設置する高さや位置も使う人に合わせてつけることが大切です。
階段や段差などバランスの崩しやすい場所には前もって設置しておくといいでしょう。
手すり設置のポイント
下地工事をしっかり行う
使う人にとって握りやすい手すり(形・種類)を選ぶ
使う人にとって使いやすい位置に設置する
上記をしっかり行ってくれる業者を選ぶ
手すりの取り付けの費用例
I型手すり(1本)の取付け費用例:
※L型手すりの場合は4万5千円程度、回り階段に設置した場合は16万円程度です。
段差の解消
ほんのわずかな段差であっても、つまずく原因になり足腰の弱い方にとっては負担になります。できるだけ段差のないようリフォームするよう心掛けましょう。
玄関、廊下などの段差解消は、それぞれの家や生活する人に合わせた適切な方法をとる必要があります。
段差の解消方法は、「踏み台」や「式台」などを設置して段差を小さくする、床のかさを上げる、スロープを設置するなどがあります。
段差解消リフォームのポイント
踏み台などは動かないようしっかり固定する
スロープの勾配は急になりすぎないよう注意する
スロープは長すぎないこと
滑りにくい床材に変更する
段差解消リフォームの価格
段差をなくすリフォームの方法と費用は?補助金・実例も紹介
滑りにくい床に変更
室内であっても転倒による怪我や骨折は多くあり、滑りにくい床にリフォームすることで未然に防ぎたいものです。
とくに洗面所など水を使用する床だけでもリフォームしておくと安心できます。また、床材は各部屋に適したものを選ぶことが大切です。
床リフォームのポイント
【玄関回り】濡れることも考えてノンスリップタイルなどを用いる
【階段】滑りにくい木材を選ぶ(ヘリには滑り止めを付けることも大切)
【廊下】滑りにくい床材を選ぶ
【居間】クッション性や遮音性があるもの、歩行器や車いすで傷つきにくいものにする
【浴室内】ノンスリップ加工されたもの、素足で歩くためヒヤッとしない床材にする
【トイレ】掃除がしやすい素材、スリッパなしでも清潔感のある色や材質を選ぶ
[基本2] 動作の単純化
バリアフリーリフォーム基本の二つ目は、動作を単純化すること。
例えば、下記のようなリフォームが当てはまります。
動作の単純化のためのバリアフリーリフォーム例
扉を引き戸にする
人感センサーやリモコンタイプの照明器具にする
動作を単純化させることで、自分でできることが増え、居住者の「自立」につながります。
引き戸などへの扉の取り替え
引き戸へのリフォームや、それに伴う開口部を広げるリフォームは、バリアフリー工事では特に重要です。
扉を開け閉めをする際、「開き戸」であると前後の移動が発生します。とくに歩行器を使う方などは、(手前開きの場合)扉を開きながら自分は後ろに下がるという動作をしなければなりません。
そこで「引き戸」にすると、開閉時は歩行器を手放さないといけないので注意が必要なものの、動作が単純化されて移動が楽になります。
ドアの種類は主に、引き戸、開き戸、中折れ戸の3種類あり、バリアフリーリフォームでは引き戸や中折れ戸にすることが一般的です。それぞれのドアに特徴があり、使う人に合わせて選ぶことが大切です。
引き戸などへの扉の取り替えのポイント
玄関や部屋の扉などどちら側からも出入りする扉はなるべく「引き戸」にする
洗面所やトイレの扉は、緊急時の救出のしやすさを考えて「引き戸」または「外側に開く開き戸」にする
人感センサーやリモコンタイプの照明器具にする
照明器具のスイッチを押すために立ち上がる動作は、人感センサーやリモコンタイプに変更することで解消できます。
照明交換リフォームのポイント
人感センサー付き照明など動作の単純化ができるものを選ぶ
暗くなりがちな廊下や階段は照明を増やす
手元を照らす補助照明(フロアスタンドやデスクスタンド)を組み合わせる
光の色を調整できる商品を選ぶ(暖色系の色は眩しさが軽減する)
加齢にともなって、視覚機能は低下します。
明るい場所⇔暗い場所の移動時、視力回復の時間がかかったり、明るい場所でも見えづらくなるため、センサー付き照明で暗い場所を作らないようにしてあげると良いでしょう。
また眩しさはより強く感じるため、暖色系の光に調整すると眩しさが軽減し快適に過ごせます。
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2.住宅全面リフォーム時の間取りのポイント
バリアフリーリフォームを考えた際に、住まい全体のリフォ―ムをお考えの方もいらっしゃると思います。その際、ぜひ考えて頂きたいポイントをお伝えします。
バリアフリーリフォームを成功させるために、ぜひ参考にしてみてください。
生活スペースを一階にまとめる
二階建て、三階建ての戸建て住宅では、将来階段の昇降ができなくなった際のことを考え、一階で生活が完結できるように間取りを設計することをおすすめします。具体的にいうと、寝室・トイレ・洗面・キッチンが一階にまとまっていると良いでしょう。
生活スペースをできるだけ近くにまとめることで、バリアフリーリフォームの基本の一つ「動作の単純化」が図れます。
また、一つの案として、減築して平屋にすることも可能です。上階に上がれない、手入れができないなどの状態でしたら、平屋が住みやすいということもあります。
【実例付き】減築リフォーム6種を費用、補助金も併せて完全解説
ヒートショックを防ぐよう配慮した導線にする
ヒートショックとは急激な温度差がもたらす身体への悪影響のことです。主な症状として、失神、心筋梗塞、脳梗塞など血圧が大きく変動して起こるものです。
特に、冬場は寒い廊下と暖かい部屋の温度差からこの事故が起こりやすいと言われています。
このような事故を未然に防ぐために、浴室(脱衣所)と寝室、トイレの配置は十分考える必要があります。これら3つの導線はなるべく短いことが理想です。
寒い廊下を長時間通らずに、トイレに行けることを目指しましょう。
また、寒い廊下や脱衣所を経由して暖かい浴室に入ることも極めて危険です。こちらも未然に防げるよう、十分考慮しましょう。
心疾患をお持ちの方は特に注意が必要です。
歩行器や車いす移動を考慮した廊下幅と部屋の広さにする
将来、歩行器や車いすを使うことを考慮して、余裕をもった廊下幅や部屋の広さを確保しておくと良いでしょう。
歩行器や車いす移動では、特に方向転換の際に広さが必要になります。そのため方向転換のため回転できるか確かめることが大切です。
寝室を例にすると、ベッドなどの家具を置いた状態で回転できるだけのスペースがあると良いでしょう。回転スペースがないと前向きで入室して、後退しながら退出することになり、危険を伴います。
車いすからベッドへの移動も人によって体勢が異なります。ベッドと車いすを平行にする方もいれば垂直にする方もいます。その時にならないと適切なベッドや家具の配置が分からないため、広さを確保しておくことが大切です。
以下では、箇所別のバリアフリーリフォームを解説します。