都知事選候補者「マイナ保険証」への考えは? 小池氏、蓮舫氏ら4名が回答、国の政策だが「都政に無関係ではない」理由

7日に控えた東京都知事選の投開票を前に、都内の医師約6000人で構成される「東京保険医協会」が候補者に対し、医療・保険に関する政策についてアンケートを実施した。

候補者全56人のうち、回答したのは小池百合子氏、清水国明氏、田母神俊雄氏、蓮舫氏(五十音順)の4候補。政府が「マイナ保険証」への一体化を念頭に、今年12月2日から現行の健康保険証を廃止すると決定したことについて、小池氏と清水氏は「賛成」、田母神氏と蓮舫氏は「反対」の立場を示した。

石丸伸二氏は昨年「評価する」と回答

アンケートには、社会保障費の拡充や健康保険料の軽減など、同協会の政策要求に基づく10項目が設問された。そのうちのひとつ「2024年12月2日以降、健康保険証の発行が停止(=廃止)されることについて」に対し、4候補は以下のように回答している。

小池氏「都民や現場に混乱をきたさない形での制度移行が望ましいと考えています」

清水氏「仕組みの完成度をしっかりと見ながら、デジタル格差等を生まないよう都民の声を聞いて適切なタイミングを判断するべきだと思います」

田母神氏「反対」

蓮舫氏「反対」

なお、“台風の目”として勢いに乗る石丸伸二氏からは回答がなかったが、東京保険医協会をはじめ全国の保険医協会から組織される「全国保険医団体連合会」(以下、保団連)では同氏が安芸高田市長だった2023年に実施された読売新聞のアンケートを参照。これによると、「政府はマイナンバーカードの取得について、健康保険証と一本化することで、カードの取得を事実上、義務化する方針を打ち出しました。カードの取得を義務化する方針を、評価しますか、評価しませんか」との問いに「評価する」と回答している。

知事が「マイナ保険証」に言及する意義

保団連の本並省吾氏は、“政府が”決定した健康保険証廃止への考えを“都知事選候補者”に聞いた背景について、以下のように話す。

「自営業の方や74歳以下の高齢者などは市町村国保(国民健康保険)に加入していますし、後期高齢者の方が加入する後期高齢者医療制度の保険者は市町村が加入している広域連合です。これら公的保険を管理・統括している以上、『国が決めたことだから』と言いなりになるのではなく、首長には保険者のトップとして当然に物申していただきたい。

特に、東京都は政府に対する意見力もあります。マイナ保険証一本化のため健康保険証を廃止するという政府の方針に『ノー』を突きつける知事が誕生すれば、極めてインパクトが大きいのではないでしょうか。そうした思いで今回、健康保険証の廃止についても質問させていただきました。

東京都民の命・健康を守るという使命から、都知事に当選された候補には、健康保険証を残す立場で政府に意見してほしいです」

政府は“大キャンペーン”を張るも…利用率「+1.17%」

マイナ保険証の利用率低迷を打破したい政府は、5~7月を「利用促進集中取組月間」に設定。利用者が増えた医療機関に対する最大40万円の支援金の給付や、CMを含めた広告展開の強化などを行っているが、厚労省によると初月にあたる5月時点での利用率は7.73%(前月比+1.17%)で、依然として芳(かんば)しくない状況が続いている。


厚労省保険局「マイナ保険証の利用促進等について」より

厚生労働大臣の諮問機関で、健康保険制度の改定などを審議する「中央社会保険医療協議会」は3日、医療DX推進体制整備加算(※)に関する医療機関へのヒアリング結果を公表した。

※ マイナ保険証などを使ってオンラインで確認した個人の医療情報(いわゆる「オンライン資格確認」)を活用するための整備や、電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスの導入によって、医療DXへ対応できる体制になっていることを評価するもの

同調査では、マイナ保険証の利用が進みにくい事例についてもヒアリング。

「患者がマイナ保険証へ不信感を持っている」「患者へのサポート等を含めると、マイナ保険証利用の方が時間を要することもあるため、従来の保険証を利用される傾向にある」「カードリーダーが読み取りエラーを起こしてしまい、患者がマイナ保険証の使用に嫌気が差してしまう」「現状では保険証とマイナの両方が混在しているため受付の処理業務が複雑化し、ミスも起こりやすくなる」など、医療現場における混乱の実情が明らかになっている。

「健康保険証廃止」パブコメに5万人超が意見提出

健康保険証の廃止には、医療現場だけでなく国民からの反発も大きい。

現在、健康保険法などの省令(施行規則)では「保険証を交付しなければならない」とされているが、12月2日の廃止にともない、この規定を削除する改正案がある。これについて、厚労省では先月22日までパブリックコメントを募集。保団連でも同6日から公式Xなどで意見書提出を呼び掛けたところ、約16日間で5万人超の意見が提出されたという。

「オンライン署名などに比べて、パブリックコメントのフォームは複雑で、慣れていないと途中でやめてしまう方もいるかもしれません。しかし今回は、高齢者の方からも『どうやって出せばいいのか』と当連合会へ問い合わせいただくなど、意見する側の熱量を実感しました。

やはり、マイナ保険証への不信感や、政府の“ゴリ押し”に対して潜在的な怒りを抱えている人は多いのかなと思います」(保団連・本並氏)

国の政策でありながら、地方自治にも深く関連する健康保険証廃止、およびマイナ保険証への一本化。これに対する各候補の考えも、投票する際のひとつの指標となるかもしれない。