コロナ禍でブームになった焼肉店の倒産が相次いでいる。

帝国データバンクが2024年7月3日に発表した「『焼肉店』の倒産動向(2024年1-6月)」によると、焼肉店の倒産は昨年(2023年)の同時期の2.5倍に達し、過去最多のペースだという。

「食べると幸せな気持ちになる」焼肉に何が起こっているのか。調査担当者に聞いた。

輸入牛肉が高騰し、異業種の参入による競争激化

帝国データバンクによると、2024年に発生した「焼肉店」経営事業者の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は、6月までに計20件で、2023年の同期間に比べて約2.5倍となった。

年間としてはこれまで最も多かった2019年通年(26件)を大きく上回る勢いで、過去最多を更新することになる【図表1】。

個人営業など小規模店の閉店や廃業を含めると、実際はもっと多くの焼肉店が市場から退出したとみられる。

コロナ禍でニーズが高まり、出店が相次いだ焼肉店は、顧客の獲得競争が激化していることに加え、円安を要因とした食肉価格の高騰が経営を直撃している。2023年度の業績が「赤字」となった割合は34.8%。前年度から「減益」を合わせた「業績悪化」の割合は64.6%に上る【図表2】。

電気・ガス代や人件費などコストの負担増に加え、米国産や豪州産などの輸入牛肉、さらには低価格メニューで利用される豚肉でも円安で価格が高騰したことが重荷となった。

帝国データバンクでは、こう分析している。

「物価高騰による消費者の『値上げ疲れ』で、客足が途絶えることへの懸念が強いことから大幅な値上げが難しく、小規模な焼肉店などでは厳しい価格競争に耐え切れなくなっていることも、近年、淘汰される中小焼肉店が増えた要因となった。
新メニューの開発や店舗の雰囲気・サービスの向上など、値上げしても客足が途絶えない創意工夫を求められる局面を迎えている」

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焼肉店は換気がよく、コロナ感染しにくいとブームに

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんの話を聞いた。

――そもそもコロナ禍で、焼肉店が「焼肉バブル」と言われるほどブームになったのはなぜでしょうか。

飯島大介さん 飲食店の多くが休業したり、持ち帰りを始めたりするなかで、焼肉店は排気ダクトを使うために換気がよく、新型コロナウイルスに感染しにくいとされました。飲食業界では唯一、好調な経営を続けていたのです。

――それで、コロナ禍のなかでも「勝ち組」だったわけですね。

飯島大介さん そのため、ほかの飲食店だけでなく、中華麺チェーン「幸楽苑」が「焼肉ライク」を展開するダイニングイノベーションと提携、「ひとり焼肉」を始めたり、居酒屋チェーンの「和民」が食べ放題の焼肉チェーンに転換したりするなど、異業種からも大手の参入が相次ぎました。

そこに円安が直撃しました。牛肉の輸入価格があがり、電気・ガス代の光熱費も高騰し、人件費の上昇も加わり、二重三重にコストが増加して小規模な焼肉店では激しい価格競争に耐えられなくなったところが続出しました。