男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:アプリで出会った年上美女と初デート。学芸大学駅の和食店を選んだら、2回目がなかったワケ
芝浦にある智也のマンションの下で、私は立ち尽くしていた。
「突入すべきか、しないべきか…」
突入する権利はある。なぜなら、私は智也から合鍵を貰っているから。
でも最近、明らかに彼の態度がおかしい。
しかも今日に限っていうと、昨晩送ったLINEが本日22時を過ぎても、まさかの未読スルーのままになっている。
― 他の女といるのかな…。
私は迷った挙げ句、智也のマンションまできてしまったのだ。
しかし突入する勇気もない。万が一、ドアを開けた瞬間に他の女性がいたなんてしたら修羅場だし、リアルに落ち込むと思う。
タワマンの棟と棟の間から、僅かにレインボーブリッジが見える。その申し訳なさそうなくらいにしか見えないお台場の風景が、余計に自分を虚しくさせる。
果たして、私はこの状況をどう打破するのが正解なのだろうか…。
Q1:初デートで男がこっそり手を繋いできた理由は?
智也との出会いは、恵比寿で開催された、男女8人くらいの集まりに参加したのがキッカケだった。
彼氏と別れて半年、しかも今年で29歳。
真剣に出会いを探している私は、智也以外の男性は既に顔見知りだったので、必然的にまだ話したことのない男性への期待が高まる。
急な仕事が入ったとかで、予定より30分ほど遅れてきた智也。待った甲斐は十分あった。
「ごめん、遅くなった」
そう言いながら彼が登場した瞬間、私の心の中で何かが鳴った。
「明日香、智也と会うのは初めてだっけ?」
友人にそう振られ、首を大きく縦に振る。むしろ「どうしてもっと早く紹介してくれなかったのか」と、友人に言いたくなったくらいだ。
「はじめまして、智也です」
身長は185cmくらいあるかもしれない。しかもパーソナルジムなどを経営しているというだけあり、白Tの上からでもわかる綺麗な上腕二頭筋に、シュッとした顔立ち。
― カッコイイ…!!
そう思った。さらに外見だけではなく、話してみるとすごく丁寧な人で、私は初めから強く惹かれることとなる。
「え!明日香ちゃん、家泉岳寺なの?僕芝浦だから、近いかも」
「そうなんだ!芝浦のどの辺り?」
気がついた時には、他の人をそっちのけで二人で肩を寄せ合って話し込んでいた。
「ちょっと、智也。明日香に近づきすぎじゃない?」
友達に突っ込まれるくらい、私たちの距離は近かった。でもそれがまた嬉しくて、私は久しぶりに心が躍っていた。
それは智也も一緒だったと思う。
2軒目のカラオケ付きのバーへ移動した後も、智也はずっと私の隣に座っていた。
「明日香ちゃん、なんか歌ってよ」
「私、歌下手だから…。智也くんは?歌わないの?」
「僕も聞く専門」
「そうなんだ」
そんなことを、耳元でコソコソと話し合う。23時を過ぎるとお酒が入っていたこともあり、周りはさらに盛り上がり始めた。
その時だった。
不意に智也が、誰にも見られないようにこっそりと手を繋いできた。
「…え?」
「ごめん、嫌だった?」
ビックリはしたけれど、嫌ではない。静かに首を横に振る。
気がつけば私たちは他の人にバレないように、私の腰の後ろ辺りでずっと手を繋いでいた。
― あれ。久しぶりにマジで好きかもしれない。
解散間際、「この人ともっと一緒にいたい」と思うほど、私は好きになっていた。
智也も同じように思ってくれていたらしく、この日以降毎日LINEをする仲になっていた。
そして、次のデートも4日後とすぐに決まった。
Q2:男が合鍵を渡した意味は?
そして迎えた二人きりでの初デート。この日ももちろん楽しくて、食事の段階から話が止まらない。
「俺さ、明日香ちゃんをひと目見た時から気になっていて」
「嘘だよ〜」
「本当に!顔もタイプだし、純粋に可愛いなと思って」
好きな人に、ここまでストレートに褒めてもらえるのは嬉しい。だから私も、同じくらい素直に気持ちを伝えてみる。
「それを言うなら、私もだよ。智也くん、すごくタイプで」
「マジで?嬉しい」
こんな会話をして、上手くいかないワケがない。
この後、さらに盛り上がった私たちはそのまま智也の家へ行くことになる。でもここで、私はちゃんと確認をした。
「ごめん、付き合っていない人とこういうことは…」
「もちろんだよ」
こうして私は手を引かれて智也の家へ行き、そのまま幸せな朝を迎えた。
そして初めて智也の家へ行ってから、三度目くらいのことだっただろうか。帰ろうとする私を、智也が引き留めた。
「あれ?今日は泊まっていかないの?」
「うん。今日は着替えとかないし、帰ろうかな」
「そっか…。朝ごはん一緒に食べたかったな」
前回泊まった時、昼過ぎくらいまで一緒にいた私たちは、近くのスーパーへ買い出しに行き、私がご飯を作ってあげた。
智也がシャワーを浴びている間に彼の部屋を掃除したり、まるで新婚生活気分を味わえて、すごく幸せな時間だった。
「もう少し明日香と一緒にいたいな」
こんなことを言われたら、心がギュンとなる。
結局私は智也のこの甘えに負けて、翌日の昼過ぎまでダラダラとして、またご飯などを作って昼過ぎに帰ることになった。
「嬉しい。明日香、好きだよ」
この日、彼は私を抱きしめながらたしかにそう言ってくれていた。
しかも帰るタイミングで、智也から思いがけないプレゼントを貰ったのだ。
「はい、これ」
そう言って渡されたのは、まさかの合鍵だった。
「え、これって…」
「明日香、信用できそうだから。もし良ければ」
「ありがとう!!嬉しい」
合鍵まで渡してくれて、私は完全に交際できたと思っていたし、もはやプロポーズをされた気分で、最高の気分で1日を過ごしたのを覚えている。
でも、問題はここからだった。
結局合鍵を使うことがないまま、その後何度か智也とは会った。
しかし以前のように、向こうから頻繁に連絡が来ることはなくなっていく。
― 付き合ってるよね、私たち?合鍵だって貰ったんだし…。
でも男の気持ちが冷めているのは、なんとなく気がついてしまうもの。その不安が拭えないまま、未読スルーときた。
こうして、私は今、合鍵を持って智也のマンションの下に来た。
突入すべきか、しないべきか…。
そもそも、この合鍵の意味とは一体なんだったのだろうか?
▶前回:アプリで出会った年上美女と初デート。学芸大学駅の和食店を選んだら、2回目がなかったワケ
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:7月7日 日曜更新予定
なぜ男は女に合鍵を渡したのか?その意外な理由が…